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異世界金融【改】 〜元教師は転生したら働かなくてもいいように無双する〜  作者: 暮伊豆
第三章

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辺境伯家の守護者

最上級貴族の辺境伯家だ。当然結界魔方陣だって起動されてるようだ。ならば正門を塞ぐ氷を溶かすかぶち破るしかないな。


『『火球』』


アレクも同じことを考えたようで、見事にタイミングが揃った。妙に嬉しい。もう少しだな。『『火球』』


よし、開いた!

学生達は我先にと中に入って行った。それはよくない。


案の定、何かに弾き返されて門から飛び出てきた。結界魔方陣が作動しているんだから誰かが守っているはずなんだ。昨日はいなかったくせに。


「下がってなさい。私が入るわ!」


真打登場ソルダーヌちゃんだ。まあ自宅だしね。


「ソルダーヌが只今帰参いたしました!」


そう言いながら門の中へ入って行った。よし、私達も入ろう。アレクに誘導されて学生達も入って行った。最後尾のパスカル君達も入ったところで私とアレクも入る。そして氷壁で門を閉じておこう。


それから私が目にしたのは、歳上の男性に抱きつくソルダーヌちゃんだった。見覚えがあるような。


「デフロックお兄様よ。王国一武闘会でオウタニッサ様と対戦されたわ。」


「あー、だから見覚えがあったんだね。放浪してばっかりでもないんだね。」


「カース君! 来てくれる?」


ソルダーヌちゃんが呼んでる。


「兄上、こちらカース君。私達をここまで連れて来てくれたの。大恩人なの。」


「どうも、カース・ド・マーティンと申します。ダミアンには悪い遊びばかり教わってます。」


「俺はデフロック。妹が世話になったな。ありがとう。ダミアンなんかと遊んでるとバカが感染るぜ?」


「全くです。幼気なお子様を賭場や奴隷市に連れて行くんですから。」


それから少しダミアンの悪口で盛り上がった。その後、状況を聞くと、お兄さんがここに来たのは先ほど。今朝王都に着いて惨状を知り、上屋敷を心配して駆けつけたそうだ。それから門を閉ざし、結界魔方陣を起動させたと。どうやら辺境伯家の血縁でないと起動できないらしい。それならソルダーヌちゃんはよっぽど帰りたかっただろうな。自分が帰っていればここまでの惨状は防げたかも知れない。それでも学校に留まりみんなを守ったんだ。立派な貴族だ……


「よく頑張ったねソルダーヌちゃん。偉かったよ。」


ソルダーヌちゃんは無言で抱きついてきた。そりゃあ悲しいよな。顔は見えないけど、肩が震えている。アレクは私を見て頷いている。分かったよ。もう少しこのままにしておくよ。


それからアレクはみんなをまとめて屋敷内に入っていった。死体を片付けないといけないもんな。そしてエイミーちゃんだけがこの場に残った。




そして五分。ソルダーヌちゃんの嗚咽が止み落ち着いたように見える。


「みっともないところを見せちゃったわね。まさかここまで酷い状況とは思わなくて……」


「無理もないと思うよ。僕だってクタナツの実家がこうなったら大泣きしてると思うよ。だからアレクに泣き虫カースって言われるんだよね。」


「カース君ったら……ありがとう。じゃあ私達も手伝うとしましょうか。」


「そうだね。白い奴らの死体は門の外で焼くから、家の人については任せるよ。」


「ええ……お願いするわ。行くわよエイミー。」


「はい!」


これで庭には私一人。まずは白い奴らの死体を外に出そう。そろそろゾンビになる奴とか出るかも知れないし。しっかり焼かないとな。氷壁を張ったり解除したり大変だな。




それから二時間、次々と門の外には白い奴らの死体が投げ込まれた。私はそれを片っ端から焼き尽くした。骨も残ってない。


「カース、お昼にしましょう。ソルが用意したわよ。」


「おっ、いいねー。お腹が空いてたんだよ。」


庭には即席のテーブル。その上に大きく盛り付けられた料理。肉野菜炒めってとこかな。美味しそうだ。いただきまーす。


旨い! ほどよい辛さとソースの旨味が相性ぴったり! なのに食べているのは私とアレクとお兄さんぐらいだ。みんなどうした? お腹はへってないのか?


「死体の感触が手から離れない……」

「私は臭いが鼻から消えないわ……」

「あの目……何も見てない虚ろな目が……」


あー、食欲がないのね。なら仕方ない。余ったら私が収納しておけばいい。ソルダーヌちゃんは食欲がないなりに食べているようだ。




「カース君は冒険者もやってるそうだな。何等星だい?」


「十等星ですよ。昇格試験を全く受けてないもので。お兄さんは?」


「俺は六等星だ。ソロでここまで上がるのは珍しいんだぜ?」


それはそうだ。エロイーズさんとゴモリエールさんだって二人組で五等星までのし上がったんだから。オウタニッサさんに負けたとは言え、中々やるな。


「それはそうと、今回俺が王都に来たのは理由があってな。大規模な盗賊団が王都を狙ってるって情報があったのさ。それを王都のギルドに報告しようと思ったんだがな……」


「この上盗賊ですか……今襲っても盗る物あるんですかね?」


「さあな? 奴らは何でも盗るからな。王都に攻め込むなんてこんな時でないと無理だ。教団は盗賊とも繋がってたってわけか。」


「そうなりますね。騎士団は動かないし、自慢の城壁も役に立ってないし、ボロボロですね。」


別に王都が荒らされたって気にならないけど、ゼマティス家にもしものことがあると困るな。私だけでは手が足りない。フェルナンド先生がいたらいいのに……



あっ!


いいアイデアを思いついた!


「アレク、ソルダーヌちゃん、聞いて。今からクタナツに戻って助っ人を呼んでくる! 母上は体調次第だけどキアラは暇なはず。そしてできればオディ兄とマリーも!」


「それはいいわね! 頼もしいわ。」


「キアラちゃんって妹さん? いいの? 危なくない?」


「危なくないよ。キアラの魔力は昔の僕以上なんだから。」


本当はゴレライアスさんやアステロイドさんなどクタナツオールスターズを連れて来たいがさすがに無理だ。キアラだけでも良しとしよう。


「そこで今から約三時間、僕なしでここの守りを頼むよ? いいねアレク?」


「ええ、分かったわ。無事に帰ってきてね!」


アレクはそう言って人目も憚らず私に抱きついてくる。私はアレクの額に口を寄せてから抱き締めた。


さて、クタナツまで全速力だ!

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