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第百六十七話 黒田と遊んでたら、変なのが来る








 古着屋の近くで見つけた、小さな家。

 そこは屋台となっており、揚げたじゃがいもが売ってあった。


 これを黒田が気になっている様子だったので、買ってみた。


 「凄いねこれ!ギリギリ美味い!」


 「本当だ!ギリギリ美味しい!価格は30太陽だったし、セーフ?」


 30太陽は、円換算だと5円だ。

 それほど安いだけはあり、酷い品質の安い油で揚げられた安いじゃがいもだった。


 なのでポテトでもギリギリだった。


 「何だろ、悪いのは油かな!ボク、こう言うの初めて食べるけど!」


 「多分油じゃない?じゃあ美味しいバージョン、作ろっか?俺に任せてくれれば、多分すぐ作れるよ!」


 「えー!?作ってくれんの!じゃあボク食べてみたい!」


 「結構自信あり!見ててくれ!近くに闇市もあるし!」


 まず、この辺にある闇市で鉄を買う。

 更に高い油と、ジャガイモと小麦粉も買った。


 そして、誰もいない路地裏に入り。

 調理を始める。


 「へー!こんな下準備するんだ!良いね!」


 まず水魔法で出した水に、ジャガイモを浸ける。

 この間に『領域』で鉄を加工し、鍋を作った。


 「魔法があれば色々出来るぜ!『ただの火(ファイア)』!」


 魔法は誰がいつ使っても威力が固定なので、料理に使いやすい。

 油を入れた鍋に、火魔法の火をかける。


 あっさり、油は良い感じな温度になった。


 「よし!それで、『加速循環』!」

 

 水に浸けたジャガイモに能力を使う。

 一気に水に浸けた状態が、進んだ。


 そのジャガイモを自ら上げ、木の枝で切り、小麦を付け、揚げる。

 

 「すっごいね!キミ、色んな能力使いこなしてる!いやー便利!」


 「確かに!けど、黒田が教えてくれたお陰も大きいよ!そんな使いこなせないわ!」


 パパッと揚がったポテト。

 これを今鉄で作った皿の上に乗せ。

 塩、胡椒を適量かけ。


 完成だ。

 一瞬で出来た。


 「すーぐ出来た!ボクがバイトしてた時もキミがいれば楽だったのに!それより、ポテト美味そう!!」


 「黒田が先に食べて良いよ。その間に片付けというか色々消しとくし」


 黒田は揚げたてのポテトを眺める。


 小麦色で揚げたての、ポテト。

 良い感じに塩もかけてある。


 まず、黒田がポテトを手に取る。


 「分かった。ボクが先に、貰っちゃおっかな、、ぱく」


 「どう?美味しい?」


 心臓がバクバクとしながら、『破壊』で片づけ?をしながら、俺は黒田を見る。


 以前、田中に作った際には高評価をもらえたポテトだ。

 一人称が同じで、苗字も一文字同じの二人。

 同じく美味しいと感じて貰えるかな。


 黒田はニコッとした。


 「美味しい!超美味しい!バイトで毎回焦がすボクとはレベルが違う!凄いよ!大空千晴くん!」


 「いえい!流石に料理の経験が違うから当然だって!」


 黒田とハイタッチをする。

 美味しいと感じてくれて、良かった。


 何か、俺もにっこりとなる。

 喜んでくれて、とても良い感じ。


 「キミも食べてよ!本当に美味しい!感動を共有したい!ほら!ほい!」


 「あ、ありがとう。美味しい」


 片付け中の俺の口に、黒田がポテトを突っ込む。

 ポテトは美味しい。

 

 少し自慢でもあるが。

 俺の才能と経験、そして何より素材の味もあり、非常に美味しい。

 後、これは浮気ではないよね?


 「おー!なんか食べた後の指も美味しい!ただの塩味のはずなのに、油も付いてるからかな!?キミにもあげよう!」


 今度は、自分の指も入れてくる黒田。

 軽くその指を舐めてみる。


 「おー。確かに美味しい!やっぱり油が付いてるからか!美味しい理由」

 

 黒田の指も、やっぱり美味しかった。

 適度な油と、塩が良い感じだ。


 後これは浮気な気がするが、大丈夫かな。


 「不思議~~~!ボク、食事とかほぼした事なかったけど、友達とすると面白いね!また良ければ作ってよ!ボクも手伝うからさ!」


 「勿論!そんな喜んでくれるのなら俺も良い感じだし!」


 こんなに喜んでくれるのなら、趣味、料理でいいかも知れない。

 もしかしたらフレジアや未来の家族も俺がより上手くなったら喜ぶかも。


 まあでも友達や将来の家族が喜ぶからと趣味を合わせに行くのは。

 以前失敗した方法そのものの気もするが。

 そこは後で考えよう。


 ここで、黒田はニヤッとする。

 更に黒田は両手で、俺の頬を軽く引っ張った。


 「キミにさ~~ボクは教えられちゃったな~~~人間の三大欲求!許せないな~~~責任取ってよ~~キミ、浮気ダメだけど~~!」


 「え、えー。責任取らなくちゃー、食事はいつでも作るよー」


 「あ、あの、、すいません、、「神」、に興味ありませんか、?」

 

