煙草
ーーー
僕は、煙草の火を付けた。
吸い込んだ煙が美味しかった
曖昧な感情を快楽に溺れさせた
面倒な昨日を忘れたふりして放り投げた
今日に残ったのは曖昧な僕と面倒な昨日だった
それがむかついたからまた全部投げ出した
気付いたら全部腐って消えていて
残ってさえもいなかった。
でも何故か、"空白"を綺麗とは思えなくて
今日の中に汚い"昨日"の記憶をかき集めた
僕は、煙草の火を付けた
けど、吸い込んだ煙はもう不味かった
だから
煙草の火を消した。
ーーー
暗闇の中、煙草の火を付けた
辞めた筈の煙草は
どうしようもなく不味かった。
だから、もっと吸い込んだ
不味くても吐き出したくなかった。
もっと欲しかった。
もっと、もっと吸い込んだ。
……怒ってほしかった
いつも煙草を美味しそうに吸っていた彼は
気まぐれに一口欲しがる私に、だめだよって怒っていたから
だから
暗闇の中、私は煙草の火を付けた
ーーー
暗闇の中、彼女は煙草を吸っていた。
キツい匂いを我慢して、僕は彼女に触れた
僕を見つめる彼女は、とても綺麗だった。
気が付くと、彼女の吸う煙草の匂いでさえも美味しそうだと思った。
だから
僕は、煙草の火を付けた