第百六十四話 黒田と決着を付ける
フレジアと一旦別れ。
その辺で本を買い、自分のテントに戻った。
テント内でその本を読む。
この本は父親になる心構えが書かれたものだ。
「•••••••」
しっかりしなくちゃ行けない。
今までのままだと、絶対にダメだ。
未来の子供のためにも。
「••••••••••」
考える。
今までの俺は、特に記憶に実感が湧くまでの俺は、家族やホワイトに全てを依存していた。
己の意思がそこまで無かった。
故に「模倣」の能力も与えられたのだろう。
プライドもなく意思もなく、相手を真似できる。
「••••••••」
だが、これからは。
自分の為に、自分を持って、立ち上がらないと。
今になったからこそ、やらなくては。
ホワイトにも言われていた。
「••••よし••••行こう」
決めた。
黒田と決着をつける。
——
テントから出る。
俺のテント前には、何か色々置かれていた。
お金やら俺の彫刻やら、俺の絵やら、謎の手紙やら田中とのCDやら。
「•••••••本当に何だろ、これ」
まあまた、一旦スルーだ。
何なのか分からないし。
とりあえず、目的を果たす。
「•••••••••おーい。黒田。来てー」
ボソッと呟く。
黒田は、多分近くにいる。
傾向的にそんな感じはしていた。
「•••••••また話したいから、来てー」
少し大きめの声で、言う。
ある程度遠くにまで、届いたはず。
「••••来てー。黒田ー、」
「••••はい」
黒田が、近くのテントの裏から出てくる。
結構近くにいた。
「••••••そこにいた••••あの、黒田、少し話さない?話したくて•••••テントの中に来てくれ••••」
「うん。ボクも••••••••」
テントの中に戻ってきた。
黒田も入ってくる。
中で、二人で座った。
黒田と向き合う。
「••••••本当は、ボクは、ホワイトに謝るべきなんだろうけど•••••••」
「•••••••うん••••」
黒田はボソッと呟く。
暗い顔をして、申し訳なそうな声だった。
今まで見た事がないぐらい。
「キミにも••••ごめん••••ボクは意図して、ホワイトを殺した••••ごめんね••••」
黒田は頭を下げる。
少し涙目だった。
「••••••」
俺は固まる。
思ったより、あっさりだった。
「•••••••••もっと謝意を、見せてほしいというか、、いや、何でもない、良いよ、俺は良いよ••••」
違う。
少し感情が暴走した。
何とか軌道修正が出来た。
「••••俺は良いよ、、良い••••」
「•••••••そっか、、キミは••••」
ホワイトを殺した事には、色々感じていた。
怒りを覚えているし、黒田がそんな事をして悲しさもある。
だが、ホワイトは不死身、不死身だ。
黒田も不死身。
「••••••••••俺はそう••••だから••••」
それ同士が、片方を殺す事の重さが。
俺には分からない。
黒田とホワイトの関係も、俺は知らない。
だからこそ、この辺はホワイトの対応次第だ。
「•••••••••••だから、仲直りしよう、、また友達に戻ろう、、元に戻ろう••••」
と、自分に言い訳している事は冷静に考えると分かる。
ただ俺は、黒田といると良い感じになる。
だからまだ友達でいたかった。
冷静に考えるとそれだけだった。
「•••••••••••ボクもそう••••だけど••••またボクは、絶対似たような事をする••••キミ本人にはしないようにするけど••••絶対••••」
「••••••••」
また考える。
昔なら、家族みたいなホワイトのケースだったら。
それでも良いと、俺は肯定していた。
今回は簡単に肯定出来なかった。
もう俺には、他に色々ある。
けれど。
「••••俺は黒田と、永遠に、友達でいたい••••お互いどう変わっても••••ホワイトを殺したとしても••••」
今度も、肯定する。
黒田は初めての友達で。
一緒にいて、色々楽しいし、いて欲しい。
あったら話したいし、遊びたい。
本当にそれだけだった。
ああ。
