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花火大会①

 匠は花火大会の会場に来て1人で立っていた。

 別に誰かと待ち合わせをしているわけではない。

 自分で行きたいと思ったから来ているのではない。

 教師として生徒が羽目を外しすぎて問題を起こさないように視ているのだ。


 匠が誰かと花火大会に来たのは()()()とが最後だ。

 匠が最後に付き合った。後悔しても仕切れない女性。

 結婚まで考えていた女性の運命を自分のせいで狂わせてしまった。


 匠は久しぶりに()()()のことを思い出したせいか、自然と涙が出てきた。


「匠先生・・・・・・どうして泣いてるんですか・・・・・・」

 その声に現実に戻される。

 ふと気づけば自分の前には6人の生徒がいた。

「朝比奈、来ていたのか」

 その6人は毎度おなじみの6人だった。


「匠先生、そんなに1人で花火大会が悲しいんすか」

「努、そんなわけないだろ」

「そうですよ、九条君。伊織君の言うとおりですよ」

 努の発言に穂高と心春から突っ込みが入る。

「じょ、冗談だよ。ははは・・・・・・」

 頭をかきながら少し反省する。


「綿貫、この前聞いたのはこのことか」

 匠は綿貫が7月16日(今日)が暇かどうか聞いた理由が少しわかったような気がした。

「そうですよ。暇だったら一緒にどうかなって思って」

「行くわけないだろ」

「そうですよね。なんで、見回りでいるって知って安心したんです」

 何を安心したのかわからないが・・・・・・

 匠は常々莉子の行動力に驚かされていた。

 どこの世界に教師を花火大会に誘うやつがいるか・・・・・・(ここにいる)


「一緒に回りませんか?」

 珍しく穂高が現実離れした提案をしてくる。

「無理な・・・・・・」

「見回りをしながらなら大丈夫なんじゃないですか」

 「無理なことを言うな」と言おうとして、また言葉を遮られた。

 これで何度目かはわからないが匠にはこのクラスの癖に少し悩まされていた。

 穂高の言っていることは現実離れしているが、現実的だ。

 一緒に回るのではなく、6人は花火大会を周り、匠は花火大会の見回りをする。

 へりくつのように聞こえるが(実際へりくつだ)一応見回りができないわけではない。


 それでも匠が断ろうと口を開きかけたとき、

「おや、そちらにいらっしゃるのは松雪先生ではありませんか」

 女性の冷たい声がした。

 その声に匠は心と体を凍らせた。

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