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少し余談  匠と彩羽のクリスマス②

「はい、たっくん。クリスマスプレゼントだよ」

 彩羽(いろは)(たくみ)にきれいに包装された紙包みを渡した。

 匠は紙包みをまじまじと見ていた。

「見てないで開けてみてよ」

 匠が開けてみるとそこには赤いマフラーが入っていた。

「ありがとう。すっげぇ、うれしい」

 匠にはそのマフラーが輝いて見えた。

 それを首に巻くととても温かかった。

 首や体だけでなく心も温かくなった。

 匠は目を閉じてそのぬくもりを感じていた。

 彩羽が自分のために買ってくれたマフラーのぬくもりを。


「それで、たっくんのプレゼントは、また一週間遅れ?」

 閉じていた目をパッと開けた。

 しかし口は開かなかった。

「まぁ、たっくんのことだから予想はできてたけどね」

 優しく笑いながら言った。

「待ってるからね。あっ、でもキムワイプとかはさすがにね。たっくんはしないと思うけどこの前理系の彼氏からキムワイプもらったって子がいてさ」

 と言うと彩羽はゆっくりと歩き始めた。

「ほら、たっくん行くよ。イルミネーション見ないと」

 そっと匠の手を取る。

 その手が冷たいのを匠は感じた。


「彩羽!こっちに行こう」

「えっ、ちょっ、たっくん?」

 彩羽が歩き始める前に匠が彩羽の手を取ってイルミネーション通りとは別方向に進み出した。

 彩羽は困惑していたがまっすぐと前を向いている匠を見てついて行こうと思った。




「それで、こんな高台に来て何を見るの?」

 二人は町から離れた公園に来ていた。

 この公園からは町を見渡すことのできるので小学生の写生スポットとして有名だった。

 だが周りに該当らしき街灯もないため夜は誰も近づかない。

 まあ、そのせいで心霊スポットとしても有名だったが。


「うー、寒いね。もう少し来てくればよかった」

 両腕で自分を抱え込むようにして彩羽が言った。

 それもしょうがない。町のように風を防ぐ障害物がないのだから体感温度が下がって当然だ。


 彩羽が小刻みに震えているとふと体が温かくなった。

「悪いな、彩羽。もう少し我慢してくれ」

 匠が自分の上着を彩羽に掛けたのだ。

「うん」

 彩羽はその上着をグッと自分に巻き付けた。

 寒かったからではない。匠がさっきまで着ていた上着に残っている匠のぬくもりをもっと感じたかったのだ。


 匠は時計を見ていた。

 その時間が待ち遠しかった。


「そろそろだ。彩羽、町の方を見てくれ」

「何か起こるの?」

「あと5、4、3、2、1、ハッピークリスマス!」


「わー」

 彩羽の目が輝いた。


 二人の下に広がる町が一斉に色づいたのだ。

 青、赤、緑、白、色々な光りが眼下にともる。

 世界最高の宝石でもこれほどきれいに、これほど明るく、これほど色とりどりに輝くことはできないだろう。

 どれほど大金を払ってかった宝石もこれほど彩羽の心を躍らせることはできないだろう。

 それほどに鮮烈な輝きだった。


「ごめんな。このスポット探すために色々計算してたらいつの間にか寝てて、遅刻した」

「うんん。そんなこといいの。たっくん、ありがとう!最高のクリスマスプレゼントだよ!」

 まだ興奮が冷めやらないようだ。

 彩羽は子供のようにはしゃいでいる。

「これはプレゼントじゃないよ」

「えっ」

 匠は鞄の中から袋をとりだした。

「はい。プレゼント。さすがに2年連続で忘れたら彩羽に申し訳ないから」

 彩羽は袋を受け取ると匠の顔を見た。

「開けていい?」

「もちろん」

 袋の中には赤色の手袋が入っていた。

 彩羽はその手袋をすぐにはめた。

 思わず笑みがこぼれる。

 思ってもいなかったプレゼントが心をくすぐった。


 と彩羽は手袋の中に違和感を感じた。

 それをとりだしてみると、小さな、袋と言うには小さな袋が入っていた。

 だが彩羽には見覚えがあった。

 急いでその小さな袋を開けるとそこには彩羽がずっとほしがっていたネックレスが入っていた。

「手袋は今日遅れたお詫び。プレゼントはそっちの方だよ」

 照れくさそうに匠はほおをかいた。


「た、たっくん・・・・・・」

 彩羽の目には涙がたまっていた。

 そして匠に抱きついた。

 匠はそれを優しく受け止めた。

 二人の体温がお互いを温める。


「彩羽、大好きだよ」

「私もたっくんのこと大好きだよ」


 そう言うと二人は目を閉じてキスをした。

 永遠の時間が過ぎたように二人は感じた。

 それほど二人にとっては大切な時間だった。

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