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オリジンギア  作者: もち
9/11

戦場の盲目的正義②


 隕石の如き速さと威力を秘めたサイバーパンクの蹴りは私の目と鼻の先まで迫っていた。空を握っていた左手は、被弾することを受け入れてるように力が抜けていたが、(セブンスギア)を握る右手はそんな腑抜けではなかった。


 ギリギリ――


 そんな意思に呼応して赤い歯車は回り出す。


「『六速・ライジングドライブ』」


 ギリギリ――!


 脊髄の歯車は激しく擦り回る。そして歯車は右手の(セブンスギア)をも回し、シルバーの剣がだんだんと形を変えていく。


 静まり返っている樹海にはもとより、時間の概念が無いに等しい。しかし目の前の敵の時間は確かに、私より遥かに遅かった。


「着いて来れるか!」


 サイバーパンクの10倍の速さになった私は、小さく鋭く薄くなった橙色の短剣(セブンスギア)を逆手に持ち敵の足へ刃を入れようとした。


「着イテイケルヨ」


 ギリギリ――ッ!


 突如サイバーパンクから激しい回転音が聞こえた。その回転音はだんだんと早く大きくなっていき、ヤツは蹴りを放った方とは逆の足で橙短剣(セブンスギア)を弾いた。


 私はサイバーパンクから距離を置くと、宙でノロノロと動いていた隕石の如き蹴りは、次第に元の速さに戻っていった。


 ズドンッ――!


 私が身を引いたことによってサイバーパンクの蹴りは地面を抉るだけとなったが、私はとても混乱していた。


「どういうことだ? 六速に変速してるのに、なんでお前は着いて来れてるんだ?」


 サイバーパンクは腕から1本の白い棒を出す。そしてその棒を払うように振ると、棒の先端から青白い炎の刀身が伸びた。


 それは金建(かねけん)の資料に乗っていたエグい武器の1つである、『ビームサーベル』だった。


 通常の炎の完全燃焼は青色であるが、ビームサーベルの刀身は完全燃焼を燃焼させており青白い炎となっている。ビームサーベルはその青白い炎をレーザーの刀身として振るう、言わばレーザー切断刀である。


「教エテアゲルヨ。ソレハネ……」


 サイバーパンクの脚から伸びているブースターはふくらはぎの後方へと向きが変わり、瞬く間に燃焼、爆発し私との距離が縮まった。


 サイバーパンクはビームサーベルを縦一閃に振るう。間一髪私は避けたが、ビームサーベルの軌道上にあった岩や木の根が瞬時に溶解してた。


「オレハオリジンギアノ『試作サイボーグ』ダカラダ!」


 サイバーパンクは止まらない。ビームサーベルを私へ振り回し、霧や樹木、岩などを大量に切断している。私も負けじと隙を突いて橙短剣(セブンスギア)を振るうが、リーチとスピードのアドバンテージはヤツにあり簡単に刃は届かない。


 避けて避けて突き、避けて避けて斬る。そんなターン制ゲームのような攻防をしていると、ゲームには無い障害が現実で襲いかかってきた。


 ズリッ――


「くッ!?――」


 霧がかってるこの樹海で最初から気を付けていれば良かった、足元のぬかるみだ。このぬかるみに足を取られ、触れれば即戦闘不能になりうる避けゲーは、絶体絶命のピンチへと早変わりした。


 ベチャッ


 コケたはずみで飛んでいったぬかるみの泥が、サイバーパンクの頭部にベチャリと着く。するとどうしたことか、ヤツが振り回していたビームサーベルの動きが止まり、突如棒立ちをし始めた。


「暗イ……、冷タイ……、コレガ『死』?」


 サイバーパンクはブツブツと何かをつぶやき始めた。ヤツは戦闘を辞めたのか、ビームサーベルのビーム部分が引っ込んでしまった。


 辺りはしんと静まり返る。


 棒立ちのヤツからは歯車の音が聞こえなくなった。おそらく六速を解除したのだろう。


 サイバーパンクの言っていた『オリジンギアの試作サイボーグ』のことや、それに関連するオリジンギアの変速機能など、ヤツから聞きたいことは沢山あった。


 しかし、資料であらかじめ見ていたヤツ武装を見る限り私の勝ち目は薄い。今のうちにヤツを仕留めようと、私は背後に周り、ヤツの首元に橙短剣(セブンスギア)を刺し込もうとした。

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