表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/184

第十四話 色々ない





 「おもしろかった。決闘。みごたえある。怪我はどう?」


 「傷は完全に治ったし大丈夫。趣味にするのは体が痛いしあれだけど」


 決闘や明日ある実地研修の解説、などでいつのまにか夕方になっていた。

 

 ツインテールの少女は、オレがなんとかすると連呼する金髪の女性に強制連行される。

 ひらめは俺について来ようとしたが、任務があるだろと金髪の女性に引っ張られ、何処かに消えた。


 「そうだ。あの闘技場に入ってきた金髪の人。あの人の魔力って、どんくらい動いている感じだった?」


 「金髪?」

 

 俺は頷く。

 色んな理由であの女性がどのくらいの強さなのか、把握しておきたい。

 

 「おおい。まよわせる結界をはってた時の竜族より」


 「本当に?凄いね」


 ならば、明日にでも話を受けるべきか。

 あの金髪の人は、明後日以外いつでも冒険者ギルド近辺にいると言っていたし。

 何か強い人が多いから、早く強くなりたい。



 いや、それは後。

 今はより重要なことがある。

 


 お金がない。

 だから食事も取れないし、どこにも泊まれない。

 

 冒険者ギルドで金が稼げるようになるのは、明日の実地研修後、冒険者カードを受け取ってからだった。

 それまでは仮登録という形っぽい。

 警察官の人は、教えてくれなかった。

 

 またチラッと路地裏を見る。

 ワンチャン、お金が落ちていないだろうか。


 「ちはる。別にいい。のじゅくで」


 「流石に、流石にそれは。多分8歳と16歳が知らない街で野宿するのは危険過ぎるというか。何かやばいのが出て来てもおかしくからさ」


 「わたしはもっと年寄り。だいじょうぶ」


 年寄りでもおかしくはない。

 ホワイトは警察の人を含む異世界の人達と比べても生態が変だ。

 彼らも食事や睡眠は取っていて、色々俺に近かった。

 

 「そ、それでも不味いんじゃない?見た目的に。他人から見て若いというか」

 

 「••••たしかに。いうとおり」

 

 ホワイトは頷く。

 納得いってもらえたっぽい。

 

 なので近くにあった路地裏を、チラ見する。

 ゴミしか落ちていない。

 訳では無かった。

 

 「けど、だいじなお金様が、すてられてるわけない。なにかうろう」

 

 「いやあった!多分お金だ!」


 路地裏に、小さくて丸いものが転がっている。

 

 多分硬貨だ。

 それを拾い、ホワイトの元に戻る。


 「ほんとう?」


 「本当だから、警察の人の言っていたことは忘れてくれ!」


 そう言いながら、拾った硬貨?を街灯に照らす。

 こうして、硬貨をよく見る。

 月が、硬貨の裏に彫られていた。


 表を見る。


 十円と大きく書かれてあった。




 「まさか警察を呼ばれるとは、、これが多分資本主義の闇、、」


 あれ以降、お金が見つからない。  

 もう夜になって来ていた。

 だから先ほど十円だけ持ち、近くの宿っぽい所に泊まれないか交渉しに行ったのだ。


 結果は、必然の全敗。

 その上、警察官の人にも呼ばれそうになった。

 確かに迷惑だとは思ったいたが、そこまでされるとは。


 「やっぱり、お金は無いか••••」


 辺りはどんどん暗くなっている。

 俺は路地裏を見ながら、街灯や電柱のある道を進んでいく。

 ドンドン、郊外へ行っていた。


 かなり不味い。

 路地裏を見る。

 何もない。


 やばい。

 選択をミスった。

 普通に売れるものは俺達にはないし。

 どうしよう。


 「ないなら、今日はそのへんですごそう。わたしの感知があればだいじょうぶ」


 「そうかもだけど。負担を掛けちゃわない?」


 「よゆう。ちはるは寝てもいい。何かあっても、わたしがなんとかする」


 しかし、百%負担を掛けるのは宜しくないと思う。

 それにこの世界では何が来る可能性があるのかも分からない。

 家がないのはやばいだろう。


 だが、次の路地裏にもお金が落ちていなければホワイトの言う通り、今日はホームレス化しよう。

 もうそれしかない。

 人里は何をするにも金がいる。

 金が無ければ、趣味探しなども出来ようもない。

 

 「分かった。それならこれで最後に••••」


 近くの路地裏を覗く。

 ボコボコに凹んだ看板が投げ捨てられていた。

 これだけだ。


 「やっぱりこれだけか、、ん?あれ?お!これ凄い!ホワイト!見てくれ!」


 「なに?」


 その看板には、宿の広告とその地図が貼られていた。

 これを拾い、ホワイトに見せた。

 

