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第百三十七話 送別会 しよう





 三日ぐらい経つ。


 もう俺は全快になっていた。

 後遺症もない。

 あのお医者さんは、物凄い凄腕のようだった。



 そして、今は夜。


 「千晴全快記念!!送別会とわしの覇道始まり祭じゃ!存分に!飲み!食い!騒ぐのじゃ!特権階級のわしの力で!!」


 海外要人用のホテルにあった宴会会場を、閣下がゴリ押しで貸し切り。

 送別会兼閣下の覇道始まり祭をやっていた。


 明日、閣下は千年太陽王国の王と話す予定である。

 つまり、別れの時が近かった。

 

 「行くよー。ほいー」


 「うぃー」


 それとは特に関係ないが、宴会会場に社交ダンスが出来そうな場所があったので。

 今、ホワイトとダンスを踊っている。


 ダンス中、近くのガラスの壁から見える景色も良い。

 このホテルだけ異常に高く、壁のガラスからは太陽王国のほぼ全ての建物が見える。

 建物は大体殆ど平べったく、だからこそ逆に綺麗な夜景だった。


 「たのしい。もっとやろう」


 「良いよ。ほーい」


 またホワイトの脇を持って、ゆっくり一回転する。

 そして降ろした後は、繋いでる手を持ち上げたり。

 ホワイトの胴体を両手で持ち、くるくるする。


 「うぃー」


 ホワイトは口角を上げている。

 良かった。


 こんなことをしていると、閣下がこちらを見ていた。


 「••••••••ぐぐぐぐぐ、許すのじゃ、最後にわしが勝てばいいのじゃ、」


 閣下は歯軋りもしている。

 やはり、閣下は未だホワイトの事をライバル視しているようだ。


 理由は分かるような不明なような。

 とりあえず最近は、ホワイトと何だかんだ仲良しだった気がしていたが。


 そんなことを考えていると、閣下は霧先さんの方を向く。


 「おい!霧先!わしが「空間」を遮断してやるのじゃ!!それを切っていいのじゃ!!」


 「ガチでござるか!!救済!無敵!感謝!あへへへ!でござる!やりますでござる!」


 投げられた食べ物を切り、そのまま自分の口へ入れる遊びをしていた霧先さん。

 そこに閣下が絡んでいく。


 食べ物を投げていた出雲さんは、微妙な顔になった。


 「閣下、、最後だから言うけど、、、割り込み、、辞めた方がいいよ••••••皆んなから嫌われる、、よ、、」


 「••••忠言を受け入れるのじゃ、、、けどわしも出雲が怖くて嫌いじゃ!ストレス溜めた程度で暴れるなんてよく社会生活が出来るのじゃ!」


 「そ、それはそう、、確かに、、」


 そんな話を傍目に。

 ホワイトをまたクルクル回す。

 

 「たのしい。ちゅ、」


 「良かった。ふんふーん」


 何か全体的に、良い気持ちだ。

 しょんぼりする気持ちもあるっちゃあるが。


 皆んな無事で良かった。

 いえい。





 他にも。

 霧先さんと斬り合ったり。

 出雲さんとホワイトと俺で、歴史の本について感想を言い合ったりして。


 夜も更けてきて。

 送別会も終わりに近づいてきた。



 ここで、閣下が従業員の人が用意した台に乗る。

 追加で虚空を指差す。


 「部下ども!そして従業員ども!一時!出て行けなのじゃ!わしは千晴と特別な事をするのじゃ!」


 こう言い、台から降りた閣下。

 そのまま、ホワイトに近づく。


 「時間なのじゃ!早く行くのじゃ!ホワイト!」


 「••••むりだとおもう」


 そうして、ホワイトの背中を押す。

 俺からは、送別会の会場からホワイトや皆を追い出そうとしているように見えた。


 何故に。

 というのは嘘で、何となく分かってはいた。

 傾向的に、多分そうだ。


 「理解したでござる!ワロタ!でござる!閣下は絶対脈なしでござるよ!大空の好みとは違うだろ!でござる!大空!結果後で伝えろよ!でござる!」


 「大空さんって、、恋愛に興味、あるのかな、、性欲無さそう、、、」


 皆口々に、恋愛系の事を呟く。

 そうしながら、自主的に皆んな出ていく。



 直後、閣下は大扉の鍵を閉めた。

 大きな会場の中には、俺と閣下だけが残る。


 「のじゃー、、千晴よ。聞いてはくれぬか」

  

