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第十五話 何か来た





 「その、あの、さっきは、力を入れ過ぎたわ!ごめんなさい!」


 「自分も強く押し返し過ぎたかも知れないです。はい」


 「け、敬語はいらないわ!同年代よね!?」


 押し付け合いの後、何故かイリカは俺達の座っているテーブルに来た。

 そうして俺の隣に座り、話しかけてくる。

 

 なのに、イリカはホワイトと目が合いそうになると目を逸らす。

 そのせいか、ホワイトなんてさっきから全然話しかけて来なかった。


 「分かった。所で、大丈夫だった?決闘の後かなり辛そうだったというか」


 だがとりあえず、気になっていたことを聞く。

 イリカは涙を流していた。

 その原因が俺なら、申し訳ない。


 「わ、忘れなさい!!そんな顔してなかった!いいわね!」


 「分かった、、」


 イリカにそう叫ばれる。

 だったら忘れよう。


 「でも!大空は気にしなくて良いわ!あの金髪の人が適性検査を合格にしてくれたの!ギルドマスター?の前で!冒険者ギルドは弱者救済のため?の組織なのにこいつを入れなくてどうするって言ってくれて!」


 「そ、それは良かった」


 イリカは適性検査に落ちていたのか。


 初めて知った。

 だが泣いている理由がなくなったぽいし、良かったねって感じ。


 「それで!!大空はどうするの!あの金髪の人の!弟子になる気はあるのかしら!?」


 「一応なるつもりかな。月下烈さんは強そうだし、ギルドマスター?に会えるほどの権力もありそうだし」


 目的も不明で怪しいけれど、お試しでやってみるのもありだ。

 人から学ぶのが何だかんだ一番早いし。


 これを聞き、イリカはネックレスの黒い石を握りしめる。


 「••••そう••••じゃあ私もなるわ!これでライバルね!」


 「確かに。ライバルになるね」


 「会話中失礼します!料理が出来ました!当店特製!融解羊のうどんのパスタです!是非ご堪能ください!」


 店員の男の子が三つの皿を持ち、テーブルまでやって来る。

 そして、名前が一瞬で矛盾した料理をテーブルに置く。

 外見は、ミートパスタのうどんバージョンだ。

 

 「あれ。凄く美味しい」


 「美味しいわね、、これ」


 「ありがとうございます!サービスで一杯お付けしますね!」


 非常に柔らかい羊の肉と、ちょっと辛めなスパイスがうどん?の麺と非常に合っていた。

 自分以外が作った料理を食ったのが久しぶりなのも含め、かなり美味しく感じる。


 「ホワイトはこの料理も食べないでしょ?それなら貰うよ」


 「そんなおいしいなら食べる」


 ホワイトもテーブルの中央に置かれていた箸を取り、パスタを食べ始める。

 直後、美味しそうに口を緩めた。


 実は結構お腹が減っていたので欲しかった。

 でも、ホワイトが楽しそうだしいっか。


 「こちら!サービスの生ビールです!良ければお飲みください!」


 「うお」


 「え、!私は良いわ••••」


 俺とイリカの前に、木のジョッキに入ったビールも置かれる。


 果たして、大丈夫なのだろうか。

 この世界だと俺ぐらいの年齢でも、飲んで良いっぽい?


 それなら飲んでみよう。

 趣味になるかも知れない。

 お酒を飲むと楽しくなれるとも聞く。


 ビールを一気に飲んでみる。


 苦い。

 独特な味がした。




—-


 


 (おいしい)


 ホワイトは両手で箸を持ち、パスタを食べる。

 かなり美味しかった。


 そのままチラッと、千晴の方を見る。

 何故か自分が見ると謎の行動をするイリカも、ついでに視界に入れた。

 

 千晴は無言で虚空を見つめる。

 一方イリカは俯きながら、パスタを食べていた。

 

 (••••やっぱりつかれてる?)


 「明日の天気です。明日は午前から午後にかけて快晴。いい外出日和でしょう••••」


 二階からはドタバタと、部屋の準備をする音が聞こえ、一階からニュースが流れる音ばかり流れる。


 ホワイトは気を遣い、無言でパスタを食べ続けた。

 先程から気になっていたニュースも見れ、退屈はしない。



 十分後、ホワイトはパスタを完食した。

 先に食べ終わっていたはずのイリカはずっとパスタのない皿を見ている。

 千晴は完食していないが、まだ虚空を見つめていた。


 (すねてる?そんなほしかった?)


