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第十六話 実地研修?と初修行





 「今日も良い天気。実地研修日和かな」


 「うん」


 プロテクト市に着いてから一日経った。

 俺達は実地研修をしに、冒険者ギルドへ向かっている。


 実地研修とは、引率の人の元で冒険者ギルドでの仕事を受けてみる事だ。

 それをしてようやく、お金が稼げるようになるっぽい。


 「所で。また聞くけど。昨日俺何かした?記憶が無くて。迷惑かけてたら言って欲しいというか」


 「••••めいわくじゃない」

 

 俺にはビールを一気飲みしてからの記憶が無かった。

 気がつくと、ベットの上でホワイトに抱きしめられながら寝ていたのだ。


 これについて、ホワイトやイリカや店員の男の子に聞いてみても、何故かかなり濁される。


 相当変な事をしてしまったような気がする。

 もうお酒は飲まないようにしよう。

 趣味にするのも無しだ。


 「来たか。集合時間ピッタリだな」


 冒険者ギルドの入り口前に着く。

 そこには、金髪の女性が立っていた。

 月下烈だ。


 「••••実地研修とは関係ないがよ。大空。どうだ?オレの弟子になる気はあるか?」


 そして突然、聞いてくる。

 あっちから来た。

 

 「弟子になれば、自分は絶対強くなれますか?」


 「ああ、保証してやる。強くなれなかったら責任も取ろう。契約書も作ってやる」


 女性は俺の目を見、そう言う。


 ここまで言うならば信頼も出来そうかな。

 まあとりあえず、やってみよう。

 

 「それなら、是非お願いします。何をしても強くなりたいので」


 「ヨシ!これから、オレの事は師匠と呼べよ!ついでに!お前らの実地研修の担当研修員はオレだ!今だか始まるのはちょっと待て!もう一人いんだ!」


 金髪の女性、ならぬ師匠が、どこかの空へ目線を向ける。


 直後、何かが近くに降って来た。

 砂煙が発生する。


 「ご、ごめんなさい!あ、朝起きたら、六時五十五分で!寝坊しちゃって!!!遅刻したわ、、」


 イリカだった。

 少し涙声になっている。


 「三分程度だし気にすんな、、所で、オルキデはどうだ?弟子になる気はあるか?」


 「あ、あります!お願いします!!」


 「ヨシ!お前ら行くぞ!!オルキデもオレの事は師匠と呼べよ!」


 「え、え?し、し、師匠は、どこへ行く気で、、私は、実地研修があって、、」


 「オレが今回の実地研修担当だ!行くぞ!」



—-



 俺達は壁から出、森へ来た。


 つい四日前まで居た所である。

 完全に逆走していた。


 「これは実地研修の指導要領だ。大空とオルキデ。お前ら、何が出来るのか行ってみろ。ホワイト、お前は嫌なら言わなくてもいい。修行しないし、個人情報だかんな」


 「俺は他人の魔力を真似する「模倣」と、ついでに魔力を動かす事が出来ます!」


 「わ、私は人を殴ったり蹴ったり出来ます!!」


 「まほうと『停滞』」


 「••••成程な••••大空。つまり、お前が昨日使った光魔法はこいつの魔力を真似して打ったで合ってるよな?」


 「光魔法って『光線(レイ)』の事ですか?それならそうです」


 あれって、光魔法だったのか?


