13p
そして、そそくさと台所からそのまま食べられる系の食べ物をたくさん持ってきた。
「つまり、歩かないで、ここで、五日間過ごしたほうが良い」
「できるだけ、みな固まっていたほうが良いな」
椿己も同意する。
そして、四人は全員ソファで過ごした。
「ねえ、悠希…もう、寝ちゃった?」
美香だ。美香は静かに悠希に話しかけた。
「あのさ…もう…死なないよね」
悠希はその問いに答えることはできなかった。
時計の針はすでに正午を指していた。皆、眠れなかったらしい。
悠希を含め、全員、目の下にうっすらと隈ができている。
美香は、泣いていたのか、目が充血していた。
悠希は食欲がわかず、手前のほうにあった一口チョコレートを食べた。
そして、大きなため息をついた。みんなも何もしゃべらない。
いきなり椿己が立ち上がった。
「何やってんだ、危ないぞ!」
「全ての部屋からあの額縁を持ってくる。それに、この辛気臭い感じにも…耐えられない」
そう言い、階段のほうへ歩いた。
「ばかやろっ…!」
ぶちっと何かが切れる音がした。悠希は椿己に手を伸ばした。
そして、シャンデリアが落ちた。ぐにゃりと、やわらかい何かが、つぶれる時の独特の音がロビーに響いた。
しかし、潰れたのは椿己では無かった。
「…亜海ぃー!」
あの瞬間、亜海は椿己を押し、自分が椿己の変わりに、シャンデリアに潰された。まるで、自分から死ぬのを望むかのように。
小金宮…金の人間。本来なら、椿己が潰されるはずだった。
「お前…!?」
「これで…もう…誰も…死なない…でしょ?」
亜海はすでに、体が、ぐちゃぐちゃだった。
シャンデリアの輝いていた装飾品が、体のあちこちを貫いていた。床の大理石に、どんどん、赤い血が広がって行く。悠希が目の前で見た、寛也の死んだ時より、ずっとひどい。
「…椿己…あたしの…代わりに……生きたんだから…ね…そこの…二人を…
……………あげてね」
亜海は椿己にしか聞こえない程度の声で、何かを言った。
「馬鹿野朗!なんでだ、お前がやってやればいいじゃねえか!」
「馬鹿は…あんたよ……好きに……なった人……ぐらい、自分で……」
亜海は全てを話しきる前に、息絶えた。
「うわあぁあぁぁああ!!!」
椿は、自分を見失ったかのように…獣のように叫んだ。美香はへなへなと地面にしゃがみこみ、震えながら泣いた。悠希は自分の唇を噛み切った。亜海や寛也よりもずっとわずかな血が流れる。
なぜだ?!ペースが速すぎる気がする…もう…三人も…