表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/200

第百十九話 No, I don’t






 結局、ナバナバさんにライブを成功させる方法を相談することにした。


 彼女がどれほど頼れるかは分からないが、やってみよう。

 田中と一応、約束している訳だし。


 「••••••理解ー!大空さんが絶賛流行り中の狂音コンビの相方だったーとはー!勇者という事で納得はー出来ますねー!」


 「??。そんなに流行ってるの?」


 「現状に不満のあるアングラ界隈のー!底辺共の中だと神ですよー!CDやテレビ越しでは絶対味わえない!ライブならではの楽しさがあるとー!」


 笑顔だが、笑っていない状態で言うナバナバさん。


 割と、いえい。 

 かなり流行っているようだ。

 まあ、田中の能力の影響が大きそうではあるが。


 「で、人気を出す秘訣でーすか!そんなの簡単簡単!常人とは脳が違う!超天才ナバナバちゃんに任せてーおけー!」


 大袈裟に人差し指を振り、語るナバナバさん。

 犬耳もピクピクとしている。


 すると、閣下は大袈裟に目を見開く。


 「なんじゃと!?簡単で画期的な方法!?それは果たして一体!?」


 「顔出しすればいーのでは!こんな美少年ー!なかなかいない!」


 「いやありがたいのですが、それはもう駄目で。顔を出すとそっちに意識が向かってしまって、音楽性を損ねるらしいので」


 その案も出たが。

 田中の本来の目的を妨害してしまうと言う事で、辞めておこうとなった。


 「使えないの!まだ出せい!ナバナバよ!」


 固まり、考え出すナバナバさん。

 その足を蹴る閣下。


 暫くし、またナバナバさんは口を開く。


 「••••••許可なしでー。様々な箇所でライブをしていくのはどうですかー?狂音コンビは、拘束状態にある並のアート市民のー。不満の受け皿となっている側面があーります。よりその側面を強化するのはどうかとー」


 「それも無理で。犯罪のような事は出来ないんです。市長さんからやる許可を貰っていて、時間も限られている今の状態でそれをやると、そもそも色々不可能になるというか」


 「••••あー。ちっ、あー」


 断られ、舌打ちをし。

 自分の犬耳をいじり始めるナバナバさん。


 何故か俺も少しあれな気持ちになる。

 が、考えて貰っていたのを断っているし何も言えない。


 「••••使えぬのじゃ。ナバナバ。部下にするには足りていないかのう。態度も悪い」


 「••••いや、全然。凄いと思いますよ。偶々こちらの制限が厳しいだけで。よく市民の状況を把握して分析して活かせているというか。もし、閣下が上を目指すのなら、居ても損はないかなと」


 「••••••正論じゃ。わしが見えない面でもあるのじゃ、、」


 ボソボソと閣下と話す。

 

 一方、ナバナバさんはイラつきながら、未だ色々考えているようだ。

 だが、少しだけ不安そうである。

 何が彼女を駆り立てるのか。


 「おい!ナバナバよ!他の案はないか!出せるだけでも!わしの第二の部下として!から認めてやろう!」


 「••••••!」


 ナバナバさんはピクっと体を動かす。

 何かを思いついたようだ。


 「•••••閣下がこの地にある地方局に出てー!紹介しましょうー!?ここの地方局はアート市では人気でーす!そしてー!この市の市民共はー!中都への憧れが隠し切れていない!」


 これは良い感じな気がする。

 中都とは、帝都の事だろう。


 だが、問題がある。

 故に頭から排除していた。


 「やって頂ければ幸いですが、閣下にとって迷惑じゃないですか?嫌ならば、本当に全然大丈夫です」


 閣下を巻き込んでしまう事だ。

 だから確認をしなければ。


 このような趣味探し?巻き込んで、他人に迷惑をかけるのは宜しくない。

 以前、失敗した事がある。


 すると、閣下は俺を指差す。


 「怠いのじゃ!千晴という部下の為に働くとは!」


 笑顔で閣下は、面倒くさい的な事を叫ぶ。


 果たして、どういう感情なのか。

 言葉と、表情が合っていない。


 「じゃが!好きな部下と歌手をテレビに紹介し!人気を爆発させるのは!最高なのじゃ!帝国の特権階級が!今から市のテレビ局へ凸なのじゃぁぁぁ!!」


 「ありがとうございます。ナバナバさんも」


 すぐに頭を下げる。

 協力してくれた上で、良い案が出ていえいって感じだ。




——




 俺達はテレビ局に向かって歩き始める。

 先ほど閣下が電話したら、来てOKと言われたのだ。


 「ナバナバさんは何故、閣下の部下になろうと思ったんですか?」


 ここで一応、犬耳の少女に尋ねる。


 もし彼女が魔王国や反勇者同盟のスパイなら、今の内に見極めておきたい。

 閣下に彼女を部下にする事を勧めたのは俺だし。


 「大空さんこそーですよー?何故、性根の捻じ曲がった閣下の部下なんぞやっているのですかー?アナタなら、何処でも引く手数多ですよー?」


 「••••自分は目標がないので。自分自身でも何がしたいのか分かっていなくて、、ナバナバさんにも聞いても良いですか?」


 俺はもう完全に閣下の部下になってしまった気がする。

 とりあえず、逸らされた話を無理やり戻す。

 