 もしや、他の魔法もある感じだろうか。

 いつか使えるようになれたら良いね。


 「その通りだ••••じゃあ、こっからはお前たちの修行に入るぞ。大空は何となく魔力を感じ取れるか?」


 「無理です。全く感じません」


 「ヨシ。今日はそれからだ。オルキデの方は常にオレに攻撃してこい。それが今日の修行だ。ホワイトは実地研修に関して、質問あるか?」


 「ない」




 「いた。結構痛い」


 俺は師匠によって何かの前に立たされた。

 目隠しをさせられていて、相手の正体は分からない。


 その何かは俺に何度も突撃を繰り返して来ていた。


 どう来るか予想もつかない。

 怪我はしないが、割と痛かった。


 「五感に意識を向けんな。魔力を感じろ。体外で今まで感じた事ないものを気合いで感じろ」


 そう言う師匠の方からは、空気をパンチで切る音がした。

 多分、イリカの攻撃だ。


 「ホワイトは魔法で援護しようとすんなよ。命が掛かった実戦こそ人を一番強くする。その援護は大空にとって良い迷惑だぞ」


 「••••わかった」


 師匠はホワイトに対して、そう言う。

 ホワイトも心配してくれているっぽい。 


 それなら、なるべく早く終わらせなくては。

 今まで以上に集中して。


 「動き良くなってるぞ!オルキデ!だが、まず攻撃に武術の真髄とやらが使えないなら、オレには攻撃を当てられんねぇからな!」


 「分かってるわよ!!そんなこと!」


 外の物に意識を向けるのをやめ、体の魔力に集中する。

 全身に、魔力を感じた。


 師匠からは、体外の魔力を感じろと言われた。

 どう言う事なのか。


 体内以外の魔力を感じたことなんて。

 あった。


 ドラゴンへ『光線(レイ)』を打った時、その魔法がどうなったか何故か分かる。

 体外にあったはずなのに。


 これを自分以外の魔力にも出来るようにするのか?

 分からない。


 「は!当たんないわ!ぎゃあ、」


 とりあえず、光るビームを使うときみたく、魔力出してみる。

 その出した魔力が、他の魔力に当たった。

 こう感じる。

 

 これで合っているっぽい?

 今度は全身から魔力を放出してみる。


 小さいウサギ型に、動く魔力を感じた。

 それが、俺に飛びかかってきている。


 「せい!」


 蹴りを入れた。

 小さいウサギは吹っ飛び、木にぶつかる。


 「良くやった!大空!次の目標は魔力を放出せずとも出来るようにする事だな!って危な!」


 何かのパンチを、師匠がかわす。


 この攻撃が木に当たり、その木をへし折った。

 そんな音がする。


 「分かったか!?大空!」


 「はい!分かりました!」


 「は!喰らいなさい!!」




 「今度は実地研修だ。これはホワイトも聞いとけよ。まずは飯の作り方。そこのウサギの死体を使う」


 実地研修が始まって五時間ぐらい経ち、今はお昼時だ。

 師匠は俺が倒したウサギの亡骸を持っている。


 「魔獣を食うときゃあ、魔力抜きを忘れんな。他者の魔力は、じわじわ体を蝕む猛毒になる。特にオルキデ。魔力がないお前にゃあ、こいつの毒は食ったら死ぬレベルの猛毒だ」


 師匠はイリカの攻撃を避けながら、その合間にウサギの亡骸を、手で叩く。

 俺は何となくそのウサギから魔力が出て行っているのを感じた。


 「え!?そうなの!?そんな生物いるのね、、」


 「魔力って毒なんですか?自分は魔力抜きせずとも普通に食べていました」


 魔力抜きをせず、何回もヒグマの肉を食べている。

 相当遅効性の毒だったりするのだろうか。


 「多分大空は大丈夫だろ。お前の「模倣」の魔力は、自分の魔力を丸ごと変えてるっぽいしな。他人の魔力を取り込む程度は、余裕なんじゃね。は」

 

 大丈夫だった。

 やったね。


 「そういやそうだ。これも実地研修で言わなきゃいけねぇんだ。これもホワイトは聞いとけよ。能力についてだ」


 ホワイトは頷く。

 俺も気になった。


 「能力には三つ、種類がある。その内一つの他者干渉型。これは体内で動かしてる魔力の量で抵抗出来る時間が変わる。オルキデ、お前は抵抗すら出来ねぇ」


 「え••••そんな」


 「絶望した顔すんな。そのために武術の真髄とやらを攻撃時にも使えるようさせてんだ。全ての能力は、使うと思わないと使えない。思われる前に殺せ。は」


 師匠を攻撃していたイリカの動きが、一瞬止まる。

 その隙を、師匠は見逃さなかった。


 「ぎゃ、」


 イリカは蹴り飛ばされ、相当な距離を吹き飛んでいく。

 結構、彼方へ行った。


 「だかな!魔獣で能力が使える奴はいねぇから!そこは安心しろ!」


 師匠は大声でイリカにこう叫ぶ。

 一方、俺は気になる事がある。


 「すいません。ホワイトの『停滞』は他者干渉型でバリアを貼る「結界」と俺の「模倣」は違う、であってますか?」


 「お前の服を止めた奴が『停滞』なら他者干渉型であってるな。バリアを貼るやつと「模倣」は、その他って分類だ。最後の一つは、自己完結型だな」


 結構、色々能力はあるっぽい。

 これも使えると便利そうだ。


 「自己完結型の例は、オレか高田か。高田の能力の「透明」は、魔力を通した物が他者から直接認識されなくなる。お前は見てなかっただろうが、高田が闘技場で突然出てきたのもそれだ」

 

 「そうだったんですね。ありがとうございます」

 

 「ああ。その通りだ。ぶっちゃけ、あんま使わない分類だがな。所で、これは修行入るが、今お前の「模倣」で高田の能力は使えるか?試してみろ」


 「やってみます」


 ひらめの能力で透明になりたい。

 なりたい!