 ホワイトはヒグマの肉を渡そうとしてきた千晴の姿を思い出す。

 そこまで食い意地を張っていないと、ホワイトは考え直した。


 (だったら、、どく?)


 ホワイトは千晴をよく観察する。

 少し頬が火照っているだけで、それ以外はいつも通りだ。

 やはり疲れているのかと、ホワイトは思う。


 (•••••••)


 そんな中、蛇吉の毒を千晴がドラゴンに盛った事が脳裏によぎる。

 あの時は蛇吉が楽しそうに千晴への毒の提供を渋っていた。


 (••••蛇吉••••)


 ホワイトは蛇吉を思い出し、少ししょんぼりする。

 性格は少し悪かったが、千晴と蛇吉と三人で戯れるのは故郷を思い出し、楽しかった。




 「おーい!この宿はやっているよな!俺も泊めてくれよ!!」


 突如、宿の扉が開く。

 そこから27歳ぐらいの男性が入って来た。


 「おーい!おい!従業員!いねぇのか!出て来い!!」


 男性は大声で店員を呼ぶ。


 店員の男の子は走って階段から降りてきた。

 顔は、恐れの色に染まっていた。


 「ま、満員なので、無理です、、近くの、公園でどうか••••」


 「何だと!そんな訳ないだろ!?ここガラガラじゃねえか!おい!お客様に嘘付く気か!?さっさと料理出せよ!泊めさせろ!!」


 「わ、わかりました!!」


 男性は、男の子を怒鳴りつける。

 男の子は涙目で調理場へ走っていった。


 (••••うるさい)


 ホワイトは椅子に座った男性を見る。


 男性は足を机の上に乗せ、何度も舌打ちをしている。

 ホワイトの目の隅には、イリカも男性の方を見ているのが映った。

 一方、千晴は虚空を見つめている。


 「おい!速く出せよ!料理!出せよ!出せよ!料理出せよ!ノロマ過ぎんだろ!早く出せ!こっちは腹減ってんだよ!これじゃお客様は満足しねぇぞ!」


 「も、申し訳ありません!急遽作っていますから!」


 「はぁぁぁ!!?言い訳か!!こっちに来いガキ!親なしのお前は!!説教もされねぇから!!客を舐めてんだろ!おい!そうだろ!!」


 「た、只今行きます••••」


 (••••••)


 男の子は涙目で男性の前に立つ。

 男性はニヤっとした。


 イリカが椅子から立ちあがる。


 「ちょっ。ちょっと!なにその態度!!あれよ!!おかしいわよ!あんたまだここに来てから!!十分も経ってないわ!!」


 イリカが二人の間に立ち塞がる。

 顔には義憤の表情を浮かべていた。


 「はぁー!??お前は関係ないだろ!!こいつのせいで!俺は気分悪いんだよ!関係無いやつは話しかけてくんな!!おい!!」


 「そ、、それはそうだけど••••」


 (よわ)


 イリカはすぐ口論に負けた。

 一応、その場にはまだ立ち塞がっている。

 

 (ならわたしが行く)


 ホワイトも椅子から立ち上がる。

 男性はまたニヤっとした。


 「なんだガキ!?お前も文句あんのか!?」


 「うるさい」


 男に向かって、ホワイトは無表情でそう言う。

 一気に男は笑みを深める。


 「お前がうるさく感じんのとよ!俺の不快感どっちが」


 「うるさい」


 話している最中にも割り込む。

 男性は目を見開いた。


 「うるさい」


 「だ、黙れガキ!調子に!!」


 「うるさい」


 「とうっ!」


 何者かが口論にジャンプで割り込んで来た。


 千晴だった。

 顔が少し熱っている。


 (••••だいじょうぶ?)


