第十二話 文明を発見!
『本当に壁だ!!やった!文明がある!!』
『こんなのあるんだ』
俺達は壁の麓まで来ていた。
その高さは百メートルぐらいだろうか。
さらにポツポツと明かりも掛けてある。
こんな壁が、果てしなく続いていた。
『やっと森を出れそうだし!俺の目標を発表するわ!』
『うん』
ホワイトが頷く。
遂に一週間前にした約束を果たせる。
『新しい趣味を見つける!!ってのと、力が欲しい』
後者の目標は、最近増えた。
もう失うのは嫌だ。
姉ちゃんはまあ大丈夫な気もするし、少し後回し。
『どうやって俺達は壁の中に入ろっか。よじ登れる所があったりしないか』
『あっちに、とびらある。なにか出てきた』
ホワイトは北東の方角を指差した。
ここで、俺はある事に気付く。
『その何かって俺とホワイトと同じ見た目?何か違う所がある感じ?』
異世界で繁栄しているのが、人間とは限らない。
蛇吉のような知能ある多分魔獣?もいるのだから、変なのが支配している世界の可能性もある。
『だいじょうぶ。ちはるっぽい体してる』
『そっか。良かった』
流石にそうだったか。
だんだんと、北東から二つの灯りが近付いて来る。
灯り達は少しぼやけており、まるで古い懐中電灯を使っているかのよう。
灯りを持っていたのは、二人の人間だ。
片方には狼っぽい耳も生えていた。
そして、その人達は全く同じ服を着ている。
藍色の帽子に、黒いつば。
首元から少し見える白いシャツと、その上から着ている藍色のスーツ。
腕に巻いた黄色い腕章は、自らの立場を表していた。
警察官の人だ。
それも片方は手錠を構えている。
「勇者歴1995年4月17日1時23分!!公然わいせつ罪で現行犯逮捕!!」
「???」
警官は流暢な日本語を話し、俺に手錠をかけた。
もう一人はホワイトの前でしゃがみ込み、目線を合わせる。
「お嬢ちゃん。服も脱がされて可哀想に。親御さんはどうしたのかな?」
『??』
—-
「久しぶりの外。かなりの良い天気」
数日経過し、やっと留置所から出られる。
事情聴取とか色々された為、かなり忙しかった。
「本当に申し訳ない。まさか兄妹だったとは。確かに明るい所でよく見ると、瞳の色とかそっくりだ」
隣を歩いている警察官の人にそう謝られる。
実は警察官の人達には、自分とホワイトが兄妹だと嘘を付いたのだ。
最後に真似した魔力がホワイトのものだった事が功を奏し、意外と信じてもらえた。
「でもね。お兄さん。この世は鬼ばかりじゃない。服も着れないぐらい困ったのなら、直ぐに大人に頼るべきだ。お兄さんだけだと守れる物も守れないから」
「はい。気を付けます」
ついでに怒られてしまう。
嘘を付いたからなので、正直に受け入れる。
「ちはる。おはよう」
警察署の前で、ホワイトと合流する。
ホワイトは普通に日本語を話していた。
後、服も着ている。
「?。あれ?日本語、話せたんだ」
「あいつが教えてくれた。ちはるも学んだの?」
「俺は元々。へー。あの人から学んだのか」
ホワイトが人を指で刺す。
そこには、泣きながらホワイトへ手を振る女性の警察官がいた。
何があった。
「これで過去をしらべやすい。本もよめるようになった」
「それは良かった。けど、その前に冒険者ギルド?って所に行かない?お金が稼げるらしいし、入った方が過去も調べやすいんじゃない?」
更に警察官の人によると、戸籍が無くても登録費無料で加入出来るらしい。
この冒険者ギルドは勇者連盟?直属で、何か良い感じ信頼出来る組織でもあるっぽい。
「かね。それって、多くあればこの世をしはいできるやつ?」
ホワイトは当然そう言う。
?。
「?。そんな事はないと思うけど?誰かが言ってたの?」
「あそこの人」
ホワイトは、先程と同じ女性の警察官を指差す。
?。
もしかして、実はこの世界だとそうなのか?
