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第十七話 市を見て回る




 「今日は観光と買い物をするぞー!」


 「おー」


 実地研修の翌日、俺とホワイトは朝二人で宿を出た。

 俺達は今、二人で三万円持っている。

 これと師匠から貰った観戦チケットで、色々しよう。


 「まずはとしょかん」


 「次に闘技場で。最後に服を買うんだっけ」


 師匠から貰ったチケットには、この街のマップも書いてあった。

 闘技場のある中心街?には、ほかにも図書館や市役所、そして駅まである。


 「あれ。そう言えば、昨日三人で行こうって話してなかったっけ?もう行っちゃって大丈夫?」


 すっかり忘れていた。

 昨日の夕食の際、今日の予定を話していたらイリカがこっちをチラチラ見てきたのだ。

 それにホワイトが気付き、誘っていたよつな。


 「気づくのおそい。イリカはおこしても、おきなかった」


 「残念。そうだったのか」


 だが、よくよく考えれば当然かも。

 普通の人が一日中全力で動き続ければ、翌日起きれなくなる。


 一方、俺は魔力を動かしていれば、三日ぐらい不眠不休で移動や戦闘が出来た。

 魔力って凄いね。

 

 ホワイトは常に不眠不休でも、移動や戦闘が出来るけど。

 何か、やばいね。

 



—-




 バスに乗り、中心街の図書館に着く。


 この図書館は円形で、全面ガラス貼りだった。

 更に二階建てで、大きさは冒険者ギルドの数倍ある。

 

 そのガラスのドアを手動で開ける。

 こうして、図書館の中に入って行く

 

 「ひろい。いろいろある」


 「凄いね。これ」


 中も、本当に広い。

 隅から隅まで、高さ五メートルの本棚が均等に並んでいた。

 窓際には本を読めるように、多数の机と椅子が置かれる。

 その机には窓から入ってくる太陽の光が当たり、座るだけで心地良さそうだ。


 この落ち着いた光景も、所々にある黒い箱によって、かなり壊されていた。

 あれは何だろうか。


 「マップがあったよ。あれに本の配置は書いてあるはず」


 「わかった。みる」


 分からないので一旦スルーし、ホワイトと入口に貼られている図書館のマップを見る。

 工業興業ブースや哲学宗教ブース、武術魔法ブースなど、様々な種類のブースがあった。


 「わたしは••••••にかいのまほうブースでほんをさがす。ちはるは?」


 「俺は後でいいや。最初はホワイトを手伝うよ。何を探したいの?」


 「さいしょは魔力について。いろいろ」





 「えー。【魔法の観測的発展と魔力の歴史】は••••cの16番棚にあって••••この辺りかな?」


 何か黒い箱に語りかけたら、本の場所を教えてくれた。

 警察署にも同じ物があり、ホワイトが使い方を教えて貰ったらしい。

 そのホワイトから、俺も教わった。

 

 というか、妙に一部だけ文明が発展している。

 宿屋では白黒テレビで服も手洗い。

 一方ここは人工知能っぽいのがあるし、闘技場には謎の回復機能があった。

 かなり摩訶不思議だ。

 

 まあ今は関係ないし、本を探そう。


 「••••【マイマイシャトル発射の法則、その歴史に迫る】••••【薪を食べて発展した町!?超有名漫画から見るその発展】••••【■■■■■■■■■■!!?■■■■■■■】【魔法の観測的発展と魔力の歴史】。あ。あった」


 隣に表紙が黒塗りの謎の本もあった。

 これも今は関係ない。

 スルーで。



 目的の本に向けて、手を伸ばす。

 突如、もう一つの手が現れた。


 その手と俺の手が触れ合う。



 いや、違う。

 触れ合っているのではない。

 押されている。

 それも、黒塗りの本の方へ。


 黒塗りの方はあんまり興味が無いので、抵抗する。

 けれど、相手の力もかなり強い。

 だったら、体重もかけるしかない。



 

