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第百十八話 hole on the next






 常に暗いアート市の中。


 暫くして、俺達は何故か毎日ライブが出来るようになり。

 色んなオファーも来るようになり。

 この影響で、観客やファンがどんどん増えていき。


 何か、滅茶苦茶良さげに進んでいた。

 かなり想定外である。


 「申請が通ったぞ!相棒!一週間後!ドームでライブが出来る!やった!」


 「おー!やった!」


 遂に、このアート市において最も大きいドームでライブが出来るようだ。 

 ライブ後、今までで一番良い笑顔の田中に言われた。


 一方、俺も結構良い感じの気持ちになる。

 恐らく田中と同じ気持ちだ。


 と思っていると、突如田中は頭を抱える。


 「いや、違う、、何を喜んでいるんだ僕は、、デカいライブをやる事は、目的じゃないはず、もう叶えたんだよ、大昔に、、」


 更に、歯も食いしばる田中。

 かなり悔しがっていた。


 「田中」


 「何だ、、相棒」


 田中は情緒が不安定な傾向がある。

 そうなった理由は、田中の過去を聞いたおかげで少し分かるようになった。


 更に、田中の迷走する気持ちも分からないでもない。

 

 「素直に喜んでいいと思う。目的じゃなくとも、良い事ではあるし。沢山の人が喜ぶし。目標に向けて田中が頑張ってきたのが、報われたってことだし」


 「••••••相棒」

 

 田中の目を見て、俺は本心を言う。

 


 直後、田中はすっと真顔になった。


 「いや、僕達の今の人気だとあのドームを埋められないよ。最低でも、完全な成功は見込めない。気まずい空間になる」


 「え?そうなのか。じゃあ、成功するためにはどうするか」


 「相棒、、分かった。一策練るか、、」




——




 良い策は、全く出なかった。

 一応最有力候補が出たには出たが。

 それを行うと音楽性を損ねる可能性があり、実行は難しかった。



 なので、とりあえず、数日振りに宿へ帰ってきた。

 気分転換も兼ねてだ。


 「••••••」


 そして、自室の扉を開ける。

 自室の中には、装飾が凝っている二つのベットや何かぐにゃぐにゃとした時計など、色々あった。


 そんな中で、ホワイトが本を読んでいた。

 ベットの上で寝転び、それをしている。


 「あれ。今日は出雲さんも図書館に行っていないのか」


 「うん。「たわし」を赤目とさがすらしい」


 こちらを見て、ホワイトは言う。

 赤目とは、果たして誰なのだろうか。


 まあいいや。


 「どんな本を読んでいる感じ?見ていい?」


 「••••いい」

 

 ホワイトの横に座り、許可を貰う。

 そうして、本を覗き込む。


 「なるほど。アート市の歴史の本を読んでいるのか」


 「••••うん。長いれきしあった」


 その本には、537年、海岸線からアート市に攻め込んできた千年太陽王国の使徒軍。

 これに対し、勇者連盟本部の研究部門部長で初代市長は、自らの意思を「付与」したロボットを使い。

 彼らを撃退したと、書いてある。


 「凄いね。この世界でそんな昔からあるなんて」


 「••••すごい」


 アート市も千年太陽王国も、長い歴史がありそうだ。

 

 一方、ホワイトとこんな感じで会話をするのも、少し久しぶりだ。

 かなり、いえい。


 「ちはるぅ」


 突然、ホワイトが膝の上に転がってくる。

 本もその辺に置に、俺の膝に顔を押し付けた。


 「••••そっか」


 俺に甘えて来ているのかな。

 ホワイトもまあまあ俺と同じ気持ちだったのだろうか。

 

 すぐ、ホワイトは顔を上げる。

 そして、俺と目が合う。


 「んー。ちゅー」


 ホワイトは唇を尖らせる。

 その後も目も閉じた。


 恐らく、唇へのキスを待っているっぽい。


 「••••••ちゅ」


 頭を下げ、自分からそれをする。


 唇同士のこれは、割とギリギリな気もするが。

 愛しているみたいなあれだし、セーフかな。

 