いや、違うはず。
俺の周りの人たちはそんなことを言っていなかった。
「た、多分その人の勘違いだよ。そんな話聞いた事ないし」
「そう?」
「ま、まあ、その辺は価値観かも!今はとりあえず冒険者ギルドに行こう!冒険者ギルドはこの角を右に曲がった後、次の角を左に曲がって、二つ目の角を左に曲がれば着くらしいから!」
「おー」
—-
俺達は冒険者ギルド?の入り口につく。
冒険者ギルドは四階建ての石造りの建物だ。
周囲の建物と比べてもかなり大きかった。
「かってにひらく」
「うお。自動ドア?」
俺達が近づくと、その石のドアが勝手に開く。
まるで、人が開けたのかのよう。
要はスライド式ではない自動ドア。
何か、ちゃんと文明が発達している。
良かった。
「ここからあの受付に行くのかな?恐らく」
冒険者ギルドの中を見る。
その構造は、市役所の受付に居酒屋がくっ付いている感じだ。
前には大量の机や椅子に座ってガヤガヤと飲食する多数の男女、奥には仕事をする制服を着た男女がいる。
そして彼らは俺達を見て、急に静かになった。
?。
「かなり見られてない?特にあの人」
ホワイトは頷く。
その人達はジロジロと俺達を見てくる。
特にネックレスを付けたツインテールの少女が。
もしや、何か変な所でもあったのだろうか。
元々ここに住んで居なかったから、余所者は死ねとでも思われているのか。
それとも、俺とホワイトは警官から貰ったボロボロの服を来ているから、目立っているのか。
分からないし、ここはスルーだ。
もう元の喧騒に戻ったし。
「あそこか。新規登録口」
新規登録一番口、二番口という看板が、左端に吊るされていた。
その二つの受付両方に、受付嬢らしき人が立っている。
一番口の受付嬢はウサギの耳が生えた女性、二番口の受付嬢には猫耳が生えた女性だった。
「すいません。二人で新規登録したいのですが」
受付の机が高かったので、俺が代表して一番口にいたウサギ耳の受付嬢に話しかける。
猫耳の受付嬢は、何となく避けた。
「冒険者ギルド!!プロテクト支店へようこそ!!お二人は初めての登録ですか!?適性検査後、二度目と発覚した場合には!!一人十万円の検査費用兼罰金が課せられます!ご留意しておいて下さい!」
この街はプロテクト市、という名前っぽい。
警察官の人も言っていた。
「はい。初めてです」
「かしこまりました!それではこのシートをそちらのテーブルで記入後!!もう一度新規登録口にいらしてください!、、あ!ここに書いて頂いた情報は社会福祉に関連して!連盟に提供されます!そこはご了承下さい!」
「はい。分かりました」
とりあえず二人分のシートを貰う。
そうして、ホワイトと二人で指定されたテーブルに付いている椅子に座る。
このテーブルの上には、鉛筆と消しゴムが何十個か置かれていた。
「ホワイトは、書く事って出来る?難しいなら俺が代わりに書くよ」
「やってみる。けど、なにで書くの?」
ホワイトは首を傾げる。
俺は鉛筆を手に取った。
「この鉛筆、って言うので書くんだよ。まず、これの黒い方を紙に向けて、えーとあなたの性別は、男性•女性•その他、ですかの、男性に丸っと。こんな感じ」
「わかった。ありがとう」
ホワイトも鉛筆を持つ。
そのまま俺と同じように、シートへゆっくりと丸を書き始めた。
これを見、俺もこの性別に配慮したシートに鉛筆を触れさせる。
直後、隣に先程ガン見してきたツインテールの少女が座ってきた。
何か用があるのかと、横目でチラチラ見る。
少女もシートを書き始めた。
俺の自意識過剰だった。
「おわった」
「俺も終わった。所でホワイトはここになんて書いた?」
そこは、俺の種族について書く所だった。