 黒田と戯れあっていたら、突然誰かから話しかけられる。

 二人で固まる。

 

 完全に油断していた。

 お互い一旦離れる。

 そして黒田と共に後ろを向いた。


 「「神」に、興味ありませんか、教団は、信者を求めています、教団は勇者連盟から、許可も出ています、共に「神」を崇めませんか、、、」


 背後には、台車を持った24歳ぐらいの女性がいた。

 ボロボロな髪をしていて、少し気弱そうだ。


 にも関わらず台車に大量の本?を乗せている。


 「あ、あの、自分達はそこまで宗教に興味なくね、、他の方にどうぞ、、」


 「聖典だけでも、、たったの100太陽で配っていまして、、 配られた皆さんは、、満足していますよ、、非常に可愛いのに、ボロジャージを着て、、刀で周囲を威嚇するあなたも、、きっと、」


 予想外に粘られる。

 遊んでいる最中に邪魔され、少し嫌な気持ちになった。


 そんな一方、黒田はニヤニヤしていた。


 「いやいや、キミ!貰っておこうよ!すいません!一つだけ貰います!」


 「は、はい、どうぞ、、一緒に、「神」を知って下さい、」


 黒田は女性から聖典?を買う。


 ???。

 黒田って宗教に興味あったっけ?

 後この聖典?、何か嫌な予感がする。

 一瞬、ちらっと聖典?の表紙が見えたのだ。


 「??。黒田。気になってたの?この教団?」


 「いや、見てよ見てよキミ!多分面白いよ!」


 女性から結構離れ、しゃがむ黒田。

 表紙をチラ見した後、聖典?の中を開く。


 「こことかすっごいよ!見てよキミ!」


 すぐ何かを見つける黒田。

 そのページを指差す。


 俺はそれを覗き込む。

 

 【偉大なる「神」。天地を揺るがし、全てを滅さんとする驚異の怪物へ。雷を振るい、空間を揺るがし、妻と共に怪物へ挑む。その挿絵。(作、山畑勇作1995)】


 聖典?の中盤付近には、こんな事が書かれていた。

 更に次のページには、絵も印刷してある。


 名状し難き怪物?へ、少年が手に持った雷を振るう。

 彼は黒い人?と、石の鳥に乗っていた。

 だがその雷を物ともせず、怪物は迫ってくる。


 こんな絵だ。

 神話のような凄まじい迫力があった。

 そして、ついでに俺に心当たりもある。


 「いや、ん!?あれ!?ボクもいないこれ!?表紙の絵には無かったのに!」


 「はは!黒田もじゃん!一緒に神仲間だ!」


 急いで、黒田はペラペラページを捲る。

 個人紹介のページに行った。


 【驚異の怪物。人に化け、人智を超えた力を振るう。天地を揺るがし、嵐を巻き起こし、雷を起こす。その挿絵(作、山畑勇作1995】


 また挿絵が入っている。


 それの怪物は、名状し難きドラゴンのような生命体の絵だった。

 瞳は赤く、肩には大量のヘビが生え、手は人、翼は鳥、尻尾はヘビの超巨大な怪物の絵だ。


 めっちゃ見た事がある。


 「これ、あれじゃん!あいつじゃん!神話の一角になってる!けどここじゃない!」


 「他にも色々ありそう。まだまだページあるし」


 黒田がまたページを捲る。

 次に開かれたページは、一番力が入っていた。


 【輝く「神」。正義と秩序を成す、人智を超えた存在。巨人を討伐後、驚異の怪物を討伐し、世界に秩序を齎す。信仰すべき「神」。妻に隠れ、美しい人間の少女と子供を作る。その挿絵(作、秋口サン1995)】


 こんな事を書かれたのち、また挿絵が入っている。


 その絵には、雷を持ち構えた、15歳ぐらいの整った顔のオッドアイの少年が描かれていた。

 相当、神秘的な絵だ。

 

 というのが、ただの自画自賛になってしまう。

 普通に俺だ。

 雷を持ったポーズが何処ぞの神話の主神だ。

 

 「普通に俺。迫力ある俺の肖像画」


 「妻!やっぱりボクが妻?妻?妻なんだ!おもしろ!」


 次のページを捲る黒田。

 そこは俺の妻?の紹介ページだった。


 【「神」の妻の神。夫の「神」を支え、また自ら戦う人智を超えた存在。脅威の存在を討伐し、夫と共に秩序を齎した。黒い神。詳細不明】


 そこに挿絵は。

 無かった。

 だが、明らかに黒田が妻だ。

 

