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美香の話によると、泳ぎを競いあっていて、冬香が追いついてくる気配が感じられなかったので泳ぐのを止めたら、冬香の姿がどこにも無かったという。
「…探しにいこう!」
椿己がソファから思い切り立ち上がった。
「でも、もう暗いよ?」
今はもう九月。日が沈むのは早い。
「だけど…!水着で一晩も過ごしたら…」
「冬香のことだし、そのうちひょっこり帰ってくるかもしれないだろ。これでまた誰かいなくなったら困るし、明日朝早く起きて皆で探しに行こう」
悠希の提案に、誰にも反対はしなかった。
「ねえ、ご飯どうするの?」
亜海は聞いた。確かに、冬香がいなければ、何をすれば良いのか分からない。
「台所ならあっちにあったぞ」
寛也はロビーの隅っこにある扉を指して言った。
「なんで知ってるのよ」
美香がむっという顔をして寛也に聞いた。
「あー…ここから海に行く時、一番最初に降りてきてちょこっと探検してたら見つけたっていうか、つまみ食いしに行ったっていうか…」
寛也以外、ため息をついた。
「ま、いいか。行ってみようぜ。コックさんでもいるかもしれないだろ」
椿己はそう言い、隅の扉の中へ入った。みなも椿己に続く。
しかし、そこに人影は無かった。
大きい冷蔵庫が並び、コンロが四つ並んでいて、その上に包丁が三本つるしてあった。レンジは二つもあった。
「冬香、コックさんなしでどうするつもりだったんだろ…」
美香が小さくつぶやいた。悠希は冷蔵庫のひとつを思いっきり開いた。
「これは…レトルト食品!」
ぎっしりとつめられたレトルト食品。よくみると、冷蔵不要のレンチンご飯まで詰め込まれている。
「なるほど、これで無人の理由が分かった」
悠希はあまり来ていなかったため、知らないのも訳無いが他の四人も、料理が出てくるのをただ待っていたらしい。
とにかく、みんな海に出ていて、(一名除く)おなかが減っていたので、たべることにした。
「よし、何か食うか」
「うん」
椿己は適当に春巻きとご飯を冷蔵庫から取りだしてレンジに入れた。
時間もきっちりセットして、全員キッチンの中で待った。
だが、十分たったのに、いつまでたっても終了の音が響かない。美香は椿己に言った。
「ねえ、まだ〜?」
「まだ後二十五分三十二秒ある」
「バッそんなにやったら爆発するっ!?」
その日の晩御飯は微妙に爆発したレンチンご飯とレンチン春巻きだった。