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ざばっとあがると、あらかじめ持ってきていた着替えを着て、濡れた髪のままロビーへ向かった。
――もう…死なせるなよ…――
寛也の言葉が頭の中にこびりついている。
悠希は深呼吸をして、ロビーへと入った。
そこには、静かに座っている亜海、美香、そして、椿己の姿があった。
悠希は重たい口をこじ開けて言葉を発した。
「皆…まず言っとく。…ごめん」
すると、亜海は何かが切れたのか、悠希の胸倉をつかんだ。
「何であんたこんな普通にしていられるのよ!しんだんでしょ!?あんたの目の前で、寛也が!どうしてよ!あんた、おかしいわよ!」
「約束したんだ!」
悠希は思いっきり叫んだ。吐き気がおきて、胃の中がむかむかする。それでも叫んだ。
「寛也にいわれたんだ!うじうじしてたら呪い殺すって!許さないって!だから…だから俺は…」
悠希は自分のこぶしをぎゅっと固く握った。最後の寛也の笑顔が脳裏に浮かび上がってくる。
「あいつの分まで…もちろん、冬香の分だって…明るく生きなきゃだめなんだ!」
亜海は黙って悠希の胸倉から手を離した。そして、分が悪そうにうつむいて小さくつぶやいた。
「…ごめん。あたし、何にも知らなくて…」
「いいよ。」
悠希は一人掛けのソファにかけた。今ここにいる人間は四人、ここに来たときより、二人も減ってしまった。
「それより…聞いてほしいことがあるんだ。みんな…皆の部屋に変な文書がかかれた額縁があったろ?」
三人はうなづく。
「海で青が消え、山で赤が消え、場所は分からないが、後は金が消える…」
青は冬香、赤は寛也ということを、悠希は説明した。そして、青と赤の額に、血で書かれたようなバツがついていたことも言った。
美香は恐怖で身を震わせていた。
「次は歩いているだけで…つぶされる。できるだけ皆、移動は控えたほうが良い」
悠希は重々しく言った。