林間学校⑦
続々とカレーができあがって生徒が各々自分たちの作ったカレーを食べていた。
匠と紗椰は林間学校の写真を分担して撮っていたがカレーを食べる写真は匠の分担だった。
匠は紗椰からカメラを受け取ると(作るところは紗椰の分担だった)カメラを片手に生徒たちのテーブルへ歩いて行った。
「今度は松雪先生が写真撮るんですかー」
莉子がスプーンでカレーをすくったまま聞いた。
「ああ」
「じゃあ、写真撮ってくださいよー」
と言うと莉子は手を前に出してピースサインをした。
「いぇーい」
元気いっぱいの笑顔をする。
これほど(いい意味で)子供っぽく笑うことができるのは莉子だけだろう。
「いくぞ」
匠は莉子の勢いに押され気味になりながらもカメラを構えた。
カシャッ。
「撮れた」
「ありがとうございまーす!」
莉子が写真を見せてという合図のように両手を前に出している。
匠はしかたなくカメラを渡す。
それを受け取ると莉子は周りの人と自分の写真を確認して笑い合っている。
「気は済んだか、なら・・・・・・」
「先生!一緒に撮りましょ!」
このクラスは人の話を遮る癖のある人が多いようだ。
莉子はキラキラと輝かせた目をこちらに向けてくる。
「いや、いい」
「まぁまぁ、遠慮せずに」
匠は遠慮をしているわけではないのだが、そんなことは気にせず莉子は友達にカメラを渡す。
「ほらほら」
と言うと匠の袖を引っ張って強引に座らせた。
「じゃあ、いきます」
周りの人も乗り気なようだ。カメラを渡された友達はすでに構えていた。
「いぇーい」
莉子はピースサインをする。
だが匠はほとんど無表情だ。
「先生、堅いですよ」
周りから茶々が入る。
しかたなく匠は作り笑いをする。
「先生、それ、引きつってますよ」
周りの生徒が大爆笑する。
「先生もっと自然に」
笑いすぎて涙を浮かべながらカメラを持つ友達が言う。
その明るい雰囲気に匠の心が軽くなった。
それが結果的に匠の口元を緩めた。
「そう!それです」
カシャッ。
まるで本物のカメラマンのようにその一瞬を逃さずにシャッターを切った。
莉子が写真を確認する。
「バッチリです!」
莉子が自分と匠の写真を周りに見せる。
すると、
「松雪先生、次は私たちと!」
「先生!俺たちも!」
「私たちもいいですか!」
周囲の生徒から次々と声が上がる。
結局匠は生徒の写真を撮るつもりが生徒との写真を撮ることになった。




