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わらべうた  作者: CM同盟
16/19

16p

いや、閉めようとすると、生気が吸い取られ、自分を保てなくなってしまう。悠希はふらふらと地面に座り込んだ。

「どうしたんだ?」

椿己が心配そうに悠希に尋ねる。美香も心配そうに悠希の顔を覗き込んでいた。

「…これ、閉めようとすると、力が…吸い取られる…」

悠希の息は上がっていた。しかも、見えないものが、見える。

聞こえないはずのことが、聞こえてくる。


――「悠希!」

「悠希?」

「何してんだよ、悠希」

「相変わらず間抜けだねー」


間違いなく、頭に浮かび、響く声は、殺された冬香、寛也、亜海だ。

それも、生前と全く変わらない、元気な姿。

悠希は目の前で寛也を殺させてしまっている。そのため、心にひどく響いてくる。

それでも、閉めなければならない。悠希は冷や汗をぬぐった。

「何とか、閉めてみる」

それから、悠希はあらゆる方法で、扉を閉めようとした。

だが、そのたびに生気が吸い取られ、力が入らなくなる。

あの姿や、あの声も呼んでくる。

閉めようとすればその声や姿も苦しんでいる様になる。


――「やめろぉお悠希ぃい!」


「俺をこれ以上苦しめるなぁぁあ!!」


寛也のその言葉が悠希自身を痛めつけてくる。

所詮は幻なのだが、痛みは尋常ではない。

恐ろしいほどの吐き気が悠希を襲っていた。悠希は耐えられずに、胃液を吐いてしまった。

吐くものがもう無い。だから苦しみも増す。

だが、絶対に閉められないというわけではなかった。幻だって気にせずに、閉めようと思えば、閉められるのだが、どうも…閉め切ってしまえば…

確実に、死につながっている気がしてならない。

すでに水位は悠希たちのひざあたりまで来ている。

もたもたしている暇は無い。事は一刻を争っている。

「悠希ぃ…」


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