第二十二話 森の異変調査
「解決して良かったね。警察も動いてくれたし」
「そ、そうね••••大空も無理に巻き込んでごめんなさい••••」
「••••ごめん」
「い、いや、謝らなくて良いって。悪い事ではないし。結局選んだのは俺だし。ここまで着いて来てくれているから」
俺達は冒険者ギルドへ来た。
お金を稼ぐ為にぇある。
ボスを気絶させた後、地下施設だったあそこを出て、俺達は近くの公衆電話で警察に通報した。
すると、何故か数十人もの警察官が一気にやって来たのだ。
更にその内の一人に、後で話を聞くから今は帰って良いよと言われた。
この時、俺は思ったのだ。
自分から突撃しておいて、正当防衛は少し無理筋な気がすると。
これでは俺はただの暴力を振るった人だ。
捕まる。
だから罰金か保釈金か何か分からないが、とりあえずお金を得に来た。
少なくとも、俺にはお金が無いので。
ついでに、街から離れていればワンチャン有耶無耶にならないかなと、思っている。
「良い感じのクエスト?でランクEでも出来るやつ。あるかな?」
冒険者ギルドの掲示板を見る。
ここには【光ら猿、捕獲任務、ランクC以上!】【有限ウマ、討伐任務、最低Bランク!】【被験体募集中、その他、誰でも来い!】【森の異変調査協力、協力任務、ランクS以上!】【super mini rabbit、討伐任務、誰でも来い!】など、様々なものが書かれている。
その中の一つを選んで受付の人に報告すれば、クエストを受けられるらしい。
しかし、ランクがEである俺達は、一人だと誰でも来い、と書かれているやつしか受けられない。
二人以上いると合計D以上も受けられるが、それは今回残っていなかった。
「今はsuper mini rabbitと被験体しか受けれないけど、どっちがいい?被検体は病院にいるだけで一日二万稼げるよ」
「••••そ、その、スーパー?ミニ?ラビットが私はいいわね••••」
「••••わたしも」
「了解」
俺としては効率よくお金が稼げて、なるべく長い期間雲隠れ出来る被験体にしたかった。
残念。
まあでも、クエスト?を受けるのはこれが最初だしな。
「このまま受付に行って、冒険者カードを出せば良いんだっけ、、」
「会長~~~!!手伝って欲しいっス~~!」
「ぐえ」
突然、俺の背中から何者かが抱きついてくる。
首に手が回されており、普通に苦しい。
「え、え、、?あ!闘技場の!」
「だれ」
「な、何か用?俺達、これから、お金を稼ぐんだけど、、」
飛びついてきたのは、恐らく元のクラスメイトの高田ひらめだ。
突然現れたのもそうだし、声的にもそうである。
「その討伐任務よりよっぽど報酬良くて!警察からの目も誤魔化せる任務があるっス!この【森の異変調査協力、協力任務、合計Sランク以上!】なんスけど!」
「俺達、全員Eだし、三人合計しても、Dだから、無理、だよ、、」
このランクを上げるには最低限の強さ、最低限のクエスト達成数、ある程度の碌な人格を持った上で、昇格試験を受ける必要がある。
少なくとも、今すぐには無理だ。
絶対に合計Sランク以上、は受けられない。
「大丈夫っス!会長の強さはAランク冒険者の中でも上位なんで!それと近接戦闘だけならSランクのオルキデさんと!光魔法使いのホワイトさんで!三人合わせたら冒険者の誰にも勝てるっス!」
「そ、それでも、弾かれるよ。受付で、、」
「会長は勇者連盟の権力を知らないっス!ちょっと見ててくださいね!」
ひらめは俺から離れ、着ている忍者服の胸元をはだけさせる。
忍者服の下には、どこかの学校の制服を着ていた。
その状態で受付へ向かう。
帰ってきた。
「はい!受けられました!みんなで行きましょう!」
「ま、待って!強引過ぎる!もっと説明して欲しいわ!」
「••••だれ?黒服」
「権力で規則を曲げさせるのは良くないような。規則には結構理由があるんだし」
「緊急事態なんで仕方ないっスね!詳細は機密に引っかかるんで!壁を出たら話すっス!もし手伝ってくれれば出来る範囲で一人一つずつ願いを叶えるっスよ!!岩永支部長が!!」
—-
「自分と烈さんは、迷いの森の異変の調査に来たっスよ。まず諜報部門の自分が森を調査して、原因がいれば烈さんが掃除する感じで」
俺とホワイトとイリカとひらめ、四人で森を歩く。