 じわじわと、閣下がにじり寄ってくる。


 そんな閣下の顔は赤い。

 目も潤んでおり、上目遣いもしている。

 珍しかった。


 「••••どうしたんですか?閣下」


 閣下のこれは、以前見た事がある。

 モロに、恋愛系の反応だ。

 師匠やひらめがしていた。


 だが同じような顔をしていたイリカは、俺の事を友達として好きっぽい。

 だからこそ、確定とは言い切れない。

 が。


 「千晴、、わしと別れたく無いじゃよな?無いよなのじゃ?」


 「••••確かに、別れるのはあれですけど••••」


 「じゃったら、、」


 「••••だったら、?」


 少し心臓がバクバクする。

 変な感じに返したら、嫌われてしまわないだろうか。

 それが怖くて、嫌だった。


 「じゃから、、人類共同連邦帝国の三代目皇帝の配偶者になる事を前提に、、」


 「••••前提に?」


 ここで、思いっ切り閣下は息を吸う。

 追加で俺の顔を指差す。

 顔も見た事がないぐらいに、赤くしている。


 それに、寂しがりな印象がある閣下。

 悲しませるのも嫌だった。


 「わしの彼氏になれなのじゃ!ついでに第一の部下である事は継続で行くのじゃ!わしが上じゃ!」


 「••••••はい、」


 予想通り、告白をされてしまった。


 この世界に来てからは初めてだ。

 というか、ここまで親密になった人から告白されるのは生まれて初めてだ。



 けれど、答えは決まっていた。


 「••••申し訳ないです。どう考えても、閣下の事はそう言う目で見れないというか、」


 「、、、予想通りなのじゃぁぁ、、こうなると思ってたのじゃ、、」


 一気に、しょんぼりする閣下。

 目がかなり潤んでいた。

 結構、泣きそうだ。


 その状態で、閣下は顔を上げる。


 「じゃったら、わしを抱きしめるのじゃ!」


 「???。何故に?」


 どこか、やけくそ感のある閣下。

 涙が目から溢れ落ちる。

 その状態で、俺に詰め寄る。


 「わしの一世一代の告白を断りおった罰じゃ!その後!この場所で!キスじゃ!その後ヤるのじゃ!子供を作り!そして結婚じゃ!断ったんだからやれい!」


 「???。え、えー、ここで、?というか••••」


 本当にそう言うのは無理だ。

 13歳の閣下にそう言うのをする趣味は、俺にはない。

 まずそもそも、俺は他者に対して興奮した事がない。


 だが、そのまま言うのは失礼だ。

 そして、閣下に嫌われるのは少しあれだ。

 理由はこの前気が付いていた。

 

 「••••失礼かも知れませんが、自分は閣下を妹みたいに思っていて••••」


 閣下には、誰かと似ているような感じを抱いていた。

 姉ちゃんとエゼルさん間や、黒田と田中ぐらいには、心なしか似ている気がする。

 

 故に、妹みたいに思っていた。


 「••••だから••••そう言うのは、少し••••抱きしめるぐらいなら、大丈夫ですけど••••」


 「、、なんじゃと!?」

 

 「••••はい。そうです?」


 妙にこの発言に閣下が食い付いてきた。

 涙はまだ少し出ていたが。


 やはり、閣下も抱きしめられたいのだろうか。

 閣下にも良い気持ちでいて欲しいし、抱きしめよう。


 「寝取り成功じゃぁぁぁ!ホワイトに勝ったのじゃぁぁ!今度は好きなアーティストの田中から相棒の座を強奪してやるのじゃぁぁぁ!!」


 「••••???」


 「踊るのじゃ!千晴!!手を出せなのじゃ!!」


 「???。はい?分かりました?」


 違った。

 抱きしめる云々で喜んでいた訳ではなかった。


 閣下に言われた通り、俺は手を伸ばす。

 すぐ閣下は自らの手で、俺の手を掴んだ。


 「のじゃ!実はちょっと憧れがあったのじゃ!好きな人とこういう場所で踊るのを!千晴!わしのダンスに合わせるのじゃー!」


 くるくると、回転を始める閣下。

 勝手に物凄いスピードで踊り出す。


 やばいスピードで、足もカチカチする。

 それに合わせ、俺も手や体を動かした。


 「な、なるほど?分かりました」


 社交ダンス?の大会みたいなスピードだ。

 閣下もこう言うダンスに慣れている感じだった。

 


 最後、閣下がわざと倒れ込む。

 それに合わせ、両腕で背中を支えた。

 

 抱きしめている感じになる。

 閣下は上目遣いしてきた。


 「、、わし、ダンスなら相棒の田中も忘れさせられるのじゃ!愛してるのじゃ!」

 

 「そ、それは、ま、まあ、良かったです、」


 本当に良かった。

 生きてて良かった。


 あの嫌がる感情や怖がる感情から解放された為、俺の対応が全体的に甘い気がするが。

 良かった。


 二人を忘れさせる事を、閣下は狙っている気もしたが。

 一旦は良かった。

 多分良かった。


 



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