カースは墓穴を掘る
「ねえねえ、昨日カース君の家の方で何か黒い物が上に行ったり下に行ったりしてたのが見えたの。カース君も見た?」
朝からサンドラちゃんが話しかけてきた。
うーんどうしよう。あまり嘘はつきたくないが、正直に言うとまた変人扱いされるかも知れない。
仕方ない……
「見たっていうか、それ僕だよ。風操で遊んでたの。何か新しい発見はないかなー、なんて考えながら。」
「また変なことしてたのね。どうせそうだろうと思ったけど。ちなみにあの黒いのは何なの?」
「ああ、あれはそこら辺に落ちてた木か何かだよ。意外と軽かったよ。」
「軽かったのね。ふーん。」
おや、サンドラちゃんは何か訝しんでいるぞ? 浮気がバレたような気分だ。
彼女なんていないのに。
そしてお昼、いつも通り五人でお弁当だ。
「ねえカース君、さっきの話だけど、私その木に興味があるの。帰りに寄っていい?」
「いいよ。妙な所に興味を示すんだね。それもサンドラちゃんらしいのかな?
でもゴミみたいな物だから誰かが捨ててたらごめんね。」
やばい、鉄はサッと隠せばいいがプールは無理だ。よし、あれはオディ兄のってことにしよう。
「そう言えば最近カース君ちって行ってないね。狼ごっこやゴブ抜きもあんまりしなくなったし。たまにはカース君ちでみんなで遊ぶのもいいかもね。」
「セルジュ君の言う通り、最近の休みは学校に集合して遊ぶことが多かったもんね。」
スティード君が言うように、体が大きくなってきた私達は休日に誰かの家の庭よりも広い学校の校庭やその周辺で遊ぶことが増えた。
「それならみんなで行きましょうよ。私なんて数えるほどしか行ったことがないんだから。たまには行きたいわ!」
「アレックスちゃんはイザベルおば様に会いたいんだよね。僕だっておば様に魔法を習ってみたいな。」
「そう言えばカース君の妹、キアラちゃんだっけ? だいぶ大きくなったんじゃないの?」
「おお、セルジュ君! 覚えててくれたの?
大きくなったよ。もう二歳だよ。やんちゃなお年頃だよ。」
「あはは、我がミシャロン家も最近妹が生まれたんだよ。相変わらず男は僕一人さ。」
「てことはセルジュ君ちは姉が三人、妹一人の五人かー。人数はうちと同じだね。アレックスちゃんのとこは?」
「我が家は兄が二人と弟が一人よ。兄は二人とも領都の騎士学校で、弟はクタナツにいるわ。
いや、そんなことより放課後よ、行ってもいいの?」
「そりゃもちろんいいよ。何して遊ぼうかな。」
くっ、まさかこんな流れになるとは!
オディ兄はたぶん帰ってこないだろうし罪を背負ってもらおう。あのプールはオディ兄が洗濯のために用意した何やら訳の分からない物、それ以外私は知らぬ存ぜぬ関知せぬ。
「範囲を狭めてゴブ抜きなんかいいかも。
色々ルールを変えてやったら面白いかもね。」
相変わらずセルジュ君はゴブ抜きが好きなんだな。
嗚呼この状態はエロ本やらエロDVDを出しっ放しにしている部屋に突然女の子を含む友達が遊びに来るのと似ている。困った。
嘘に嘘を重ねるとロクなことがない。
そして五時間目が終わり、各々が馬車に乗り込み、マーティン家に向かった。
その間カースは頭を抱えていた。
そして……ついに運命の時……




