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ちょおっとグロいかも…
気をつけてください(^^;)
「んお?あっちに階段みてーなのがあるぜ?行こー」
寛也はずんずんと進んでいく。悠希は焦ってとめた。
「止めようぜ寛也、もう帰ろうぜ!」
寛也はにかっと笑う。
「ああ、いやだったら帰ってて良いぞ。おれ登って景色見てから行くわ」
と言い、寛也は草を書き分けながら行ってしまった。
「ああ、もう!」
悠希も急いで追いかける。
(次の歌詞は転げ落ちてだ…登っちゃだめだ、寛也!)
ダッシュで階段に駆け寄り、すでに大分登ってしまっている寛也に向かって走った。悠希が追いついたとき、すでに頂上近くだった。
「寛也、帰ろう!」
「んだよ、ここ綺麗だぜ。もうちょい…」
ほーっと関心しながら寛也は遠くを眺めている。そして、一、二、とさらに段を登っていった。
「だめだ!寛也!うたが…」
悠希がそう言いかけたとき、目の前にいた寛也が消えた。
スローモーションのように後ろを振り向くと、まっさかさまに落ちていく寛也の姿があった。
そして…
「寛也ぁあ!!」
『遠いどこかの山のこと
小さい赤がのぼってる
のぼった後に転げ落ちてそれきり赤は見えなくなったとか――』
未亜科―みあか―赤――
ただのあてつきにも見えるが、生贄さえささげられれば良いヤツには関係ないのかも知れない。悠希はダッシュで寛也に駆け寄った。そして仰向けに倒れている寛也を起こした。
頭から血が流れ、腕はあらぬ方向に曲がっている。体のあちこちから血が出ている。そして、いつの間に落ちていた太い枝が、寛也の腹に突き刺さっていた。
悠希は唇をわなわなと震わせて、さっきまで普通にしゃべっていた寛也の体を抱きしめた。顔や頬に血がつき、生ぬるく、気持ち悪かったが、そんなことは関係なかった。
心では分かっていたはずだった。うたにそって人が死んでいっていると。
分かっていたのにとめられなかった。自分がうたのことを話さなかったから死んだ。自分のせいで、第二の犠牲者を出してしまった。
悠希の心の中は罪悪感で満たされていた。
「…ゆ…うき…」
悠希ははっとして寛也を見た。顔は真っ青で、瞳もうつろだが、その瞳は悠希をしっかりと捕らえていた。
「…悪ぃな…おれが……お前の…言うことを…ちゃんと…聞いてい…れば…ぐぁっ!」
寛也は内臓破裂のために大量の血を吐いた。悠希のいたるところに温かくも冷たくもない生ぬるい血がつく。悠希は寛也に必死の思いで叫んだ。
「分かった!もういい!しゃべるな!」
「へへ…ばかやろ…もうこれじゃ……助からねぇよ…お前…頭までマヌケに…なっちまった…の…か…・」
だんだん声が力を失ってゆく。悠希の目から大粒の涙が落ちる。女々しいとは思ってもとまらない。とめられない。とめたくない。逝かせたくない。
「やめろ…嫌だ…いくな!」
寛也は最後の力を振り絞るように笑って悠希の手のひらを握った。悠希の涙が一瞬止まった。
「悪いな…別に…お前のせいで死ぬんじゃ…無いから…な!これでお前が…うじう…じ……引き…ずってたら…呪い殺…すぞ…!…もう…死な…せてくれるな…よ……じゃ…あ…な…皆に…よろ…し……く…」
寛也の手が力をなくしたように悠希の手から落ちた。悠希は時が、一瞬止まったように感じた。遠くのやぐらには蒼い水晶と、赤い水晶。
悠希は、自分の時間が動き出して、少したつと、寛也の体から枝を抜き、そっと寛也の体を抱えた。寛也の体は冷たく冷え切っていた。
悠希は、血まみれの体でゆっくりと別荘へと帰った。
別荘へとついた時、三人は驚いた顔で悠希を迎えた。
悠希は何も言わずに、真っ先に寛也の体を紅獅子の間に寝かせた。
そして、その部屋にかかっていたわらべうたの額に、血の赤で、バツがつけてあった。隣の青竜の間にも、血でバツが殴り書きされているのを、悠希は確認した。
悠希は今初めて気がついたが、別に驚きはしなかった。すでに寛也の死で、わらべうたの白の怨念による殺人と言うことは、痛いほど、理解していたからだった。
静かにゆっくりと下におりると、椿己が目を閉じて耳元でささやいた。
「…風呂に入ってこい。血まみれじゃ、亜海と美香が恐いだろ」
静かにうなづくと、悠希は風呂場へと向かって、簡単にシャワーだけを浴びた。