 「ちゅー」


 すると、ちょっと舌が入ってくる。

 これは流石にあれなので、首を振った。


 そんな間も、ホワイトは口角を上げている。

 何か楽しそうで、俺も良かった。


 「ちはる、すき。ちゅー」


 「ぎゃあ!!やばい事やってるのじゃぁ!千晴、好き、ちゅー!なのじゃぁぁぁ!!猫撫で声で、兄ポジションに好き、ちゅーなのじゃー!!!」


 閣下が、叫ぶ。

 部屋の扉をノックなしで開けた閣下が、やっている。


 「•••••••••なに」


 「••••••閣下。何か用ですか」


 一旦、お互い離れる。


 ホワイトは顔を少し赤くし、閣下を睨みつけていた。

 更に、何故か俺もあれな気持ちになる。

 顔が熱くなり、背中がぞわぞわしていた。


 「はっはーなのじゃ!千晴に紹介したいものがあるのじゃ!今すぐ着いて来い!何ならホワイトも来い!わしの威厳!見せてやるのじゃ!」


 閣下は胸を張りながら、また叫ぶ。

 何か自信がありそうだ。


 だが、今すぐは少しあれだ。


 「???。あの、すいません。もう少しゆっくりしたくて。相談もしたくて」


 これを言うと、目と口を開いた閣下。

 ガーンという感じだった。


 「•••••いや、待つ!わしは待つ!時に謙虚なことも必要なのじゃ!!絶対的な皇帝になる為に!最後にわしが勝てばいいのじゃ!」


 「••••••?。分かりました。三十分ぐらいしたら行きます」




—-




 暫く、ホワイトとじゃれあい。

 少々相談にも乗ってもらって。

 閣下の元に来た。


 「驚愕するなよなのじゃ!千晴よ!見せたい者がいるのじゃ!」


 「はぁ。はい。分かりました」


 二人で、アート市を歩く。

 何か見せたいもの?がいるらしい。


 突然、道端で閣下は止まった。

 そこには地面にブルーシートを引いて、絵を売る少女がいた。

 頭に犬の耳が生えている。


 「こいつじゃ!わしの第二の部下!金と権力に釣られて来た!紹介するのじゃ!第一の部下よ!」


 閣下がそう言うと、少女は顔を上げる。

 その前から口を開いていた。


 「りりりーっす。売れない芸術家のーナバナバちゃんでーす、第一の部下、宜しくー、!?。彼!!あれじゃないですか!次期皇帝陛下!」


 一気に立ち上がったナバナバさんが、閣下に詰め寄る。

 閣下は嫌そうな顔になった。


 「まさか!四天王のラファエルを倒したという魔人族の大空千晴!!この人が第一の部下なんですか!?私の想像より余程やりますね!」


 「なにを偉そうに、評論を、、」


 「?。紹介に預かりました。大空千晴です。一応、魔人族ではなく、異人族になります。よろしくお願いします」


 とりあえず、頭を下げる。


 閣下は何故かナバナバ?さんが嫌いっぽい。

 と言うか、俺を紹介した意味とは。


 「まさか勇者だったとは!ご丁寧にどもー!これから宜しくー!」


 直後、ナバナバさんに背中をバシバシと叩かれる。

 割と馴れ馴れしい感じだ。


 すると、閣下が近づいてくる。


 「••••今、自分で気がついたのじゃ。こいつ、怪し過ぎるのじゃ。見ろ、こいつの絵を」

 

 閣下は小声で話しながら、ナバナバさんが売っている絵を指さす。

 

 その絵は、上手かった。

 剣を掲げた女性の像がある広場を、そのまま書いた物である。


 「写生したものをただただ売っているのじゃ••••芸術家を気取っているのに、何も思想を感じない。冷静に考えて、やばいのじゃ、、焦り過ぎて、わし、間違えた、、かの、?千晴よ、」


 「確かに。本当に怪しいですね」


 確かに、怪しかった。

 急に閣下が冷静になって、自分の間違えを認め出すもの分かる。


 けれど、一応恩もあるし。

 傾向から見ても、閣下は意見を言われるのを嫌がる気がするが。

 自分の意見を言おう。

 

 「ですが、逆説的に、彼女にとって利用する価値があるからこそ、閣下に近づいてきたと言えるのでは」


 「••••だから、なんじゃ」


 「だからこそ、信頼できると言うか。彼女は自分を知っているほど、新聞などの情報もよく把握していますし。魔王国とかのスパイとかでない限り、部下にした閣下の判断は正しいと思います」


 「•••••••真理じゃ••••少なくとも魔王国は魔人族しか住んでいない••••部下の忠言を聞き入れるのじゃ。器のでかいわし。アホみたいな名前のこいつを受け入れよう」


 何か少し変わった気がする閣下は頷く。

 こうして、俺から離れた。


 そして、遠目にこちらを見ていたナバナバさん。

 こちらの世界ではアホみたいな名前らしい、彼女を見た。


 「貴様!ナバナバよ!貴様を真の第二の部下とする価値をあることを示すのじゃ!我が第一の部下の悩みである!ライブでドームをどう満員にするかを、指し示す事で!」


 「え、閣下。何で知っているんですか」


 「部屋の外でずっと聞いていたのじゃ!やれ!ナバナバよ!」


 「はいはい!完全に認めさせてあげさせまーす!やらせてもらいまーす!」










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