表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界金融【改】 〜元教師は転生したら働かなくてもいいように無双する〜  作者: 暮伊豆
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

654/1075

起死回生キアラ

カースが倒れた翌朝。

クタナツの南の城門にアレクサンドリーネが到着した。領都から夜通し飛んできたのだろう。かなり疲れているようだ。

いつもなら城門にカースが迎えに来ているはずなのだが……嫌な予感を覚えながらアレクサンドリーネはマーティン家に向かって歩き出した。


マーティン家の門を強めにノックすると中から出てきたのはベレンガリアだった。


「あら、アレックスちゃん? 今日はカース君と会う日だったのね。カース君なら治療院よ。昨日大変だったんだから。」


「カースが!? 大丈夫なんですか!?」


「ええ、もう大丈夫よ。昨夜から奥様が付きっ切りだったんだから。」


「ありがとうございます! 行ってみます!」


身体強化の魔法をかけて、街中を走るアレクサンドリーネ。かなりの速度だ。




「カースはどこですか!」


「あっちですよ。静かにお願いしますね」


「カース! あっ、イザベル様……」


「おはよう。領都から来てくれたの? ごめんなさいね。カースはまだ寝てるの。毒を盛られてしまったようなの。」


「毒……ですか……もう大丈夫なんですか?」


「ええ、例のあの薬を三本も使ってしまったけど、大丈夫よ。カースは本当に弱くなってしまったわ……」


「イザベル様……私が守るなんて言っておきながら……申し訳ありません……」


「何言ってるのよ。アレックスちゃんのせいじゃないわ。弱いカースが悪いの……」


「イザベル様……」


沈黙が辺りを包む。





「う、うう、アレク……?」


「カース! カース! 私よ! 分かる!?」


「分かるよ……迎えに行けなくてごめんよ……」


「そんなこといいの! 何があったの!?」


「受付の人に何かを刺されちゃったよ……すっかり油断してた……恥ずかしいよ……」


「よく分かったわ。カース、カムイに殺人容疑がかかってるわ。カムイがその受付の女を噛み殺したの。そのうち騎士団が来るだろうから話してあげなさい。」


「うん、母上ありがと……また助けてくれたんだね……」


「マリーもよ。今度お礼を言っておきなさい。じゃあ私は帰るわ。まだ寝ておくのよ?」


「うん、分かった。ありがとね。」

「ありがとうございました!」


「ごめん、少し寝るね……」

「おやすみ。ゆっくり休んで。」


しかしアレクサンドリーネも徹夜で飛んで来ただけあって、すぐにカースに突っ伏して眠り込んでしまった。




カースが再び眠ってからおよそ二時間。治療院に数名の騎士がやってきた。


「寝ているのか……逃亡の恐れはない、か。仕方ない。待つとしよう。お前達は帰っていい。」


「はい!」

「はっ!」


「さてと、今さら他の刺客が来るとも思えんが……」


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


「君たちがいるもんな。守りは万全か。」


コーネリアスとカムイがいるからこそ、イザベルは安心して自宅に帰ることができるのだ。イザベルは帰って一眠りするのか、それとも……




そこにドタドタと足音が聞こえてきた。


誰だ?


キアラだ。


「騎士さんおはようございます! カー兄を守っててくれてありがとう!」


「おはよう。いや、まあ守るって言うか、な……」


「カー兄起きて! 早くー!」


カースを揺さぶるキアラ。まるで駄々っ子のようだ。先に目を覚ましたのはアレクサンドリーネだった。


「キアラちゃん? お兄さんは今元気がないの。待ってあげて。」


「えー? 何で元気がないのー?」


「うーん、危ない毒を受けてしまったの。だからそっとしておきましょ?」


「毒? 私知ってるよー。毒って魔力が高ければ効かないんだよー?」


「うん、そうね。でもカースには魔力が……」


「魔力がないんでしょー? 知ってるよー。変なのー。」


「変? 何が?」


「だってカー兄から魔力がなくなるわけないじゃーん。私知ってるもーん。」


そう言ってキアラはカースの額に触れて何かをしている。


「キアラちゃん? 何やってるの?」


「魔力を入れてるのー。何回やってもダメだったけどー、今日は上手くいきそうだもーん!」


治癒魔法使いナーサリーは他人の魔力を吸い取ったが、キアラはその逆をやっているのだろうか。


「母上は絶対やっちゃだめって言うけどー、カー兄ならいいよねー。」


「キアラちゃん……」




「うわあっ!」


「あー、カー兄おはよー。」


「キアラ? おはよ。アレクも待たせたね。」


「ねーねー、カー兄? 何か感じなーい? 私の魔力がほとんどカー兄に入ったんだよー?」


キアラの魔力が?

どうやってそんなことを?



あっ!



うっ!



まさかっ!



魔力を感じる……



感覚で二割ぐらい……



アレクの魔力も、キアラも魔力も。

衝立の向こうにいる誰かの魔力も感じ取れる。



『洗浄』



使えた……



口の中だろうときれいにできる魔法だ。



『洗浄』



髪もきれいにした。



『洗濯』『乾燥』



アレクを全身きれいにしてみた。



「カース?」


「ふふふ、ふっふっふ、へっへっへへへへへ。」


「カー兄?」


「うふうふふ、ひひひっひひ、はーっはっはっはっはー! うははははー!」


雨降って地固まり、

災い転じて福となす。

瓢箪から駒田。

人間万事塞翁がペガサス!


長かった……

このまま死ぬまで魔力が戻らないんじゃないかなーなんて思ったこともあった。

しかし、天は私を見放さなかった!

どういった原理かは知らないが魔力が戻ったのだ!

もう二度と離さないぞ!


おかえり魔力。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i00000
― 新着の感想 ―
[一言] 出来た妹だ。 静香は出来た弟だ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