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異世界金融【改】 〜元教師は転生したら働かなくてもいいように無双する〜  作者: 暮伊豆
第三章

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嵐の後

オディロンはベレンガリアの部屋で寝ていたマリーを起こす。ベレンガリアはクタナツを出て北上、バランタウンへと向かっていた。馬車を外したペガサスのマルカに乗っている。


「おはようございます。ではオディロンは寝てください。後は私が。」


「頼むよ。幸い今日はパイロの日。キアラに弁当を作ってあげる必要はないからね。」


普段はベレンガリアかイザベルが作るのだが、どちらも不在。もしも休日でなかったらオディロンが悪戦苦闘したことだろう。




「どうやら心配いらないようですね。」


「ピュイピュイ」


「ありがとうございます。もう坊ちゃんは大丈夫ですよ。魔力もそれなりに充実しているようですし。」


後は二人が目覚めるのを待つばかりのようだ。


「おっと、お嬢様のご実家にも連絡が必要でしょうね……」







領都では……

カースが南の城壁を離れた後も魔物は断続的に襲ってきた。いや、南だけではない。東西こそ鎮静化したものの北側でもそれなりに多く、一部は侵入を許したりもした。

しかし魔法部隊顧問のモーガンはカースを呼ぼうとはしなかった。余人にはカースの魔力を感じ取ることができない。それはモーガンといえど例外ではなかった。そのためモーガンにはカースがどれほど消耗しているかが分からなかったのだ。その目で見たワイバーンやドラゴンとの戦い、無数に転がるワイバーンを含む幾種類幾千もの魔物。カースが消耗していないと考えるほどモーガンは楽天家ではなく、領都の危機において子供に頼ろうとするほど無責任でもなかった。

結局カースを呼ぶこともなく、見事に南の城壁及び城門を守りきった。もしカースをあてにしていたなら、領都は守りきれなかったのかも知れない。モーガンを含む領都騎士団の勝利である。約二割の死傷者を出しながら……




カースが飛び立った直後の辺境伯邸では……


「リリス、お互い命拾いしちまったな。」


「私は何もしておりません。盾にすらなれませんでした。」


「へっ、あのプレッシャーの中で動けるかよ! 」


「そうですね。お嬢様はよく動かれました。」


「違うぜ……ああ動くよう誘導されたんだよ。プレッシャーをかけたり解いたりしてな……これが達人かよ……なっ! おいリリス! 構えろ!」


そこには悠然と立ち上がるアッカーマンの姿があった。カースによってミンチにされたはずだったのに。


「ちっ、そうかよ……『神酒(ソーマ)欠片(かけら)』かよ……」


「ワシはフェルナンドほど人間をやめておらんのでな。あのような広範囲無差別攻撃が避けられるはずもないわ……」


「カースはいねぇぞ……クタナツに帰ったぜ。」


「ふむ、失敗したか。最期の機会じゃったがの……」


「最後だと? 諦めるってのか?」


「残念ながらな……」


「本当にカースを狙っていたのか?」


「ふ、本当じゃとも。依頼主は先代毒針よ。ワシより歳上のあ奴はもう体が動かぬ。最期の意地だけで生きておった。名や素性を明かすつもりはないが、じきにくたばろうて。」


殺し屋が依頼主を明かす時……それが意味することは?


「待てジジイ! 何を考えてる!? 目的を言え!」


「ふ、そのようなもの……あると思うか? ワシとて死にたくはないし、酒も女も、平穏も興奮も欲しい。だが何より欲しいのは強さよ。フェルナンドに易々と超えられて、どうして安穏と生きておれようか……しかも……」


「ジジイ……」


「呪いと老いに苛まれたこの体では……フェルナンドはおろかレイモンドやダイナストにすら勝てぬわ。ならば! 女の上で死ぬか剣の下で死ぬしかなかろうが!」


「カースは最後の相手に選ばれたってわけか?」


「くく、フェルナンドがよかったがの。あ奴はどこをほっつき歩いているのやら。そろそろ時間じゃ、次の毒針が誕生しなければ……よい……なぁ?」


「待てやジジイ! 逃げんじゃねぇ!」


「ヘイフ……先生……フェルナ……アラン……カー……」


アッカーマンは何かに縋ろうとするかのように手を伸ばした。しかしその手はただ空を掴み、そのまま泳ぐかのように崩れ落ちた。


「クソがぁぁぁ!」『風斬』


ダミアンはアッカーマンの首を落とし、どちらも氷に閉じ込め魔力庫に収納した。いつもの厚顔さは鳴りを潜め、ただの憔悴しきった顔が見えるのみだった。


カムイはゆっくりと起き上がり「ガウガウ」

ダミアンに鼻を洗うよう催促した。


「ああ、待ってろ。」


『水球』


「鼻面にレッドホットチリペプレか。想像するだけで地獄じゃねぇか……」


「ガウゥ……」


水洗いしてもカムイの表情は晴れない。カースに洗浄の魔法でも使ってもらわないとキツいのだろう。


「どうすんだ? このままカースが戻ってくるまでここにいるか? いや、むしろ助けてくれ。生き残りが何人いるかも分からねぇんだからよ……」


「かしこまりました。」


「ガウガウ」


カムイはふらりとその場を離れた。どこに向かおうとしているのだろうか。






「無事だったようだねぇ。」


カムイに連れられてやって来たのはラグナだった。


「おおラグナか。運良く生き残っちまったぜ。えれぇ災難だったな。」


「うちのボスは?」


「クタナツに帰っちまったぜ。詳しくは後だ。せっかく来てくれたんだ。ちーと後始末を手伝ってくれや。手が足りねぇにも程があるってもんだ……」


カースによって跡形もなく破壊されたホールには壁の穴から雨が入り込み、ダミアンの気分を一層と憂鬱にさせるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ならば! 女の上で死ぬか剣の下で死ぬしかなかろうが! 名言キターーー!!!!!!
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