悦楽列車で行こう
それから私達はコーちゃんがお腹へったと言いに来るまで部屋にいた。コーちゃんとカムイは放置だったもんな。ごめんよ。
「何か作るわ。待っててね。」
アレクが甲斐甲斐しい。妙に嬉しいな。
「ピュイピュイ」
コーちゃんが呼びに来てくれた。
食堂に行ってみると、数品の料理が並んでいた。私の鉄板焼きとは大違いで、立派な料理だ。
「さあ、食べましょうよ。」
「うん、ありがとね。いただきます。」
まずはスープから……旨い!
これは先日玄関前で食べた肉や魚の骨を利用しているのか? いつの間に出汁なんかとったんだ? さすがアレク。出汁ってよりフォンかな?
そこに柔らかく煮込んだ野菜や肉まで入っていて、体中に旨味が染み渡るようだ。
「すごく美味しいよ! いつの間にこんなに煮込んだの? フォンを取るのだってかなり時間がかかりそうなのに。」
「うふふ。驚いた? 『抽出』の魔法よ。カースの『乾燥』と似たようなものかもね。煮込んだのはマトレシア直伝よ。詳しくは内緒なの。マトレシアの秘伝だから。」
なるほど、奥義か。それは聞いてはいけないな。私は美味しいならそれでいい。それよりスープはそんなに熱くないのに汗が出てきたぞ? 体の芯が熱い……これは……
「元気になった? 王都で買った滋養強壮に効く野菜や調味料が入ってるの。これをカースに食べて貰うのも楽しみにしてたのよ。」
アレクは妖艶な顔で微笑みかける。全く……悪い子だ。まだスープしか飲んでないってのに……
私はアレクを抱き寄せた。
ちなみにコーちゃんもカムイも知らん顔して食事を続けている。出て行く気配はない。まあいっか。
先ほどまでのアレクの服装はケイダスコットンのワンピース、いつか私がプレゼントしたやつだ。
よく見ると体のラインがはっきりと見えている。まったく、悪い子だ。
時間の感覚がなくなり、体力もなくなり、いつしか私達は器具の揃ってない台所の床で眠り込んでいた。
目を覚ました時、コーちゃんとカムイも一緒に寝ていてくれたようで妙な一体感を味わうことができた。これが幸せか……
ちなみにせっかくアレクが作ってくれた料理なので、冷めていても全て食べた。もちろん美味しかった。
そして瞬く間に一週間が過ぎてしまった。




