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異世界金融【改】 〜元教師は転生したら働かなくてもいいように無双する〜  作者: 暮伊豆
第二章

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火の日

フェアウェル村では『火の日』と呼ばれているアグニの日になっても二人は目を覚まさない。

点滴などあるはずもないこの世界では、寝たきりの人間を介護するのには魔法や薬を使う。体力を補うのは回復魔法。そして栄養を補うのはポーションだ。マリーは一時間ごとに二人に魔法をかけてはポーションを数滴、口に含ませたり顔や傷跡に塗ったりしていた。

飲み込むことこそないが、口からポーションが吸収されることを期待しての行動だ。

さらに体位を変えるのも忘れない。つまりマリーはカースが倒れてから寝ていない。

二人のうちどちらかでも起きない限り休むつもりはないようだ。




そして昼過ぎ、ついに……


「……ここ……は……」


「お嬢様! 私がお分かりになりますか!? マリーです!」

「ピュイピュイー!」


エリザベスが目覚めた。


「ご説明は後です。まずはこれを、ゆっくり飲まれてください。」


「まずいし苦い……何よこれ……まさかエリクサー?」


「いいえ、エルフの飲み薬を水で薄めたものです。次はこれです。ゆっくり食べてください。」


「エルフの……? 甘い……美味しいわ……」


「蜂蜜のプティングです。食べたら寝てください。」『快眠』

「ピュイピュイ」


「ちょ……待っ……」



これでエリザベスは完全に大丈夫だろう。後はカースだ。マリーは安心したかのようにその場に横になり眠りに落ちた。


「ピュイピュイ」


コーネリアスが三人の見張りをするらしい。








その頃クタナツでは。


イザベルが詰所から出てきた。詰所の周りには冒険者達がひしめいている。


「魔女様ー!」

「魔女様ー! 大丈夫かー!」

「魔女様ー! まさかその髪は騎士団に!?」

「魔女様ー! あんなに消耗されて! テメーら! 騎士団潰すぞ!」


『皆さん。この度はご心配をおかけしまして申し訳ありませんでした。』


拡声の魔法を使っている。


『今回の私の罪は関所破りです。止むを得ない急用のため我が子カースに関所破りを命じたのです。本来なら奴隷役三年が妥当なはずです。ところが、お代官様は冒険者の皆様の熱い想いに胸を打たれたそうです。罪一等を減じ、ソルサリエでの奉仕作業をお命じくださいました。あそこは今、植物の魔物に苦戦しております。それを退けることを任務としてお与えくださいました。』


「魔女様ー!」

「魔女様ー! 俺もやるぜー!」

「魔女様ー! うちもだー! あんな魔物なんか全滅させてやるー!」

「魔女様ー! 結局髪はどうしたんだー!」


『髪は自分で切りました。これが現在王都での流行の遥か先を行く髪型なのです。前衛的で素敵でしょ?』


「魔女様ー! 似合ってるぜー!」

「魔女様ー! 可愛らしいぜー!」

「魔女様ー! 俺もやるぜー!」

「魔女様ー! 行く時は一緒だぜー!」


『皆さんのご支援とお代官様の温情は忘れません! 今回はありがとうございました!』


「うおおー! 魔女様ー!」

「魔女様ー! いつソルサリエに行くんだぁー!」

「ふおぉぉー! 魔女様最高ー!」

「代官フォーエバー!」




騎士団詰所前でイザベルが囲まれている頃、代官府では。


「どうやら上手く落ち着いたようですな。」


「ああ、騎士長。良い言い回しもあったものだな。私には思いつかないアイデアだ。」


「アランですよ。冒険者などの脅しに騎士団が屈するわけにはいかない。しかし彼らの心意気に打たれたお代官様個人の温情として与えるならば騎士団の威信に傷は付きません。またお代官様の寛大さを示すことにもなります。」


「彼も妻を救いたくて必死だったのだろう。その上娘御まで。北に何があるのか、詳しい事情は分からぬが無事に戻って来ればよいのだが。」


「御意。カース君は王都からここまで一時間で到着したそうです。そんな彼ならばきっと無事に帰って来てくれるかと。」


「ふふ、王都から一時間か。実は陛下も頭をお痛めになられたりしたのではないか? 恐ろしい子だ。」




再び騎士団詰所前にて。


「おーらお前ら解散だ! いつまでもここに居られちゃあ邪魔だ! ギルドに行くぜ! 俺の奢りだ! 好きなだけ飲めや! イザベルも酌をするからよ!」


アランである。内心はカースとエリザベスが心配で仕方ないのだが、イザベルのために集まってくれた面々を無下にもできない。


「それからお前ら! 本来なら罰金として金貨一枚だからよ! これも俺が出しておいてやる! 二度とするなよ!」


「うるせー!」

「もげろ!」

「女たらし!」

「好色騎士!」


アランの懐は大打撃だ。しかしイザベルが助かったのなら安いものである。キアラにはしばらく寂しい思いをさせるだろうが、ベレンガリアがうまくやってくれることだろう。


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