 「弱きを助け、強きを挫く!暴走戦隊、ボコルンジャー、レッド!!ここに参上!!お前達!どっちが悪いか分からないが!!喧嘩は辞めるんだ!!」


 千晴は全員を睨みつける。

 迫真の怒り顔をしていていた。

 

 「何だ?お前」


 「••••わたしたち?」


 「これで三対ニだ!不利だが、怯まず行くぞ!ブルー!!ボコルンジャーの名にかけて!!」


 千晴は男性の方を見て、こう叫ぶ。

 男性はびっくりする。


 「え?敵なの?」


 「は?このノリで味方?」


 とち狂ったかみたいな顔をする男性。

 これに対し、千晴は顔をさらに赤くする。


 「な、何!!!俺の言う事が聞けないのか!!?ブルー!!」


 「お•••おう。聞けないが」


 「何で!子供の頃の姉ちゃんみたいにはいかないんだ!!真似したのに!!」


 急に千晴は地面に蹲り、拳を地面にぶつける。

 何度も。


 男性は、この言動に引いた。

 イリカも店員の男の子も困惑している。


 (?。なに?だいじょうぶ?)


 「父さんの真似。千晴よ。良く頑張ったな。これほどの高得点を取るとは。流石我が息子だ。誇らしいぞ••••••これだけでは、嬉しくないか?ならば私の財布から好きな額持っていけ。幾らでも良いぞ」


 千晴は蹲ったまま、そう叫ぶ。

 声は先程より少し小さかった。

 

 「母さんの真似。千晴。悩んだ時は簡単な目標を立てるといいですよ。例えば••••例えば••••例えば••••何でしょう」


 「ホワイトの真似。お金は無敵。山田はそう言ってた」


 「俺の真似。燃えた学校を見て、姉ちゃんを失った事に気づいて立ち尽くす、、あ!これは駄目!」


 そう捲し立て、千晴は立ち上がる。

 さらに虚空をまた見つめ始めた。


 「おい。ガキ。酔ってんなら水飲んで落ち着けよ。今は俺のターンなんだよ」


 「大空!どうしたの??酔ってるのかしら!!?」


 「お客様!?酔っていらっしゃるんですか!?水を持ってきます!」


 (?。よってる?)


 ホワイトは首を傾げる。


 そんな中、千晴は再起動した。

 今度は急に歩き始める。


 「全てを失い、トボトボと森を歩く俺!いや!これも駄目!」


 歩いている千晴に周りの机や椅子があたり、ガンガンと音を立てる。

 これを千晴は全く気にせず、歩き続けた。


 「おちついて」


 ホワイトの静止も気にせず、最初座っていた椅子に戻る。

 そして、また虚空を見つめ始めた。


 「下半身を失ったホワイトを見て、絶望した俺の真似!あ!これも駄目!」

 

 千晴は椅子に座り込んだ。


 そのまま目を閉じ、動かなくなる。

 寝ていた。


 「酔いすぎだろ、、ちっ、無理か、、」


 男性は、あくせくしている男の子を見る。

 そして、舌打ちをした。


 「おい!クソガキ!、この客がいつまでいればいるだけ損することは分かってんだろ!?早く売りゃあその分損しねぇぞ!売りゃあこの警察に通報できないラインの嫌がらせも辞めてやるからな!覚えとけ!!」


 そう言い残し、扉から男は出て行く。

 しばらくし、大量の水を用意出来た男の子が帰っ


 「お客様!水をお持ちしました、、あれ?あいつは?」


 「••••かえった」


 「おおお!やりました!」


 男の子はガッツポーズをする。

 すぐ、頭を下げた。

 

 「ありがとうございます!お客様!あの方は悪質なクレーマーで!他のお客様が訪れるたびに来店し、文句をつけてくるんです!庇ってくれて本当にありがたいです!!感謝が絶えません!」


 「••••きにしなくていい」


 「••••わ、私にも気にしなくて良いわ、、特に役立ってないし••••」


 イリカは黒い石を握りしめながら、そう言う。

 ホワイトは千晴の方を見る。

 

 「••••へやはどうなってる?じゅんびできた?」


 「はい!もう出来てます!一部屋しか空けられなくて!この酔っているお兄様と同室でいいでしょうか!!駄目ならば自室を開けます!」


 「だいじょうぶ」


 「••••••大空を運ぶの、手伝うわ。亜紀くんだけだと、大変よね?」


 「はい!ありがとうございます!」


 ホワイトとイリカと男の子で、手足胴を持ち、千晴を持ち上げる。

 そんな中、ホワイトは先程の千晴の奇行を思い出していた。

 

 (••••••?)



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