 すると、ナバナバさんは嫌そうな、面倒くさそうな顔になった。

 

 「••••この世に生まれたからにはー。成り上がりたいーんですよー。必ず数年以内に乱世が始まるー」


 「確かに。そんな流れですよね」


 「わたし、農村出身で、力も弱いんでー。権力を得るにはー乱世に乗じてー、ギャンブルをするしかないんですよー、」


 「成程。ありがとうございます。らしいですよ、閣下」

 

 聞き耳を立てていた閣下に、そう言う。


 ナバナバさんは恐らくスパイでは無さそうだ。

 目標も一応筋が通っている。

 その上スパイにしては、色々性格面に穴がある。


 良かった。

 たまたまその辺にいた自称超天才で、出世欲のある人っぽい。


 「ぶぅ。何が性根の捻じ曲がってるのじゃ!許せんギャクじゃ!じゃか!慧眼じゃ!わしは未来の!頂点じゃ!まず!完璧なる帝国の王じゃ!!!」


 「あー、やる気だけは十分ーな閣下ー!1%ぐらいの可能性はありまーすよ!」


 「ナバナバは会った時からいつも上から!きー!!千晴が勧めていなければ!わしが狂っていなければ!部下になどしていないのじゃ!!」


 またジタバタ暴れる閣下。

 面倒くささが隠せていない目で、眺めるナバナバさん。



 こうして、テレビ局前についた。


 「あれ。田中だ。何か話してる」

 

 門の前には、何故かもう田中がいた。


 そんな田中は、きちっとしたスーツを着た人と話している。

 恐らくスーツの人は閣下を待っている人だろう。


 「お!相棒!丁度いい!局員!これが僕の相棒さ!ちょっとぴり!ちょっぴりだけで出させてくれないか!」


 俺に気付いた田中。

 近づいてきて、肩を組んでくる。


 直後、スーツを着た男性は俺をジロジロ見てきた。

 特に顔をよく見ている。

 

 「••••可愛すぎでは?彼の顔を出して音楽性を多少ポップに寄せれば、寧ろこちらから擦り寄りますよ」


 田中は固まった。

 何の話をしているだろうか。


 というか、俺の顔ってそんなに良いの?

 だから、異性から告白される事が副会長と比較しても、結構多かったのか。


 「今、何の話をしている感じ?テレビに出る系の話?」


 「理解力高いね、相棒••••••全てその通りだけど、どうする?」


 いつもよりクール目な田中はこちらをチラッと見る。

 どうしよう的な目でもあり、不安そうな目でもあった。


 「いいえ。ありがたいですけど、田中の夢からは離れてしまうので、今のままでやりたいです」


 手段を選ばなければ、まあ何でも出来る気がするが。

 ここまで相方と頑張って来た訳だし、辞めておきたい。


 田中も多分そんな気持ちだと思う。


 「相棒、、ぐすん、」


 「???。突然」


 こう言うと、突然田中が目を服の袖で抑える。

 何か泣いているようだ。

 俺のせいで、多分情緒不安定な状態にまた入ってしまったっぽい。

 けれど、泣くのは初めて見る反応だ。


 背中がブワッとする。

 初めての感情だった。


 「やばいのじゃ!部下が憧れのアーティストに寝取られる!貴様!ここの偉い奴か!?」


 裏で、閣下が会話に乱入する。

 スーツの人を閣下は指差した。


 「高劉超様。お待ちしておりました。何か御用で?」


 「わしがここの地方局に出てやるのじゃ!こいつらという好きなバンドを紹介する為に!やってやるのじゃ!」


 「••••••では、是非お願いします••••••需要••••人気、実力、現状••••••作れる!流行作れる!うちの番組から新たな流行作れるぞ!はは!いやっふー!」


 急に壊れたスーツ姿の男性。

 何か行けそうだ。


 「ほら、行けそうだよ。田中、、そんなにならなくても、」


 「相棒、、」


 まだ袖で目を抑える田中。

 未だ、嗚咽も抑えられていなかった。


 何故こうなったんだ。

 理由が分からない。

 田中の過去や夢を知っていても、泣く理由が分からなかった。

 そして、田中が能力を使っていないから、感情も伝わって来ない。


 俺のせいもあるだろうし、何とか止めなくては。

 

 「相棒、、僕について来てくれて、ありがとう、、皆の期待を裏切って、自殺した身で、こんな幸せになれて、良いのかな、、」


 「え、?だ、大丈夫だよ、今はファン?の期待に答えられているだろうし、?」


 「、、僕は幸せ者だよ、、」


 「そっか、凄そう、、」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