全員、依頼を受ける事にした。
俺は金に釣られ、ホワイトは何でもしてくれるという言葉に釣られ、イリカは金と願いに釣られた。
危なそうだが、ひらめは緊急時の連絡なども出来るらしいので、大丈夫なはず。
「実は会長と再開する三時間前ぐらいには、異変の元凶っぽい物を見つけてたんスよね。けれどそれは地下にあって。自分じゃ火力不足で入れなかったっス」
「?。それなら、師匠に手伝ってもらえば良いんじゃない?師匠は『凄い風』拳って言う、凄いパンチを打てるようになっているよ」
「それは知っているっスね!烈さんはずっと一人で突撃したがってました!けど岩永支部長に嫌な予感がするからやめろって言われて!宥めがてら、Sランク冒険者との決闘を組んでもらってました!」
岩永支部長。
あの闘技場にいた酔っ払いの人だったか。
だから関係者席にいて、知り合いっぽい感じを出していたんだ。
「で、異変の原因らしき場所がここの地下にあるっス!ここの地下の建造物が周囲の土地の栄養素や魔力を吸っているっぽくて!これのせいで森の結界も解けて!全体が壊滅までした可能性があるっス!」
結界が解けて、森全体が壊滅したらしい。
その異変の調査で、師匠とひらめはここに来たとの事。
あれ。
「••••森の結界ってあの竜族が貼ってたやつじゃない?」
「そうかも」
ホワイトに近づき、コソコソ話す。
これは、不味い。
「何コソコソ話してるんスか~~!自分にも教えてください!」
ひらめが笑顔で近づいてくる。
これは白状するべきだ。
黙っておける範囲を超えている気と思う。
「あの。盆地が壊滅したのは、多分俺」
「わたしのせい」
ホワイトは俺の声を遮り、そう言う。
ひらめは首を傾ける。
「本当スかね?動いている魔力の量的にそんなこと到底出来ないと思うんスけど••••!!会長!何か起きるっス!!」
俺達の立っている地面に、魔力が流れ始めた。
何かしら異変が起きている。
多分。
「••••地面がひらく」
「?。そうなの?俺は魔力が流れた事しか分かんないや」
「みんなどうしたのかしら?突然騒ぎ出して」
次の瞬間、地面に穴が開いた。
俺達は落ちていく。
—-
「ここ、どこよ!?」
俺達四人は謎の洞窟に落とされた。
この洞窟は角が見えないぐらい遠くまで続いている。
だが、何故かついている多くの松明以外に灯りがなく、かなり暗かった。
不思議な洞窟だ。
「••••ここ、あいつらの魔力ばっか感じる。あと、きてる」
「ひぃー!気持ち悪いっス!!何スかねあれ!」
ホワイトが洞窟の先の闇を、指差す。
その闇からは、巨大な謎の生き物が出てきた。
下半身が魚で、胴体が鯨、頭は犬、そしてそれら全身は鱗に包まれている。
結構、表面がぬるぬるしてそうで、気持ち悪い。
この犬は火を吹く。
「まさかの火」
「「身代わりの術」っス!」
火が止まった。
ホワイトの能力だ。
その隙に俺とイリカは横に避ける。
ひらめのいた場所には、小刀だけが落ちていた。
「よく分からない時はさっさと殺すに限るっス!」
ひらめはいつの間にか犬の頭の上に立っていた。
そうして気づいたら持っていた小刀で、犬の頭を刺す。
少ししか刺さらなかった。
「皮膚が厚すぎる!有効打無いっスね!そんな時はバイバイ!!「神速」!」
ひらめはどこかに消えた。
直後、犬は全身を振るわせ、水を周囲に撒き散らす。
火もまた動き出した。
「••••『光線』」
その全てを、ホワイトの光るレーザーがぶち抜いた。
犬に風穴が開く。
—-
非常に入り組んだ、迷宮のような洞窟。
この洞窟の壁には全て均等に松明がついている。
しかしある一つだけ、松明が悍ましいほど壁についた部屋があった。
『少し若いが、懐かしい顔だ。未完成の我が領域にいれる価値はあったか』
『はい。お父様』
その部屋の中心部にある椅子には、男が座っている。
黒い瞳を持ち、黒い布を纏った25歳の男だ。
正面には、精悍な牛の頭を持つ男性が跪いている。
『まずは小手調べだ。『領域操作』。行け。ノウェム』
男は自らの能力を使う。
洞窟が動き始める。
その構造が切り替わった。
『••••ノウェムを捨て駒とするのですか?••••奴らの力を図る為だけに••••』
『ふむ。私に文句があるか。良いだろう。それほど心配ならば、お前の好きなタイミングで加勢してみろ」
『は!ありがたき幸せ』