 勝った。

 無事、目的の本を取れる。

 余裕が出来たので、その手が伸びて来た方向を見た。


 「キミ。そこは諦めて黒塗りの本を取るべきでじゃない?ボクがただのマヌケだよ。それだと。」


 そこには呆れたようなポーズをした少女が立っていた。

 大体16歳ぐらいだろうか。

 真っ黒な髪と瞳が特徴的だ。


 「何か用ですか?この本をそちらも読みたいとか?」


 「ボクの名前は黒田ノア。キミにこの黒塗りの本を読んで欲しいなって」


 「あの、すいません。今、自分はこっちの本をまず借りたくて」


 「その前に読んで。面白さは保証するよ」


 「自分はその」


 「読んで。特にp179」


 あまりに押しが強い。

 全然諦めなかった。


 これなら先に読んだ方が早そうか。


 「えー。分かりました。読みますね」


 黒塗りの本を広げ、p179を見る。

 そこにはこう書いてあった。


 【予言の通り、世界中や月に••••なんやかんやあって••••1999年に世界は滅ぶ••••これは真実だ】


 「???」


 「そのページの一番上を、横読みしてみて」


 黒田はニヤニヤしながら、そう言ってくる。

 横読みをしてみた。


 「ゆう者れんめいに検えつされる。これしか真じつを伝える方ほうがない。世界をほろぼすのは、勇者れん盟だ••••そうなんですか?」


 勇者連盟と言えば、師匠も恐らく姉ちゃんも所属している組織だ。

 これが本当なら、怖いね。

 

 「それはボクにも分からないなぁ。けど、キミの師匠も所属している勇者連盟が、こんなに胡散臭く思われてる組織だなんてね。キミはどう思うかな?」


 まだ弟子入りしたばかりで、師匠について余り知らなかった。

 思うも何もない。


 というか、これは陰謀論系な気が。

 嘘な感じもするので、早くホワイトに本を届けに戻りたい。


 「教えてくれてありがとうございます。後で自分でも調べて、自分なりの答えを出したいと思いました。失礼します」


 俺はそう言い、すぐ本を持って歩き始める。

 だが、肩を少女に掴まれた。


 「ちょ、ちょっと待って。判断が早いよ。まだ行かないで。ボクにもっと嫌がらせさせて。ホワイトの連れなのに、一直線じゃ、いや、連れだけあってか?」


 ?。

 この少女はホワイトの知り合いなのか?

 しかし、俺はこの少女を知らない。

 

 !。

 もしや、大人のホワイトの知り合いだったりするのだろうか。

 俺が留置所にいた時に知り合った可能性もあるけど。

 聞いてみよう。


 「もしかして、あなたは森にいた頃のホワイトを知っている感じですかね?でしたらホワイトに色々教えてあげて欲しいというか。彼女は記憶を無くしていて」


 これでホワイトの目的達成を、少しでも助けられたら良いな。


 と思っていたら、黒田は目を逸らす。

 冷や汗も少し流している。

 答えたく無さそうだ。


 「い、いやー、キミに冷たい反応されたから、話したくないかな~~。うん」


 だったら、熱い反応をしよう。

 少しの恥は許容だ。

 

 「勇者連盟!!許せない!!俺は許せない!!検閲するなんて最低だ!!日本国憲法を忘れたのか!!非国民の売国奴め!!ボッコボコにしてやる!!!」

 

 「ゆ、揺さぶらないで!全力で反応しすぎだから!落ち着いて!今のボクはか弱いの!!」


 黒田に静止された。

 

 少し熱過ぎたかも。

 一旦、落ち着こう。


 「ごめんなさい。けれど、ホワイトの元に来ていただけませんか?ホワイトも記憶が曖昧で。それでかなり困っていて」

 

 丁寧に言ってみる。

 これで、行けないだろうか。


 「ま、まぁ、無理だね。何されても無理。合わせる顔もないしね」


 普通に断られた。


 やってしまったかも。

 俺がホワイトの目的達成方法を一つ潰してしまった。

 ホワイトが己の過去を知るチャンスだったのに。


 「そうですか、そうですか、、ごめんなさい。失礼します」


 他に良い対応があった可能性もある。

 反省。

 また歩き出す。


 すると、再び肩を掴まれた。

 黒田だ。

 

 「まだ待って。最後に、これだけは言わせて」


 「なんですか?また」


 黒田は目を合わせてくる。

 表情も真面目な物だ。


 「今のホワイトは我儘。それにキミは答えられるの?」


 「?。?」


 「これで終わり!早く行け!しっ!しっ!」


 黒田は虫を払う動きをする。


 ?。

 ???。


 俺は急いでホワイトの元へ向かう。



—-




 「ごめん。遅くなった。これが本」


 ホワイトと合流する。


 ホワイトは窓際の椅子に座り、ほ一冊の本を読んでいた。


 その他にも何冊もの本を机に置いている。

 これら本の上に、俺が【魔法の観察論的発展と魔力の歴史】を置く。


 「いい。で、誰とはなしてたの?」


 今度は、ホワイトが俺の目をじっと見つめてくる。

 チラッと見たのか、何故かホワイトに話している事が知られていた。


 「ホワイトの知り合いらしい人に話しかけられててて。黒田ノアって知ってる?」


 「しらない。たぶんただの不審者」


 ホワイトはいつも通りの顔でそう言った。


 ただの不審者っぽい。

 良かった。

 