○人種•その他、しか選択肢がなく、この○に自ら文字を書く形式だ。
俺は人間という種族を選びたかった。
「その他にまるした。わからないし」
「俺もそうするか。駄目だったら受付嬢の方が指摘してくれるはずだし」
またホワイトのシートも持つ。
こうして、新規登録口へ行く。
「終わりました」
「はい!!!大空千晴様とホワイト様ですね!!書類は!!問題ありません!!次にお二人は、二階のB1待合室へご移動お願いします!!そこでアナウンスにより呼び出しを行い、それから適性検査が始まります!詳細は二階の担当の者からお聞き下さい!!」
普通に大丈夫だった。
やったね。
そのまま、二階の待合室へ向かって歩き出す。
一方、ツインテールの少女がコソコソと後ろから着けてくる。
彼女はその前には、猫耳の受付嬢へ書類を提出していた。
?。
適性検査は、即終わった。
アナウンス後、担当の人によって小さい部屋に案内され、一枚写真を撮られたのだ。
それだけである。
もう一階に戻り、また呼ばれるのを待っていた。
「すごい。あれすごい」
ホワイトも帰って来て、隣の椅子に座る。
そうして、身振り手振りこんな事を言い出す。
「?。適性検査に使われたカメラの事?何処が凄かった感じ?速さとか?」
「魔力をかこうしてるのにへんかんさせているとことか。どこからきたのかわからない魔力をどくとくな魔力にへんかんしてひかりと共にほうしゅつしているとことか。すごい」
「そっか。凄そう」
「一番口に、大空•千晴様とホワイト様、二番口にオルキデ•イリカ様、適性検査の結果が出ましたので、お越し下さい」
近くの多分スピーカーから、俺達が呼ばれる。
言われた通り、一番口に二人で行った。
ウサギ耳の受付嬢は喜色満面な顔にだった。
「適性検査の結果発表です!!お二人さん!!」
「そう」
「果たして受かっているのか」
「ででででー!!でん!勿論!二人とも!!合格ですよ!!特に大空様は潜在魔力量が勇者様方と同等の数値!!まるで本当の勇者様のよう!!」
ウサギ耳の受付嬢は何か大声でそう言う。
周囲からも拍手が起こった。
勇者とは。
初めて聞いた。
だが、こんなに拍手されるのは生徒会長時代ぶりか。
懐かしい。
「いえい!おーい」
調子に乗って、辺りに手を振る。
拍手がより大きくなった。
いえい。V。
「申し訳ないですが、貴女は不合格になります。適性検査において、潜在魔力が存在しないというあり得ない結果が出ていますので。それほど魔力が少ないのであれば、能力に対抗する手段もなく命の危険も相応に増えます。冒険者ギルドに入る事は、是非諦めて下さい」
「そ••••そんな!!」
「そして!!!大空様とホワイト様は!!二人とも未知の能力を持っていますよね!?特異な魔力反応があります!!任意ですが、どのような名前なのか教えて頂けませんか!?そうすれば実地研修後お渡しする冒険者カードに記入いたします!!」
ウサギ耳の受付嬢は近くの机から紙とペンを取り出す。
それを差し出して来た。
あの写真パシャで、そこまで分かるのか。
本当に、発展しているね。
「わたしは『停滞』で」
「俺は••••じゃあ「模倣」で」
特に能力の名前を考えていなかった。
ホワイトにも流され、まんまな名前を付けている。
まあ分かりやすいし、いっかって感じ。
「了解です!では!最後に、翌日の実地研修について!」
「ちょっと待って!!!」
ツインテールの少女が割り込んで来た。
ホワイトは眉を顰める。
「?。何ですか?」
「大空千晴!こいつに決闘を挑むわ!こいつに勝てば、私が能力に対処出来ることの証明になるわよね!!?」
少女は猫耳の受付嬢に向けてそう叫ぶ。
?。
「???」