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第2話:お天気ゴリラさん

 問題。

 夜の駅前で思い切り叫んでしまったらどうなるか?


 普通の解答。

 周りの人から一瞬ではあるが注目され、とても恥ずかしい。


 どうしようもない現実。

 周りのゴリラから一瞬ではあるが注目され、得も言われぬ恐怖を覚える。

 

 そんな恐怖の中、俺は全速力でなるべく人気のない道を選んで家に帰った。

 家の近くで、犬の散歩をしていた近所のおじいさん――らしきゴリラに反射的に会釈を返した俺は人間が出来ている。

 てか、犬以外におじいさんを判別する要素が見いだせなかった。やばい。


 家に到着して鍵をかける。よし、これでひとまず安全だ。

 別にゴリラに襲われてるわけじゃないけど、気分的にはパニックホラーものの主人公だ。超こわい。


 今日ほど一人暮らしをしていて良かったと思ったことはない。家にまでゴリラがいるなんて耐えられない。さぁ、ゴリラのいない安全な場所で、いったん冷静になって状況を整理しよう。


「何だこれ? 何だこれ? 何なんだこれは?」


 うん、無理だね。整理できるわけがない。疑問が次から次に湧き出てくる。


 視界の中にゴリラがいるかどうかは、あんま関係ないな。そりゃいないに越したことはないけど。

 

 考えろ、考えるんだ! 回れ俺の頭。この状況に対処する最適解を導き出せ!

 俺は何をすればいい? どうすればこの地獄から抜け出せる?


 ………………そうだ!

 

「寝よう!」

 

 混乱の極みに叩き込まれた俺の脳が出した答えは、いたってシンプルだった。


 うん、そうだそうしよう。寝ればいい気がする! そこはかとなくそんな気がする。

 そうと決まれば、やることは一つだ。夕飯と風呂を諦めてまっすぐ自分の部屋へ。そして、ベッドにどーん。いざ入眠! 


 消えよ雑念。そして願わくはゴリラも一緒に消えていてくれ。……まじで頼む、消えろ!




 ※※※※※




『いやぁ、我ながらいい仕事したねっ!

 

 ()()()を完璧に叶えつつ、バレないように工夫まで。

 やっぱり、ボクは天才だったか。たはー。


 これなら、満足してもらえること間違いなしだね!


 どぉーれ、様子を見てみよ――って、寝てる! 何で? 早くない?


 仕方ないなぁ。じゃあ、()()()()の方は――っと、こっちも寝てるじゃん。


 なんだよ、もぉ、せっかくボクが頑張ったのに。

 ………………まぁ、いいか。

 

 どうせ、明日になったら嫌でも堪能してくれるだろうし』




 ※※※※※




 ――翌朝。

 

 当然のように、寝覚めは最悪だった。ついでに、夢見も悪かった。なんなら、寝付くのに苦労した。

 理由は分かり切っている、昨日すごいものを見たからだ。

 だから寝付きも夢見も寝覚めも最悪だったし、昨日の俺は飯と風呂を諦めたのだ。すべてゴリラのせいだ。

 

 俺は、さっとシャワーを浴びて、朝飯を作り食卓へと向かう。

 よし、ここまではいつも通りだ。何もおかしなことはない。平穏な朝だ。

 

 そのままテレビをつけようとリモコンに手を伸ばしたところで、手が止まる。

 俺は飯を食う時はテレビを見る派だ。だからこの行動におかしなところはない。


 なのに、テレビをつけると平穏な朝が失われる気がしてならない。いや気のせいだな。気のせいに違いない。気のせいであれ!


 ――ピッ(テレビをつける)


『それでは全国のお天気です――』


 ――ブチッ(テレビを消す)


 テレビの中では、お天気ゴリラさんが元気に今日の天気を知らせてくれていた。

 

 ………………ふぅー。昨日の夜パンクした俺の頭に活が入った気がする。


「あー、やっぱり夢でも気のせいでもなかったかー。ゴリラ、いるんだなぁ」


 ………………ぐふぅ。

 声に出して言うことで、受け止めきれない現実を無理やり受け止めようとしたら、思ったよりダメージがでかかった。吐きそう。


 一夜明けたことで、本命『疲れていたから変な幻覚を見た説』と次点『寝て起きたら元に戻ってる説』が否定せざるを得ない。大穴『俺に対する大規模なドッキリ説』も無理がある。

 どれも平和的で、理想的で実害が少ない完璧な説だったのに。

 

 そうなると、必然的に『何故か人の見た目がゴリラになった説』が採用されてしまう。くそが。

 

 マジかぁ。ゴリラいるのかー。

 いやもう、最初の疑問に戻りたいんだけど。

 何だこれ? 何この状況? どうなってんの?

 

 俺は、何度この疑問に立ち返ればいいの? もう4度目だよ?

 そろそろ誰か答えてくれ。説明してくれ。


 とりあえず、少しでも情報を得るために消してしまったテレビをもう一度つける。


『――本日も暑くなるでしょう』


 テレビの中では、お天気ゴリラさんがのんきに今日の天気を伝えてくれている。


 そりゃ、暑いでしょうねぇ、そんな毛皮着てたらさぁ! 脱げば? そんで人間に戻って? そうすれば全部問題は解決すると思うんだ。

  

 お天気ゴリラさんは、きれいな服を着ているがすごくゴリラだった。もろゴリラだ。ゴリラでしかない。何でゴリラが服着て平然と喋ってるんだよ。

 

 てか、これ全国放送じゃねぇか。つまり、全国のお茶の間にお天気ゴリラが登場したという事だ。なのに、他の局でも緊急ニュース『ゴリラが大量発生!?』はやってないし、ネットでゴリラはトレンド入りしていない。

 ……もしかしなくても日本全国ゴリラだらけなのでは?


 その時、ふと絶望的な疑問が浮かんできた。


「………これ、俺以外にも人間いるよな?」

 

 ………………。

 いやいやいやいや。いるいる。いるに決まってる!

 たしかに、ネットでもテレビでもゴリラは取り上げられてなかったけど。それは俺みたいな人間が少ないからであって、いないわけじゃないはずだ。


 そうだ、高校だ!

 高校には1人くらい人間がいるはずだ。そして、その子は美少女に違いない。

 俺は、その美少女と苦難(ゴリラ)を乗り越えて恋愛パートに突入するのだ!


 そうと決めれば、善は急げだ。すぐさま、準備をして家を出る。


 もっと色々考えたほうがいいんじゃないか? 楽観的に考えすぎじゃないか? 嫌なことから目を背けてるだけでは?

 といった、次々と心に浮かび上がってくる正論は全部無視だ。 


 俺は登校するのだ! ゴリラじゃない美少がいることを信じて!


 …………ゴリラが100匹以上いることだけは確かなんだよなぁ。……はぁ。

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