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異世界金融【改】 〜元教師は転生したら働かなくてもいいように無双する〜  作者: 暮伊豆
第三章

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ラグナ VS スティング

打ち合いをやめ、距離をとった二人。どちらにも疲労の色は見えない。


『これです! これこそ正統派の戦いです! 肉体と肉体のぶつかり合い! こんな戦いが見たかったのです! 口車に乗せたり! 目潰しをしたり! 装備の力でゴリ押ししたり! そりゃあ確かに勝てば国軍ですともよ! でもねぇ! この戦いには可憐な少女の一生がかかってるってことを忘れちゃあおりませんか!? なのにダミアン様! アンタが率先して蔑ろにしてどうするんですかぁーー!』


『ふっ、かわいい妹のことだ。蔑ろになんかしてないさ。終わってみれば分かることだ。黙って見てな。』


『私は実況なんですが! おおーっと! 激しい打ち合いが一転して静かになったぁー! 双方どう出る!?』




「アンタ、使ってるねぇ。神酒(ソーマ)欠片(かけら)じゃない……もしかして、遡行(リベニエール)魎丹(りょうたん)かぁい? 本当に後がないんだねぇ……」


「ふん、おぬしのように終わった女と一緒にするでないわ。ワシはまだ死ぬわけにはいかんのでな。」


『ダミアン様……今、遡行(リベニエール)魎丹(りょうたん)と聴こえましたが? そうなのでしょうか?』


『さあな……だが本当だとすれば、スティング選手が自分を二十歳と言ったのもあながち嘘ではないってことか。』



遡行(リベニエール)魎丹(りょうたん)とは、一粒飲めば体が若さを取り戻し、全盛期の力を発揮できるというものだ。その効力は長くて十二時間、短ければ一時間もない。非常にばらつきの多い、不完全な薬なのだ。そして効果が切れた際に襲いかかる副作用、その致死率は九割を超え、例えその瞬間は生き残ったとしても、その内のさらに九割が一日以内に急激な老衰で死ぬ。過去には何人か生き延びた例はあるようだが、眉唾物である。なお、見た目は全盛期に戻ることはなく、少しだけ若返る程度である。


『と、いうような秘薬を飲んでまでこの大会に参加した理由は何なんだぁーー! まさかそこまでサテュラ様に惚れ込んだとでも言うのかこのジジ、いやスティング選手ぅー!』


「くくっ、アンタそんな趣味があったのかい。そこらの孤児でも拐ってりゃあいいのにさぁ。欲をかくとロクなことになんないよぉ?」


「ヒッヒッヒ……闇に生きる誇りを失くしたおぬしには分からぬさ。ワシらの仕事に失敗はない。そんなことも忘れてしもうたか?」


突如剥き出しになるスティングの殺気。身構えるラグナ。離れた場所からトンファーを振るうスティング。勢いがつきすぎていたのか、手を離れてあらぬ方向へ飛んでしまった。隙ありと見たラグナはすかさず襲いかかり、その場に転げ落ちた……


『ぎゃぁーーー! ラグナ選手の両足がぁーーー! 切断されましたぁーーー!』


『バカな! 魔力は感知されてない! 一体どうやって!』


「くっそがぁ……やってくれるねぇ……これぐらいでアタシに勝ったつもりかぁい……」


「いいや、これからだのう。誰かが言っておったわい。人は両手両足がなくなったぐらいでは死なぬとな。おっと、それは飲ませぬぞ? おぬしとて闇に生きた者、神酒(ソーマ)の欠片ぐらい持っておることはお見通しよお。」


スティングが軽くトンファーを振ると、ラグナの右腕が切り落とされた。


「殺せぇ! てめぇの正体に見当がついたぁ! こんなとこで会えるとはなぁ! 会長さんよぉ!」


「ほう? 死ぬ前の戯言(たわごと)か。次は左腕を千切るつもりだったが、予定変更だ。望み通り首を刎ねてくれるわ。」


ラグナに近付くこともなく、スティングはトドメを刺そうとする。



その時だった。


金操(きんくり)


スティングのトンファーが何かに引っ張られるように手から離れていった。


『すないぷ』


さらに撃ちこまれる鉄の弾。ギリギリで避けたスティングだが、別方向からの『水球(みなたま)』を足にくらい、そのまま囚われてしまった。


『おおーっとお!これはいけません! 完全なる横槍です! ラグナ選手を庇うあまりにやってしまったのかキアラ選手とベレンガリア選手!?』


『いや、何か事情がありそうだ。ラグナがスティング選手を会長と呼んだことも含めてな……マリアンヌ、行け。』


『もぉー! ダミアン様は人遣いが荒いんだからぁー! 行きます! 突撃インタビューです!』


本日何度目かの放送席からの出張。大した距離ではないが、高低差があるため少し面倒なようだ。


『さあ! ベレンガリア選手! この凶行はどうしたことですか!? 場合によっては罰金では済みませんよ! ちょっと! キアラ選手は攻撃をやめてください! ちょっと待ってって!』


そう言って拡声の魔道具をベレンガリアへと向けるマリアンヌ。実況も楽ではないようだ。


『あいつが闇ギルドの人間だからです。しかもラグナさんに会長と呼ばれてましたね。王都を脱出した闇ギルド連合の会長じゃないんですか?』


「そうだぁ! あいつぁきっと会長だぁ! 目的を吐かせるまでぁ殺すんじゃないよぉ!」


ラグナは意外に元気だ。そろそろ失血死するはずなのに。スティングはキアラにより両手両足に弾丸を撃ち込まれた上に『麻痺』の魔法をくらっている。


『スティング選手が闇ギルドの人間だとして、なぜベレンガリア選手とキアラ選手が攻撃しているのですか?』


『奥様、イザベル様のご命令だからです。闇ギルドの人間を見たら即、殺せとの仰せです。情報などはどうでもいいから見つける度に殺せと。そうすればいずれ全滅するとのことです。だよね、キアラちゃん?』


慌てて魔道具をキアラの口元に添えるマリアンヌ。


『そうだよー。やみぎるどの人はわるい人だからころさないといけないんだってー。』


そう言ってキアラは鉄の弾丸をスティングの額に撃ち込んだ。


「バカがぁ! 情報吐かせねぇでどうすんだぁい! こいつが本物の会長かどうかすら分からねぇじゃないかぁ!」


そんなことを言いつつもラグナは治癒魔法使いによって運ばれていった。一命はとりとめることだろう。




「ヒッヒッヒ……魔女の娘か……魔王を狙っていたらとんだ拾いものよのぉ……」


スティングがゆらりと起き上がった。

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