また家族や友達が、黒田に傷付けられたらどうしよう。
「••••••ボクも永遠に友達でいたい••••けど、こっからボクはドンドン変わっていく•••••そのせいで酷い事に絶対なる••••••ダメだね、」
しょんぼりしながら、黒田は言う。
何か悲しそうな顔でもあった。
けれど、感情的に俺は少し嬉しくなった。
「••••それは俺も同じだから、、俺も同じように段々変わっていってるし、、大丈夫なはず、」
「••••まあ、キミも相当変わって行ってるけどさ••••キミとは違って••••ボクはダメな方面だって••••はぁ••••」
黒田は頭を抱える。
俺も黒田は何か変になっているとは思っていた。
段々変になっていく。
やはり成長すればするほど、だろうか。
「なのに、ボク、キミが欠かせなくなっちゃった••••お別れをしに来たのに••••また自分の為に友達に戻りたいって言っちゃう••••」
「••••割と、俺もそうというか••••••黒田とは自分が良い感じに過ごすためにいて欲しいというか、、ホワイトの心を無視してて、、仲違いしたら、悲しいから、」
この世界を良い感じに過ごす為には、黒田は欠かせない。
俺の我儘か、それとも家族やホワイトの願いを叶える為か。
ただ欠かせない。
いや、願いというのは言い訳だ。
俺の我儘だ。
「そうだね••••••」
黒田とは他の友達と比べても気が合う気がする。
理由は分からないが。
俺の気のせいだったら悲しいが。
俺はそう思っていた。ち
「••••だから、今日、、今から遊ばない?ここに泊まっても大丈夫だから••••多少変わったとしても、ずっと友達でいたいし••••」
ボソっと、俺は呟く。
泊まりで友達と遊ぶなんて、生まれてからしたことが無かった。
楽しそうで黒田としてみたかった。
「ボクと、永遠の友情を誓うのか••••••無謀だね••••けど、良いよ。ボクも永遠に、キミと友達でいたい••••」
「永遠の友情、、、、分かった、誓おう!」
黒田が良いことをいう。
永遠の友情。
何か、いい響きだ。
良い感じ。
かなり嬉しい。
ホワイトには悪いが。
永遠の友情だ。
「やっぱり永遠の友情って、友達を超えて親友みたいな感じ?悪友みたいな感じ?恋人みたいな感じ!?俺達が親友みたいな感じ!?」
「食い付き良いね、、キミ、、じゃあボクたち親友だよ!親友!ボクと大空千晴くんは親友!」
黒田とハイタッチをし合い、盛り上がる。
親友。
黒田とはそう言う友達だったか。
いえい。
後、あんまりこれが浮気にならないと良いな。
フレジアはどう思うだろうか。
「で、今日は泊まりで何する!?ボクとゲームする!?何でもいいよ!どうしても準備がないなら、するのもありかもね!」
「何するか、どうしよう、、するのは流石に浮気だから駄目として、、」
とりあえず、一旦スルーだ。
今は今を楽しもう。
冷静に考えると、いつかこの癖が致命的なことになりそうではある。
それと、するのは余裕の浮気なので駄目です。
「じゃあ囲碁をしようぜ!表に置いてあった奴!ワンチャン俺へのプレゼント!」
「おーいいじゃん!どんなルールかな!え!?浮気!キミ、誰かと付き合ったの!!誰!?あのイちゃん!?ここに居たっけ!?」
「フレジア、あの虹色の瞳の子!付き合ってないけど、駆け落ちするかもって感じ!子供が出来たら、」
「えー!キミ達、やってんねぇ!けど、子供が出来るってのは生物の神秘だよね!キミ!頑張れ!じゃあ浮気はダメだね!人間の生態的に!」
楽しい。
黒田はなんだかんだ優しいし、合わせてくれる。
仲直りできて、良かった。
ああ。
冷静に考えると、良い訳ない。
二度あることは三度ある。
詳しく黒田は言わないが、恐らくホワイトと同じで成長すればするほど、おかしくなっていくのだろう。
これから段々、変になっていくはず。
いつか必ず爆発する、核爆弾だ。
そこもスルーするとは、愚かな、という感じだ。
一方。
感情的に考えると。
いえい!
仲直りできてハッピー!
ウェイウェイ超えてぶぁんぶぁんだ!
浮気にならないと良いな!




