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悠希も、自分の荷物を持ち、白い扉の中に入った。
中は部屋の名前のとおり、白でまとめられていた。
「こうも全部白だと、なんか変な感じするなぁ…」
荷物を置いてあったいすに置くと、部屋にかけられている一枚の額縁に目がとまった。そこに絵は無く、文章だけが書かれていてこう書いてあった。
『とおいどこかのしまのこと
しろはいまもやぐらといっしょにみっつのことをまっていた
しろはみっつをえたとき あばれてた
だけども だけども しろはしろによってみえなくなったとか』
「これ…!このうた…!?」
「あ、気がついた?」
冬香は悠希に言った。悠希は目をぱちくりさせていた。いつもの抜け顔ではなく、真剣に驚いていた。しかし冬香はそんなことを気にも留めずに続けた。
「それね、私のひいお祖父ちゃんがめっちゃ若いころにどっかの家に仲良くなったときにもらってきたんだって。そのころは許婚制度とかしてたらしいんだけど、交流が切れてからその制度も一緒になくなっちゃったんだって」
ほかのも、別の部屋に飾ってあるよ、という冬香の声はあまり悠希の頭の中に入らなかった。
だけど、あのうたが他に知られていてもあまりおかしくは無い。古ければ、ほかの家にだって伝わっている可能性は十分ある。
「なあんだ…」
「悠希、泳ぎに行くから水着に着替えてロビーに集合ね!」
「え、もうかよ」
悠希はかばんの中から水着を引っ張り出し、急いで着替えた。
防寒に、半そでのパーカーも着てビーサンを履いて下へ降りていった。
「よし、全員そろったね!」
一番気合のはいった水着を着た美香が言った。
「それじゃあ、れっつごー!」
天気は曇り。ハイテンションの美香たちには十分な天候だった。
しかし、ある一人にはきつい天候だった。
「な〜寒いだろ〜帰ろうぜー」
悠希だ。
「何言ってんだ!悠希!俺たちのナツはまだまだ始まったばかりだぜ!」
「そうだよー!悠希、根性なしー」
「情けないぞー!」
か細い叫びは、寛也、冬香、美香によってあえなく玉砕された。