 少し面白い。

 変に捏造されている。


 「よしよし!ボク問題なし!バレてない!バレてない!」


 「いやいや、アウトだって!バレるよすぐ!」


 「だよねぇ!地味に他の絵にちっちゃく描かれてるし!ボク問題あり!」


 やはり、この教団とは俺を信仰する組織のようだ。


 確実に犯人はあの人だ。

 この絵はあの人に見せられたことがある。



 少し勝手に聖典?を捲り、後書きを見る。

 何か書いてあるはず。


 【筆者は「神」が「怪物」と呼ばれている現状を憂慮する。教団内においても、「神」を「怪物」と勘違いするのは、人間のサガだが、あまりにも不敬】


 そこにはこう書いてあった。


 ほぼ犯人が自白していた。

 だけではない。

 

 この後書きは二重線で消され、手書きで新しい後書きが足されていた。


 【「神」は激怒しているのだ。我々の不甲斐ない現状に、荒れきり終末も近いこの世に。故に「怪物」と一時なり、この世に裁きを下す。牛の被り物を被り、殺すと連呼するアルバムを見れば明らか。「怪物」も「神」の一面だ。この著者は解釈を間違えている。異端】

 

 「何か、もう議論起きてる、、」


 「いやー!他の奴の事だと面白いね!キミの行動の解釈を巡って争いが起きてる!本人に聞けよ!」


 後書きを見て、大声で笑う黒田。


 確かに他人事なら面白くはある。

 一緒に戦った親友の黒田が妻扱いでちょっと面白かった。

 他はどんな捏造がされているのだろうか。


 「「神」に、尋ねろと、?許されません、、「神」は、絶対に正義なのです、、尋ねるなど、論外、」


 と思ったら、突然会話に乱入してくる女性。

 いつの間にこっちに来ていた。


 そして怒りを込めた目で、黒田を睨む。

 

 「あ、うん。キミたちは、そうなんだ、」


 「な、なるほど、そうなんですね、、」


 さっきから女性の熱量が凄かった。

 これに困る一方。

 今まで人の為にしか生きて来なかった俺には、少し良く見える。


 この下り、前にもあった気がする。

 太陽さんの「神」云々で。


 「あの、、すいません、、この教団って今何人ぐらい信者の方がいるんですか?」


 話を逸らしがてら。


 この熱量の数を知りたくなる。

 果たしてどれぐらい信者の方がいるのだろうか。

 俺の予測だと千人ぐらいだ。


 「はい、、現時点で、聖典を買われたのが300万人、、ですが!既に信者の数は、最低3000万人!!大穴にいる皆も!!聖典をそれぞれ家族間友人間で貸して読んでいるので、最低3000万人!!」


 「3000万。3000万?」


 「3000万!!3000万!キミ~~!3000万に顔バレちゃったね~~!そりゃボクと普通に遊べないよ!」


 やはり、全てに納得いった。


 何故かこちらを崇めたり、逃げたりするホームレスの人たちも。

 いつの間にか、微妙に良くなっている大穴の治安にも。

 何故か俺がいるとポンポン進む契約も。


 もの凄い広がっていた。

 大穴の人口は大体3000万ぐらいと最近殿下と調査して分かっていなので。

 つまり、ほぼ全員だ。


 「そして!わが教団は!この先!世界に羽ばたきます!!最低3000万人です!最終的に!この数倍、何十倍にもなります!大穴を、制圧し切った後!!」


 恍惚とした後で、ボサボサ髪の女性は語る。

 楽しそうだ。

 

 冷静に考えると、多分この教団が色々役立つ気がする。

 今も割と有効活用をしていた。


 の一方、絶対やばい気はする。

 俺は冷や汗をかく。

 放置するのは良くなかったかも。


 「苦しんでいる人こそ、「神」は救ってくださる!あなた方も聖典を買ったということは興味があるという事!「神」の正義の行動について!私が簡略化してお伝えしましょう!!」


 テンションが上がり、叫び始める女性。


 俺と目があった。

 長くなりそうだ。


 「「神」を信仰すれば必ず救われます!あなたはそんなかわいらしいのに、ここまで落ちてしまって!整えれば「神」も必ず見初めて下さるレベルなのに!」


 「に、逃げない?黒田。いつまでも絡まれそう」


 「そうだね。そろそろボクも飽きてきたし••••逃げよう!」


 スルーの最終奥義、ただの闘争を使う。

 もうこの女性は、変えられない。


 というか、ぶっちゃけただの現実逃避をする。

 流石にこのレベルの教団になると思わなかった。


 やはり黒幕がいる。

 と思うと同時に走り出す。


 「あ、あー、、、申し訳ありません、、「神」よ、 、」

 

 一瞬で振り切れた。

 あの女性は普通の人なので、流石に俺とはレベルが違う。

 セーフ。


 「、ん、いや、待って、、横顔が「神」に、?ま、って、「神」が女に、、変わって、デート、?おおーー!!「神」!!!」




 

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