幕間 何かいるやん
背の低い草木がちらほら生えている、広大な荒野。
周りには魔獣も彷徨き、竜巻も発生していた。
その荒野の一部が、突然ピカっ光る。
次の瞬間、光った場所には8歳ぐらいの真っ白な幼女がいた。
「••••••••」
凄まじく強い風が吹く中、その幼女は暫く倒れ伏す。
近くの魔獣は食用でない相手の為、彼女に近づいて来ない。
「•••••••、、」
暫くし、幼女は目を覚ます。
そのまま起き上がる。
そして、周りを見渡した。
「•••••••、、やっぱり、」
無人の荒野が彼女の視界に入る。
誰も居なかった。
そして、幼女は思い出す。
これまで様々な経験が頭に過ぎる。
大昔、とある相手に森を燃やされた事。
その原因の一端のノワールと協力し、因縁の相手を倒そうとしていた事。
こう思った次の瞬間、謎の森で倒れていた事。
千晴と出会い色々あった事。
「••••••」
無言で、ホワイトは己の手を見る。
今の自分の手には何も付いていなかった。
ずっと肌身離さず付けている、蛇吉柄のストラップも、服も。
何もない。
「•••••••」
ホワイトは今の自分には記憶だけがある、と思った。
しかし、とも思う。
ノワールもイリスも覚えている時と比べて、かなり違う性格になっていた。
記憶すら、何処まで正しいのか曖昧だ。
「•••••••」
無言でホワイトは立ち上がる。
いつか、千晴とも再会できるはず。
近くにあったボロ布を纏い、ゆっくり歩き始めた。
——-
ホワイトは何もない荒野を無言で進む。
魔獣は未知の存在を恐れ、近づいて来ない。
遠目でホワイトの方を伺っている。
「•••••••」
魔獣にも嫌われ、ホワイトは悲しい気持ちになる。
リンゴの匂いを感じたくなった。
温かさにも包まれたい、と考える。
「、、、、!?、子供の、人間、、いや、神であるか、、どうも、、」
「••••どうも」
暫く歩くと、とある人間と出会う。
悲しそうな顔をし俯いていた白髪の65歳ぐらいの大柄な男だった。
お互い軽く会釈し、すれ違う。
「、、、、不躾で失礼であるが、、アナタが来た方に敵はいなかったか?わたしは西にいる敵から逃げていたのであるから、、」
「••••••知らない。いまきたばかり」
男はすぐに立ち止まり、恐る恐る話しかけてくる。
ホワイトを心配している様子でもあった。
その男の様子を察したホワイトだったが、わざと無視する。
こうして、また西に向かって歩き出す。
ホワイトは暫く一人になりたかった。
「、、!?、ま、待ちたまえ。西は駄目だ、、奴が、奴らがいる、、、」
「••••そう。ありがとう。けど、いい」
差し伸べられた男の手を、ホワイトは避ける。
この男より自分の方が強かった。
魔力を動かしている量的に、『変異』を使った自分の方がある程度は強い。
そう確信していた。
「、、ぶんぶんぶーーん!!西には怪物がいるですぞ!!そう、こんな怪物である!」
「、、なに?」
男は人差し指を頭に付け、走り出す。
そして、ホワイトの進行方向に立ち塞がる。
「ぶんぶんぶーーん!!あの怪物は常軌を逸してるでありますぞ!常識で測れる存在ではないのである!」
「••••••うざい。どっかいって」
「うざいであるか!!なんと!!西にはこんなうざい怪物がいるですぞ!向かうなら海に近い東ですぞ!」
「•••••••」
ホワイトは、男が自分を心配している事は分かっていた。
少し、ホワイトは思い出す。
千晴を思い出す。
イリカも思い出す。
鼬も思い出す。
「•••••••••けどうざい」
「ぶんぶんぶーーん!うざい怪物がいるですぞ!行くならせめて北ですぞ!ぶんぶんぶーん」
それはそれとして鬱陶しかった。
男が口にするぶんぶんぶーんも意味不明だった。
ホワイトは目を閉じ、西に意識を向ける。
「、、西、、にいるのは、すさまじく巨大な蛇、、近くには、何千人のにんげん、とささげられてる、電話の受話器方のまりょくのこもったもの、、受話器はお前の?」
「!?、、?何故、ですぞ!わたしの、主の遺品を、、魔力感知で、!?」
