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体育祭⑨

 いよいよ体育祭も終わりになった。

 最後の競技は毎年恒例のフォークダンスだった。

 生徒たちが一クラスずつ男女で内側、外側になってグラウンドに円を作っていた。

 これも毎年の恒例行事なのだが、フォークダンスのときは決まって、

「匠先生ー!」

「匠先輩ー!こっち、こっち!」

「たーくみーん!私たちと踊りませんかー!」

 そう、毎年のことだがそのクラスの担任は男女の円を行き来しながら踊りに参加しなければなならいのだ。


 匠は莉子に頼まれたときは断っていたが、今回は嫌そうな顔ひとつせず二組の円に向かった。

「いぇーい!」

「ふぅー!」

 体育祭でテンションが上がりすぎているのだろう、二組の生徒の歓声が

匠を迎えた。

 さすがにこれには苦笑いをするしかなかった。


 匠は最初女子側の円に入った。

 男子が面白おかしくいじっていたが匠はそれを華麗に受け流していた。


 曲が始まり全員が踊り始めた。

 林間学校のときとは異なりこのフォークダンスは相手が次々に変わる。


 匠が相手を交換すると仁志になった。

 仁志は何か言おうとしていたが少し照れくさそうにもじもじした。

「大縄よかったぞ」

 踊りながら仁志に語りかけた。

 仁志は嬉しそうな顔をした。

「はい!先生のおかげです」

 頷きながらお礼を言った。


 今度は努になった。

 努は練習では「こんなちまちましたもの・・・・・・」と言いながら苦労していたが本番ではしっかり踊れていた。

 野球の練習の合間にしっかりと練習をしたのだろう。

「先生、ありがとうございました」

 匠と踊るやいなやお礼を言った。

 仁志とは違ってすぐに言っているが同じように照れくさそうな顔をしていた。

「俺は何もしてない。九条の頑張りを客観的に言っただけだ」

「それが嬉しかったんですよ」

「そうか、ならいいんだ」

 人のお礼を何度も否定するような野暮なことはしなかった。


 次は穂高になった。

 穂高は最初「おっ、匠先生じゃん」と周りの男子と楽しそうに話していた。

「勉強の方はどうだ?」

 近況をあまり知らなかったので調子を聞いた。

「うーん、まずまずです」

 穂高は苦笑いをしながら言った。

 匠もそれを見て「そうか」と言った。

 その様子だけでしっかりと頑張っていることが伝わってきたからだ。

「先生、俺、絶対に海の崖大学に行きます。憧れの人がいるんで」

 穂高は匠をまっすぐに見つめて言った。

 匠もそれに答えるように穂高を見て、二人は笑った。

 まさか自分がその立場になるとは全く思っていなかったので嬉しかった。

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