カースの昼休み
やっとお昼ご飯だ。
なんだか一日がすごく長い気がする。いつもよりお腹も減っているように思う。
「ねえサンドラちゃん? やっぱり今日のカースはおかしいわよね?」
「うん、カース君どうしたの? いつもと違うよね? やたら会話に『青春』が出てくるよね。」
「いやー僕もよく分からないんだ。なぜか青春って言葉がやたら響いてしまったんだよね。青春っていい言葉だよねー。今日もお弁当がおいしいよ。」
「そもそもカース君って元から変だし別に問題ないんじゃないかな?」
「えー? セルジュ君!? 僕って元から変なの!? 一体いつから!?」
「え? 自覚してなかったの? ずっとだよ。
杖の代わりに木刀を使ってるし、アレックスちゃんに遠慮なく話しかけるし、パスカル君やエルネスト君にも普通に話しかけるし。普通僕達みたいな下級貴族だと声もかけられないよ?
そりゃあ今では当たり前になってしまったけど、名前で呼ぶなんてあり得ないよ?」
「セ、セルジュ君がまともなことを言ってる……確かにそうだよね。領都や王都、他の貴族領だとまずいよね。
でもここはクタナツだからさ。ここでは生き残った者だけが強者であり仲間だよね? だから貴族だ平民だを考えても意味がないらしいよ?」
「あら、急にまともになったわね。それでこそいつものカースだわ。
確かにセルジュ君の言い分は正しいわ。でもクタナツに限ってはカースが正しいと思うわよ。
私はみんなと友達になれてよかったわ。余計なことを考えずに勉学に励むことができるんですもの。」
「うんうん、いいことだよね。友との会話で自らの欠点を見つけ日々切磋琢磨し、より高みを目指していく。
これも青春だよね。今日の放課後はみんなで夕日に向かって走ろうか。」
「やっぱりおかしいわ! やっぱり『青春』なのね? 青春って一体何なの?」
「いやいやサンドラちゃん。今僕達が会話をしている、これこそが青春なんだよ。自分は変なのか変じゃないのか、どうでもいいことで悩み苦しみ、一喜一憂するわけさ。
そんな出来事の一つ一つが僕らを成長させてくれる青春なのさ。」
「だめだわアレックスちゃん、私も分からない。だからスルーしましょう。
幸いカース君の頭が狂ったわけではないようだから。」
「そうよね! 気にせずお弁当を食べるわよ!
さあカース、この辺が魔境産の素材だからね! 存分に食べていいんだからね!」
うーむ、みんなどうしたんだろう?
私は元からおかしかったのか?
確かに魔法で誰もやらないことをやるし、わざわざ冬に外で風呂に入るし、肛門から魔法を出せるし……
あ、変だわ。
変態かも知れない。
くそぅ。
まあいい、自分が人と変わっていることに気付き、さらなる成長に繋げることも青春に違いない。




