俺の人生・・・・・・①
時が流れて修了式の日になった。
その後も匠と来夢は自分たちの想いを伝えられずにいた。
午前中に終業式が終わったが夜になっても二組のクラスメイトたちは同じ場所にいた。
何をしているかというと・・・・・・
「「「かんぱーい!!!!」」」
全員が一斉にグラスをあげて乾杯をした。
肉の焼けるいい匂いが漂っている。
男子勢が「早く焼けよ」とせかしている一方で女子勢は「一年間ありがとう」とおしゃべりにいそしんでいる。
「匠先生、今日は本当にありがとうございます」
「「「ありがとうございます!!!!」
穂高が匠に礼を言うとクラス全員がお礼を言った。
匠は店の迷惑になっているのでは、と思ったが楽しそうな顔を見ると自分が謝ればいいかと思った。
修了式後に二組の全員で打ち上げに来ていた。
打ち上げ場所はどこにするかという話し合いがあったが、匠が「俺のおごりで焼き肉にでも行くか」と言うと満場一致で決定になった。
つまり高校生四十人プラス匠、紗椰の分を匠一人がもつのだ。
正直大きな出費だったが、これで生徒たちとの思い出ができると思えば安い出費だった。
逆に、自分はこのクラスに救われたのだからお礼として考えれば足りないような気もしていた。
匠はわいわいと楽しげに話すクラスを見渡すと仁志が目にとまった。
林間学校のときとは人が変わったように周りの人と話していた。
ずいぶん成長したなと思った。
仁志が匠の視線に気づいて笑顔で礼をした。
匠もそれに手を挙げて応えた。
匠は次に努を見た。
努は周りの男子とバカ騒ぎしていた。
体育祭中も自主練を頑張っていたことが功を奏し今では野球部のレギュラーに入っており、次期キャプテンになるのでは? という声も上がっていた。
(努力が報われて本当によかったな)
男子では最後に穂高が目にとまった。
周りからたくさんお礼を言われていた。
今年度はクラスの代表としてとても頑張っていた。
学業の方も必死に勉強したことによって最後の模試ではB判定をとっていた。
本人はまだまだですと言っていたのでどれだけ真面目なのかと思った。
次は女子の方を見ると心春が目にとまった。
クラス委員として全員を引っ張り、学業も匠以外に教師に対してでもわからないところはずっと質問をしていた。
それこそ、最終下校時刻ギリギリまで勉強していることも多かった。
その甲斐あって普通科コースの中ではトップクラスの成績を収めた。
(このクラスは真面目な生徒が多いな)
莉子はいつも通り楽しそうに笑っていた。
だが最近は無理をしなくなっていた。
この前も体調が少しおかしいと感じたときに周りの人に保健室に付き添ってほしいと頼んでいるところを見た。
以前なら無理をしてでも頑張っただろうに。
(いい方向に変わったなと)
そして、最後に。いや、本当はずっと気にしていた来夢を見た。
来夢は肉を焼いて他の人に配ったりしていた。
来夢の優しさがそこからもうかがえた。
来夢のおかげで今の自分はいると思えるほど来夢の存在は匠の中で大きなものになっていた。
そして、感謝以上に大きな感情を抱いていた。
来夢自身も他の人を頼るようになっていた。
匠も頼られることが多くなったが、化学以外にも数学や物理などの質問が来るようになったのは疑問だった。
だが、本音を言うと来夢に頼られることが嬉しかったし、一緒にいられることが楽しかった。
(ありがとうな、来夢)
来年もこのメンバーでやりたいと心から思っていた。