 なりたい!


 何かが根本から、変わらなかった。

 残念。

 

 「すいません。出来ませんでした」


 「そうか。伝聞だけじゃ、大空の能力は使えないって事だな。まあその辺の発動条件は、後で調べるか」


 「ありがとうございます。自分でも試してみます」


 「それで良い。能力は本当重要だぜ。オレもこの世界に来て、魔力と能力を得た。そしたらマジで不可能が可能になったんだ。ありがたい限りだぜ」


 確かに魔力を動かしていれば、普段以上に色々出来る。

 それに「模倣」を合わせればより色々出来る。

 これだけは、あいつのお陰かな。


 「で、話戻すぞ。こうやって魔力抜きをすりゃあ、魔力を持った獣、魔獣を食えるようになる。これをこれから食うぞ」


 「しつもん」


 「なんだ?」


 ホワイトが突如手を挙げた。

 どうしたのだろう。


 「わたし達はまわりの魔力をきゅうしゅうして、魔力を回復してる。ほんとうに魔力が猛毒なら、そんな事できない」


 俺達はそうやって魔力を回復していたのか。

 初めて聞いた。


 「そりゃ、あれだよ。あれ••••」


 師匠は目を逸らす。

 ?。


 「ケツから直で酒飲んだら死ぬ、みてぇな奴だよ。分かりやすくいうとな」


 要は、皮膚のあたりが肝臓の役目を果たしており、魔力を解毒している、と言う事だろうか。

 例えがあれだが。

 

 「おい。例えが汚いみたい顔で見んな。これしか思い付かなかったんだよ」


 「••••おもってない」


 「全然。分かりやすくて良かったです」


 「なら良いが、って危な!」


 イリカが突撃して来る。

 そのパンチを師匠が避けた。


 イリカの拳は木に当たり、その木は彼方へ飛んで行く。


 「次は!飯作るぞ!お前ら!この兎で料理してみろ!」


 「はい、分かりました」


 「••••わかった」



—-




 「これで実地研修と修行は終わりだ。良くやったな。お前ら」


 「今日はありがとうございました。為になりました」


 「はぁ••••はぁ、、そう、なのね••••」


 もう夕方だ。

 イリカは一日中動いていたため、息も絶え絶えである。


 一方、師匠は平然としている。

 やはり、相当強そうだ。

 

 「まず修行の振り返りだ。最初は大空」


 師匠は俺を見る。

 今日は、結構色々出来るようになった。


 「やっぱり筋が良い。魔力を放出しなくても感知が出来るようになったしよ。その調子だ」


 俺は半径三メートルぐらいなら、特に集中しなくても、動いている魔力が分かるようになった。


 師匠のお陰だ。

 弟子になったのは正解だった。

 実はホワイトに、遠く及ばないけど。


 「ま、これ以上は今の内だと無理だな。寝る間も魔力を動かして、体に馴染ませるんだ。そうすりゃあついでに体の魔力の許容量も増えて、同時に使える魔力の量も増えて、身体能力も上がる」


 「?。どうやったら寝る間にも動かせるようになるんですか?」


 「常に魔力を動かしてみろ。そうすりゃあ、無意識に動かし出す。オレはそうやったな」


 そんな事が出来るのか。

 頑張ろう。


 「次にオルキデだ。動きは最初よりも良くなってるぞ。武術の真髄?を攻撃に応用するってのはまだ難そうだが」


 「••••はぁ、はぁ、わかったわ••••」


 イリカは息も絶え絶えに、こう反応する。

 その間に、師匠はポケットから三枚のカードを取り出していた。


 「で、これが冒険者カードだ。お前らのランクはE。身分証になって再発行にも十万かかるから無くすなよ。ランクはE、D、C、B、A 、Sってある。S目指してガンバ」


 冒険者カードを師匠から受け取る。

 それには俺の顔写真と名前、能力とランクが書いてあった。

 

 次に、師匠は六枚の紙を取り出す。


 「それでこれは報酬の一人二万円。三人分、ちょっとオレが自費で色付けた。大事に使えよ」


 「お金だ。ありがとうございます!」


 「かねさま」


 二枚、紙幣を受け取る


 やったね。

 ダブル諭吉。

 よく見たら諭吉ではなく、謎のイケメンの絵が描かれているが。


 これで、やっと趣味探しにも手を出せる。  


 「最後に!明日午後二時から!オレが中心街の闘技場で戦う!関係者席のチケットはやるから!参考にしたいなら来い!以上!解散!」









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