 「これ。【せかいのちず!!くにのかいせつといっしょに!!】。ちはる、地理知りたいんでしょ?」


 「ありがとう。取ってくれてたんだ」


 ホワイトから本を受け取る。


 いつか、俺が言った事を覚えてくれていたっぽい。

 少し温かい気持ちになる。

 俺が黒田と話している間に、こんな事をしてくれていたなんて。


 「いい。あそこの金髪がだいたいよんでて。暇だった」


 ホワイトは図書館の端っこを指差す。


 そこにはメガネをかけた金髪の女性が、机に何十冊もの本を積み、ノートに何かを書いていた。

 師匠だった。


 その中でも師匠は【魔力を研究した者たち••••魔力が生物にとって猛毒なわけ】【最強への道】【簡単!!?弟子の育成法!!!】【秘蔵!冒険者ギルドのSランク冒険者データ集!!これで冒険者の全てが分かる!?】【歴史上実在した能力••••その調査結果】【武術全集】を現在立てて読んでいる。


 「本を一旦貸して貰う云々の交渉はした?していないなら俺も手伝うけど。多分師匠だし」


 「した。けど自分もすぐようじあるから、初対面のひとのためにわたせないって。うそいわれた」


 少し師匠の見てはいけない一面を見た気がした。

 やばそうなのは、スルーしよう。

 

 「そうしたら、闘技場での決闘が終わったらまた来ない?ここは十九時までやっているし」


 「わかった。そうする」


 こう言うのは、人間関係で割と大事だ。

 色々大変になる。


 とりあえず俺は近くの席に座った。

 そして【せかいのちず!!くにのかいせつといっしょに!!】を読み始める。


 始めに、一ページを開く。

 そこには世界地図が見開きで書かれている。


 「やっぱり」


 この世界は、地球そっくりの地形をしていた。

 違う点はアフリカの上辺りに、大穴が空いているぐらい。

 やはりあいつと会った場所で見た青い星は、この世界だった。

 

 次に国について色々把握しておきたい。

 その辺の常識が無さすぎて、白黒テレビのニュースで何を言っているのか分からない。


 ページを捲り、【ちょうたいこくまとめ】を開く。


 「ひらがなで読みづらい••••えーと、人類共同連邦帝国、神聖ウェートンゼン•エルマウ共和国、『みんなで一緒に頑張ろう』魔王国、これが三大超大国か••••???」


 非常に読みにくかったので、小さな声で口に出し読んでみる。

 この方がぱっと頭に入った。

 

 所で関係ないが、ホワイトの最初使っていた言語によると、『みんなで一緒に頑張ろう』魔王国になってしまった。

 この通りの国名だと、流石に意味が薄過ぎる


 日本語読みだと、ウィズネルト魔王国だ。


 位置関係はおおよそこんな感じ。

 一番大きな大陸の中心部に帝国があって、その西に神聖共和国、北には魔王国だ。

 

 そうして、これらの詳細へ目を通す。

 

 「至高たる人類最強擁する人類共同連邦帝国は、多数の都市国家とそれをまとめる皇帝によって構成される、人類史上最強にして最高の国家。リキャプチャやアート、プロテクトなど勇者連盟直轄地である都市も多数在籍。人間の普遍的に持つ人権を最大限尊重し、国民の権利を最大限保障する、慈愛の国家でありながら••••」


 「聖女とその使徒達によって統治されている、神聖ウェートンゼン•エルマウ共和国は、エデン教の神、そして聖女への信仰によって成り立っている。聖女を一度批判すれば信者たちを敵に回し、国から居場所を失う。政権批判も許されない独裁国家」


 「極悪国家たるウィズネルト魔王国は、力によって選ばれる魔王と、魔王が指名した四天王によって支配される独裁国家。魔王の権力は絶大で、国民の虐殺が行われた際にすら一切批判が起きないほど。我ら帝国に過去何度も侵攻を試み、その度に数えきれない死体の山を作り出している悪の枢軸。特に1476年の•••」


 思想が強い。

 本を変えよう。






 








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