クリスマス②
「っで、何がほしいんだ?」
来夢の後ろ姿に聞いた。
来夢は手を後ろで組んだり、前に持っていって顔をパタパタしたりと忙しそうだった。
熱いのならばマフラーをとればいいのにと匠は思っていた。
「えっと、妹へのクリスマスプレゼントです」
「妹がいたのか」
「はい。一つ下なので来年高校生ですよ。本人曰く山の丘高校を受けるらしいですよ。受かったら紹介しますね」
「来夢の妹なら大丈夫だろ」
二人は歩きながら会話をした。
周りが年の差カップル? をまじまじと見ていたが二人は気にしていなかった。
「でも、好みが一緒だから困るんですよね」
来夢が思わせぶりに言った。
「ん? 好みが一緒ならプレゼント選ぶのも簡単なんじゃないか?」
匠は考えるように言った。
(違いますよ・・・・・・)
来夢は心の中でつぶやいた。
匠が自分の心に気づいていないからなのだろうか。
それにしても鈍感すぎる気がするが。
まずクリスマスに二人だけで歩いていることが、気づくきっかけになりそうだが。
二人は洋服店に来ていた。
来夢の妹はどうやらファッションに興味があるらしい。
女性ものを多く扱う店だったので匠は正直居心地が悪かったが、付き添いできているので店の外に出るわけにもいかなかった。
しょうがないのでプレゼント選びは来夢の好きにさせて匠は店の椅子に座っていた。
「先生。こっちとこっち、どっちがいいと思いますか?」
来夢がセーターを二種類持ってきた。
自分の前に合わせながら匠に聞いた。
どっちもかわいかった。ではなく(本当にかわいかったが)、匠は来夢の妹を知らなかったのでどちらがいいかはわからなかった。
「こっちじゃないか」
なので来夢に似合っている方を指さした。
来夢は「ふーん」と言うと、
「じゃあ、こっち買ってきますね」
と言って匠の指した方とは逆のセーターを買いに行った。
自分の意見が通らないのならば聞かなければいいのでは? と思った。
匠はレジの方を見ると相当混んでいた。
どうやらレジが故障してしまったようだ。
来夢が匠に向かって手を合わせて謝る。
それに手を挙げて応えた。
暇になってしまったので匠は少し外に出ることにした。
外には恋人たちが集まっていた。
そう言えばこのあたりはイルミネーションで有名だったことを思い出した。
匠は腕時計を見た。イルミネーションにはまだもう少し時間がある。
匠はスマホを取り出して何かを調べ始めた。
五分ほど調べるとスマホをポケットにしまった。
まだもう少し時間がかかりそうだったので周りの店を見た。
すると一つ、気になる店があった。
「すみません。お待たせしました」
来夢が店の中で待っていた匠に声をかけた。
一瞬外に出ていたようにも見えたが、店の椅子に座っていたので見つけやすかった。
「どうした? 袋が二個あるが?」
来夢の両手を見た。
妹のクリスマスプレゼントは一つのはずだが・・・・・・
「結局、私もほしくなったんで二つ買いました」
袋を見せながら言った。
「姉妹でおそろいか」
「いえ、妹にはさっきのを。私には先生が選んだやつを買いました」
後半は消え入りそうな声になっていた。
匠は来夢が自分の選んだセーターを買ってきたと聞いて、変な気持ちになっていた。
嬉しいような、こそばゆいような、もやもやするような。
その感じは懐かしいような気がした。
遠い過去においてきたものに再び出会ったようだった。