 【今ならなんと!一人一泊五円!!なんとお得なんでしょう!泊まるしかありませんね!?その••••】


 「これ!見てくれ!拾った十円で泊まれるかも!」


 「あやしい」


 「ちょっと確認してみない?流石にホームレスよりギリギリ良いと思う」


 「あやしい」



—-




 看板に従い、宿にやって来た。


 この宿は木造の二階建てのまあまあ大きな建物だ。

 見た目は至って普通だ。


 「あやしい」


 「こ、これで最後だから。確認してやばそうだったらホームレスになろう」


 「さいごね」


 ドアを叩き、開ける。

 宿屋の一階が、見えた。


 「本日のニュースです。五日前の四天王による護送任務襲撃事件、その報復として勇者連盟は••••」


 ここには十個のテーブルとそれに付随する席があり、奥にはキッチンと二階への階段がある。

 天井の隅には、ニュースを垂れ流す白黒テレビが付いていた。

 そして、キッチンからは包丁がまな板に当たる音が聞こえる。


 何か昔の食堂みたいな感じだ。


 「イリカ」


 ホワイトが突如、椅子に座っているお客さんを指差す。

 この宿には、その人しかお客さんがいなかった。

 そして、先ほど見たような姿をしている。


 「?。あの人と知り合いだったの?」


 「ちはると決闘したツインテール。アナウンスでいってた」


 あのツインテールの少女は、イリカと言うのか。


 始めて知った。

 アナウンスなんて、自分達が呼ばれた時以外は基本騒音として処理していたから。


 「へー。よく覚えてるね。名前まで」


 「うん。魔力なしであそこまでうごけるの、初めてみた、のもある」


 「あれで魔力を動かして無いのか。そっか、、」


 それなら『停滞』をイリカ自身に使うだけで瞬殺出来た。

 怪我する必要も無かった気がする。

 つい、イリカは相当量の魔力を動かしていると思い込んでいた。


 まあ、瞬殺していたら俺の強さは測れなかっただろう。

 セーフ。


 「すいません。二人で一泊出来ますか?」


 このイリカを一旦スルーし、大きめな声でこう言う。

 本当に五円で泊まれるか、それが今は一番重要だ。


 「お客さん!??二人も!?大歓迎です!一部屋しか用意できませんが!!近くの椅子に座って、お待ちください!!」


 調理場から声が届く。

 この声は相当若い男の子のものだった。


 そのタイミングで、イリカは俺達の方に振り向く。

 目を見開いていた。

 直後、椅子を立ち上がり、猛ダッシュで階段を登って行く。


 俺とホワイトはそれに首を傾げながら、近くの椅子に座った。


 「男の子が一人でやってはいないだろうし、多分あの子はイリカの弟じゃない?だったら多分この宿は大丈夫なはず。一応知り合いではあるし」


 ホワイトは頷く。

 これも納得いって貰えたっぽい。

 ワンチャンに賭けて良かった。


 すぐ、ドドドドと二階から猛スピードで何かが降りてくる。

 イリカだ。

 何か持っている。


 そして、イリカは俺に走って近づいてきた。

 どうしたのだろう。


 「さ、さっきぶりね!大空!これ!受け取りなさい!ほら!!」


 挙動不審なイリカから、ガラスの瓶を押しつけられる。

 瓶の中には、多くの白い錠剤が入っていた。


 「?。何これ?」


 「万能薬!!飲んだら疲れを癒せるらしいわ!!あげる!!」


 「???。大丈夫です」


 「いいから受け取って!決闘!!突然挑まれて大変で!疲れたでしょう!?全財産をはたいたから!受け取って!」


 イリカは俺に錠剤を押し付けようとする。

 

 だが、要らなかった。

 違う世界のよく分からない薬は、普通に怖い。


 イリカの手を押し返そうとする。


 「だ、大丈夫です、、あれは自分にも得があったというか、、」


 「遠慮しなくていいわ!ほら!なんかどっかの保証もあるらしいわよ、これを毎日飲んで健康になった人も一杯いるって!売ってる人が言ってたわ!」


 全く押し返せない。

 俺よりイリカの方が力が強かった。


 その上、余りにも強過ぎて、俺の座っている椅子も傾き出す。


 「い、椅子が。落ち着いて。一旦、落ち着いて」


 俺の座っている椅子が、倒れて行く。


 突然、その椅子は斜め四十五度で止まる。

 ホワイトの能力だ。


 「なにやってるの」


 急に椅子だけ止まった。

 それが原因で、手と手の間から瓶がすっぽ抜ける。


 バリィンという音が、周囲に響いた。

 中の白い錠剤が、床に転がる。


 「あ」


 「お待たせして申し訳ありません!お客様!!経営のため?人のために?客のため!!一泊五円の宿屋!癒しの宿のオーナー兼店長兼従業員兼••••?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