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異世界金融【改】 〜元教師は転生したら働かなくてもいいように無双する〜  作者: 暮伊豆
第二章

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ウィリアム・テルオ

参加者はおよそ十五組。年齢は八歳から十五歳ぐらいまで様々だ。ここまでのトップは魔法学生の女の子、アレクの一つ上の学年らしい。風斬で男の子の頭上に乗せたアプルの実を上下に真っ二つにして見せたのだ。これには会場にどよめきが起こり余裕で暫定トップとなったわけだ。


これでは例えアレクが氷弾でど真ん中をぶち抜いてもインパクトに欠ける。よくて引き分けだ。そこでアイデア。アプルの実を三つに増やし私の頭と両肩に乗せることにしてはどうか。肩には乗りにくいが何とでもなるだろう。アレクは五発までなら同時に打っても命中率はかなり高い。それはこの距離でも問題はない。さあ! 会場の度肝をぬいてやるんだ!


舞台に上がった私達は軽く一礼し位置に着く。


「じゃあアレク、気楽にやってね。例え頭に当たっても無傷だから。」


アレクには悪いが彼女の氷弾では私の自動防御は突破できない。普段はバリアのように私を覆う自動防御だが、盾のように顔の前だけに展開することもできるのだ。サウザンドミヅチのウエストコートにも傷一つ付かない。


「ええ、分かってるわ。でもいつかカースに傷ぐらい付けられるようにならないとね。」


私はアプルの実を三つ、頭と両肩に乗せる。会場からは驚きの声が聞こえる。しかし驚くのはこれからだ。


「用意はいいですか? 始め!」


『氷弾』


司会は先ほどの若者貴族だ。合図とほぼ同時に三発の氷弾が発射され、私の頭上と両肩からアプルの実が消し飛んだ。どうやら大きめの氷弾を使用したようで、威力・精度とも素晴らしい。

果実の汁で濡れることぐらいは覚悟していたが、それすらなかった。さすがはアレク、私は鼻が高いぞ嬉しいぞ。

会場からは歓声が上がっている。人の頭に当たったら簡単に弾け飛ぶ威力だったもんな。それを三発同時に制御してみせたアレクの不動心は賞賛に値する。優勝はもらった! 賞品はショボいけどね。誰かにあげようかな。


「素晴らしい余興でした! 皆様、今一度アレクサンドリーネ様に大きな拍手を!」


私も一緒に拍手をする。舞台の上で凛と佇み浅く一礼するアレクはどこからどう見ても綺麗だ。何回でもため息が出てしまう。


「他に参加者はいませんか? いなければ……」


「待った!」


私達と同じ年頃の貴族が何かを言いたそうだ。新たな挑戦者かな?


「僕が参加したい訳ではないよ。この会場にいるほとんどの男性が気になって仕方がないのが君だ。」


そう言って私を指差してきた。


「アレクサンドリーネ様の最愛の人らしいじゃないか。だから腕前を知りたく参加して欲しかったのだが。アレクサンドリーネ様の凄さと美しさを示すだけで終わってしまった。」


「ならばどうだろう? 何か望みの賞品を出すから『さすがアレクサンドリーネ様が選んだ男』であることを示してはいただけないものだろうか?」


司会の若者貴族まで入ってきた。素直に頼まれたので、やるのは構わない。会場の注目が私に集まってしまったのも悪い気分ではないし。何をしようか、あまりやり過ぎてもよくないだろうし……

よし、思い付いた!


「いいですよ。やりましょう。賞品もお任せします。じゃあアレク、そこのアプルの実を会場に向かってポーンと投げてみて。」


「分かったわ。いくわよ。」


弧を描いてアプルの実は会場へと投げられた。


『風斬』


アプルの実はそのまま何事もなかったかのように舞台下の女の子によってキャッチされた。見た目にも何の変化もない。失敗かと騒つきと嘲笑が会場から聞こえる。しかし驚くのはこれからだ。


「今受け取られた方、それを少し上に持ち上げてみてください。」


「こうかしら?」


『風操』


皮が一部舞い上がり彼女の掌の上にはうさぎさんカットをされたアプルの実が残された。


「うわぁ、かわいいうさぎさんね。」

「食べるのが悪い気がしてくるわ。」

「でも食べやすそうな形よね。」


『乾燥』


目で楽しんでもらったようなので、味と食感でも満足してもらおう。ドライフルーツの出来上がりだ。


「皆様、八つしかありませんが、後ほど紅茶とともにご賞味ください。甘みを凝縮させてありますので紅茶との相性も良いかと。」


本当は以上の工程を全て空中でやってもよかったのだが、それだと乾燥前のうさぎさんカットを見てもらえないからやめておいたのだ。


「やっぱりカースはすごいわ。なんで風斬であんなきれいに皮を剥けるのよ。」


「いやー制御をみっちり練習したからね。上手くいってよかったよ。」


会場からは万雷の拍手が贈られた。アレクも喜んでくれたので何よりだ。


「お見事でした。さすがアレクサンドリーネ様が見初めた方ですね。申し遅れました、リスナール・ド・ダマネフです。」


司会の若者貴族だ。黒に近い茶色い髪、身長は私より高い百六十五センチぐらいか。全体的に細く頼りない印象だが、司会進行を見る限り執務能力に問題はないのだろう。


「カース・ド・マーティンです。本日は楽しませていただきました。」


「文句なしの腕前ですので賞品につきましては後ほどご相談させてください。」


その後は再び演奏が始まったので、私とアレクも踊り始めた。私達にダンスを申し込みたそうな男女の視線が多々あったのだが、片時も離れず踊り続けてしまった。相手を交代しつつ踊るのが本来のマナーらしいが、今夜は子供のお遊戯会のようなものなので気にしない。アレクが気にしてないのだから私は少しも気にしてないのが本音だ。


そしてお開きとなり、私達はリスナール君に連れられ別室へと向かった。彼は放課後アレクを取り巻いていたうちの一人だったらしい。同級生だとか。

さて、何か私の興味を惹くものはあるかな?

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