受話器が纏っている魔力と、近くにいる男の魔力の特徴が完全に一致していた。
故にホワイトは分かったのだ。
そして、西にいる怪物の強さもなんとなく分かった。
「•••••そう。わたしが受話器をとりかえしてくる。だから黙って」
「!?、か、神と言えど、子供では危険ですぞ!奴は、あれは、、見た目通りの、、怪物、、」
「••••いい。あれも強いけど、わたしはお前が思ってるよりつよい。『変異』」
直後ホワイトから魔力が溢れ出す。
真っ白な翼が生え、肉体も一気に16歳ぐらいに成長する。
そして、遠くを指差した。
「待ってろ。私が取ってくるから。だからもう付いてくるな」
「な、なんですぞ!?即座に成長する神など、、初めて見たですぞ、、、」
直後、翼を思いっきり振るうホワイト。
超高速で西に向かう。
——-
西に向かったホワイト。
そこで、とある都市を発見する。
その都市では、石製の低い建物がびっしり立っていた。
端から端まで建物と人がいた。
一方、巨大という言葉で表現できないほど凄まじく大きい蛇?もいた。
この蛇は都市の中に体が収まっておらず、遥か先にまで蛇の胴体が続いている。
体の太さも数十メートルはあった。
そして、都市にある大量の家や人間が、この蛇の下敷きになっていた。
「••••••••魔神か、」
その、真っ黒な瞳を持つ巨大な蛇。
蛇の瞳には、人間達から捧げられた美しい男女や魔力のこもった様々な道具が映る。
これらをホワイトは上空から見ていた。
「、、時を止めれば全て意味なし」
ホワイトが能力を使い、そして世界が白く染まる。
即、ホワイトは巨大な蛇の目の前に着地する。
止まった時の中で、巨大な蛇も人間達も何もかも固まっている。
「••••••••」
ホワイトは、献上されていた道具のうちの一つである、男の受話器に触る。
受話器に己の魔力を流した。
これで長い受話器を自分のものとした。
「••••解除、もう一回、時は止まる」
『ご、』
ホワイトは一瞬時を動かし、受話器を持つ。
直後、また止めた。
これにより、止まった時の中でも受話器を動かせるようになった。
「••••••完璧、」
止まった時間の中、ホワイトは受話器を懐に抱える。
すぐ飛びあがろうとする。
ただ、少し視線を感じた。
「••••••、、」
ちらっと後ろを向くと。
巨大な漆黒の瞳が、自分を追っていた。
蛇が、じっとこちらを見つめる。
『••••••ごぉぁ、』
そして、魔力を動かし始める巨大な蛇。
止まった時の中で、ゆっくりと体が動き始めた。
胴体を地面に滑らせる。
時間停止が突破されかけていた。
「••••••、まずい、『凄い竜巻』」
ホワイトは巨大な竜巻を起こし、止まった時の中に風を設置する。
時が動いた瞬間に周囲の人を吹き飛ばす準備をする。
「そして、『光の神の審判』」
次に光魔法で、巨大な光の柱を放つ。
光の柱が、時間停止を破りかけている巨大な蛇の顔に突き刺さる。
『!』
非常に巨大な蛇の瞳の一部が消し飛んだ。
しかし、即座に黒い粒子と共に瞳は再生する。
あまりの体格ゆえに微々たるダメージだった。
「••••••••、」
この間にホワイトは翼を振るい、飛び立つ。
一瞬で、蛇のいる場所から離脱した。
それと共に、時も動かす。
次の瞬間、竜巻で周囲の人が吹き飛んでいく。
『ごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
止まった時間から解放され、巨大な蛇が立ち上がる。
真っ黒な瞳でホワイトを捉えた。
直後、家や大地とあらゆるものを押し潰しながら、直進する。
こんな蛇に触れた何もかもは、真っ黒になり死んでゆく。
更にあまりの巨大さに、蛇を人間達は避けられない。
「••••••速い、、」
大きいだけに速く、ホワイトは自分では蛇を振り切れないと即座に判断する。
人的被害も洒落にならないとおもった。
その場で、ホワイトは止まる。
蛇の真っ黒な瞳と向き合う。
「、、、、これが効くのも、今回だけ、かも、」
そんなホワイトに対し、巨大な蛇は口から黒い何かを吐く。
周辺の荒野一体を巻き込む凄まじい量だった。
