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異世界金融【改】 〜元教師は転生したら働かなくてもいいように無双する〜  作者: 暮伊豆
第二章

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クタナツと王都

カースが意識を失っている頃、クタナツでは大騒ぎが起こっていた。イザベルが無残な姿で騎士団詰所に現れたからだ。現在マーティン家の馬車はペガサスのマルカが牽いている。それだけでも目立つ。

詰所の騎士達はその馬車を見て聖女イザベルの来訪だと内心喜んだ。しかしその姿……乱雑に切られた髪、青ざめた顔色、まるで路地裏で襲われた哀れな女だ。歓迎の言葉が出てこない騎士達にイザベルが伝えたことは『出頭』だった。


確かにクタナツ内に何かが落ちて来たのは数名が確認していた。またそれが北に向かって飛んで行ったのも城壁の騎士が確認している。

イザベルの言い分は、自分がカースに命じた結果であり、全責任は自分にある。カースに罪はないので自分だけを罰して欲しいとのことだ。

まさかイザベルほどの貴族が関所破りをする、させるとは……騎士達には判断ができない。

アランや騎士長はもちろん、代官にまで話が伝わるのは当然だ。しかしそれどころか、どこで漏れたのか冒険者達の間にまで噂が広まり、クタナツは大騒ぎとなっていた。



冒険者達は騎士団詰所を取り囲み、騎士達と睨み合い、一触即発の事態となっている。


代官レオポルドンはいささか困っていた。元来杓子定規な男であるが、クタナツを何度も救った功労者であるイザベルに融通を利かせられないほど頑迷ではない。

しかし、冒険者達が騎士団詰所を取り囲んでいる現在に至っては譲歩できない。人質、脅し、そう言ったものに影響されないことがクタナツの誇りでもあるのだから。


犯人不明で迷宮入りするよりはマシだが、どうやって収束させようか頭を悩ませていた。






王都では。


「そのような次第でして、何卒我が孫カースの減刑をお願いに上がりました。」


アントニウスが貴賓室を出る前の国王に面会を申し込み、嘆願していた。


「ふむ。別に天下の大罪を犯したわけでもない。しかも魔蠍のやったことが原因ならばこちらの責任とも言えるしな。ただし、カースが自ら出頭してきた場合に限る。その場合に限り減刑を認めよう。」


「ありがとうございます。あの子は自分の言葉を違える子ではありません。必ずやエリザベスを救い、無事に帰り着き出頭するに違いありません。」


「それにしても恐ろしい毒であったな。出処が掴めないのは痛いな。魔女イザベルの手に負える毒ならよいのだが……」


「御意。我が娘ながら……あれに解毒できないのならば何者にも不可能でしょう。」


貴賓室を退出したアントニウスの所に四人の子供達がやってきた。そして口々にカースの減刑を頼んでいる。いや、もはやおねだりだ。


「もう大丈夫じゃ。陛下がお約束してくださった。安心してカースの帰りを待っておれ。」


四人の子供達は口々に「おじいちゃんありがとう!」と言いながらアントニウスにまとわりついている。やはりアントニウスはデレデレだった。


ちなみにカースの献上品、ヌエはまだ国王の元へ届いてはいない。それがあったとしても国王の判断に影響はなかったことだろう。アントニウスとしても、そのことを口に出すつもりなどない。献上と減刑は全く別の話だからだ。


ところで、優勝者であるオウタニッサが国王に望んだことは、ウリエンを賭けた争奪戦を開催し、そこに国王が立ち会うこと。そして国王は条件付きではあるが承諾した。




「カース君の罪が軽くなりそうで安心だね。普通だと奴隷役ニ、三年だよね。」

「そうね。罰金とかで済むんじゃないかしら。そもそも王国騎士団が魔蠍を壊滅させてないのが悪いんだし。」


「それにしてもいくら闇雲の中だからってよくエリ姉に接近したあげく三ヶ所も刺せたものよね。」

「魔力も全く感じなかったわ。カース君は容易く殺してたけど、やっぱり闇ギルドって怖いわね。」


「カース君は多少は心眼が使えますからね。」

「じゃあ相手も心眼が使えたのかしら? 」


「ねえ姉上。もし剣鬼様がいらっしゃったら、あいつを殺すことなく制圧できたと思う?」

「どうかしらね? 剣鬼様なら殺すのは簡単かも知れないけど。あんな危険な毒を持ってる相手を下手に生かしておいたら大変なことになるかも知れないわよね。」


噂をすれば影。


「やあスティード君。大変なことになっているみたいだね。」


「フェルナンド先生! 観覧されてたのですか!?」


「呑気に見ていたらあの様さ。エリザベスちゃんは三人がかりで刺されたんだよ。カース君が闇雲を吹っ飛ばす寸前までは武舞台上にいたさ。残念ながら観客に紛れ込まれたらお手上げだね。」


「そんな……闇ギルドってそこまでやるんですね……」


「腹立たしいが、バレなければルール違反でもない。油断したエリザベスちゃんが甘かったと言う他ない。このことは既に警備の騎士には伝えてある。闇ギルド狩りが激しくなることだろう。」


「そうですよね。エリザベスお姉さんだってクタナツ者ですもんね……三人がかりだから負けたなんて言えませんよね……」


「では私はこれで。残党二人の気配を忘れないうちにスラムでも歩いてみるよ。」


「先生!? ありがとうございます! カース君が帰ってきたら伝えておきます!」


そしてフェルナンドは行ってしまった。集団内では判別できずとも個別に見れば判別できるのだろう。達人とは本当に恐ろしいものだ。


「結局ボスを倒してもまだ魔蠍の残党がいるのね。カース君ってとことん闇ギルドに狙われてるのね。」

「でも僕らの歳であんなに賞金を掛けられるなんて凄いよね。ヤコビニでさえ白金貨十枚なのに。」


「後先考えずに暴れるからよ。この間もめちゃくちゃしたんだから。全く、カースは……」

「はいはい。これでもう私達にできることはなくなったわ。帰りましょう。帰って夕食にしましょうね。」


後はカースの帰りを待つのみ。しかしカースが戻らないことにはスティードもアレクサンドリーネも領都に帰れない。二人だけで帰るとすると二週間から一ヶ月近くかかってしまう。

アイリーンのことは忘れられているのか?

果たしてカースはいつ帰ってくるのだろうか。

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