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わらべうた  作者: CM同盟
18/19

18p

「どうせなら……両思いのほうが…いいだろ?」

椿己は手のひらに全身の力をこめた。扉は閉めかかって、同じように、椿己の体も消えかかっていく。

「お前、惚れられてるんだから…ちゃんとやってけよ?それと、美香」

椿己は消えかかる顔で、最後に言った。


「今まで、ありがとな」


そして椿己は扉を閉め、白い光とともに、消え去った。

ひじまで上がっていた水位も、引いていき、島は浮上していった。

あの気持ち悪い声も、聞こえなくなった。

あの幻も、見えなくなった。

悠希はよろよろと、美香に歩み寄った。

「なあ、美香…そうなのか?」

美香は少し、頬を赤らめて、かすかにうなづいた。

「はあ…これで、うまくやっていかなかったら、椿己に呪われそうだな………あ、あと寛也にも…はは、呪われまくりだな…おれ……」

「ふふっ。確かに。私、椿己のこと、振っちゃったし」

美香は困ったように笑う。この島に来る前に、美香は椿己のことを振ったのだ。

悠希に想いを伝えるために。

「悠希、でも大丈夫だよ。みんなきっと…」

悠希もうつむきながら、声だけで笑う。

「美香にそういわれると、何か…楽になる。ありがと…でもさ…」

悠希は同じ背丈くらいの美香の肩に少しだけ、よっかからせてもらった。

すこし、ほんのすこし、恥ずかしいと思うところもあったが、今は、誰かのそばに、居たかった。

「ゆ、悠希…?」

美香が心配そうに悠希に言った。悠希は、静かにつぶやいた。

「い、いやだったら、いいけどさ……」

悠希の目から白い筋が通った。ぽろっと涙が落ちる。

「今、ちょっとだけ…肩、貸してくれ…」

悠希はしぼむような声で、美香に言った。美香は別に驚いた様子も無く、悠希と同じように、悠希の肩に顔をうずめた。

「うん…良いよ」

悲しい旅は終わった。




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