黒いものに少しでも触れた木は一瞬で黒くなり、死にゆく。
「•••••••『凄い竜巻』、、私以外の全てよ、、止まれ」
一方、ホワイトは凄まじい量の風を起こす。
巨大な蛇の近くで巨大な竜巻が起こった。
ただそれでも尚、蛇の頭を覆う程度だ。
直後、世界が白く染まる。
黒いものは竜巻で吹き飛んでいた。
『ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!』
そして、止まった時の中でゆっくり動き出す巨大な蛇。
ホワイトに向けて直進しようとする。
「、、、、」
けれど、巨大な蛇は直進出来ない。
頭の周囲にある竜巻は、時間と共に止まっていた。
故に蛇の頭が動かない。
「•••••••••まずい、にげろ、」
直後、蛇は止まった竜巻に己の魔力を流し始める。
ホワイトは、全力で逃げ出すホワイト、
止まった時の中を、本気で飛ぶ。
『ごぉぉぉぉぉぉぉん!!』
——
魔力感知も生かし、蛇から逃げ切れたホワイト。
地上に降り、男の前に来た。
「•••••••」
「、、ま、まさか!!よくぞ帰って来た!我が主の神器!!ありがとうであるぞ!」
けれど、地上は凄まじく揺れていた。
あの巨大な蛇が動く事による振動だ。
今いる場所から体が見えなくとも、揺れが伝わってくる。
次の瞬間、ホワイトは『変異』を解いた。
「••••••••いい。けど、あいつ、なに」
ホワイトは嫌な予感がしていた。
容易く自分の能力に対抗できる相手は、一体しか知らなかった。
「、あいつは全てが不明なのだ。ここは、元々、昔から肥沃な土地を狙い、王国同士、そこにつく神同士が争う魔境だった、、約一年前、、突如現れた魔神らも、それに加わり、、」
「••••••それで。あれはどこから来た、、」
「、、突然、現れ、、全ての王国と、それに尽く神を全て薙ぎ払い、、統一したのが、奴、、いや、奴らだ。わたしも含め、皆が抗った、、」
ホワイトは、『変異』を使わずとも巨大な蛇の姿の魔神に心当たりはなかった。
同族は皆、素の姿は自分と同じだったはず。
けれど、ホワイトには実は心当たりがあった。
見た事のない事象を起こす相手を、知っていた。
「••••••••••お前はどのポジション。なんでにげてる」
「、、、奴、奴らは、、配下を求めた、外海に、攻め込み、戦争を、起こそうと、している、と言われている、、わたしは、、拒否し、、すると、奴らを恐れた、、我が子らに、襲われ、、捧げられかけ、、」
「•••••••••」
ホワイトは少し考える。
千晴なら、何とかなるだろう。
そして、まあいつか会えるだろう。
けれど、目の前にいる男性達はどうにもならない。
昔より遥かに強大になっていたあれ。
あれに対抗するには必ず自分の力が必須だ。
「••••••わたしも手伝う。あれにはいんねんがある。こっちも対抗して、なかまをつくろう」
「!?、な、なんですぞ!?、あなたは、神代の住人でしたか、!!是非頼みますぞ!!我が子らを!奴らの恐怖から!次こそ救って見せますぞ!」
白髪の男性は奮起する。
一方、ホワイトは思う。
己の記憶にはない、決着。
これをつける必要がある気がした。
「であれば!まず!奴らに名を付けますぞ!神代では、奴らはなんと呼ばれていたのですぞ!名がないが故に、皆は更に恐れ、、、」
「、、昔でもなまえはない。あれでつうじる。そのレベル」
そしてホワイトは、自分がまた上の立場になりそうと思う。
少し思い出す。
大昔の自分は、常に頼られる側だった。
故に少しの時間一人だった程度で悲しくなったりしなかった。
甘えられる相手ができて弱くなったのかも知れない。
けれど、ホワイトは己が弱くなったとは言いたくなかった。
「••••••••••」
もしかしたら、あれに勝つ為に千晴は現れたのかも知れない。
黒田の雰囲気的に、以前の自分たちはあれに負けたのかもとも思っていた。
「いこう。まずはきょてん。人間には巣がひつよう」
「巣!?巣ですぞ!?、巣ですぞ、、理解ですぞ、」
「、、家。そっちに寄りすぎてた」




