領都の夜 2
およそ五分後、ゆっくりドアがノックされた。
「誰だ?」
やはりドア越しに声をかける。
「案内係のアンナでございます」
「先ほどの不審者は何者だ?」
「ご説明いたしますので、お開けいただけますか?」
「そこでしろ。」
「い、いえ、それは直接……」
怪しいぞ? 確かにこの声はさっき案内してくれた人だ。
ならば鉄キューブを少しズラして……浮かせられないから大変だ。
「今開ける。」
閂を外す。
途端にドアを激しく開こうとする男の手が見えた。
しかし開かない。ギリギリ顔が見える程度しか開かない。
やはり不審者だ。案内係の首に刃物を当てている。マジで押し込み強盗じゃないか……
『狙撃』
これだけ隙間があれば十分なので頭を打ち抜いた。
「不審者はそいつだけか?」
「あ、ありがとうございます……まだ一階に五人ほど……」
「押し込み強盗か?」
「いえ、それが……辺境伯様の……四男様で……」
何それ? 意味分からん。
「入れ。」
鉄キューブを動かし案内係を中に入れ、再びドアを固定する。
「奴らの目的は?」
「その……このお部屋が塞がっていたことで癇癪を起こされまして……」
嘘だろ……そんな奴がいるのか……
それで従業員の首に刃物って……許されるのか? フランティア辺境伯家と言えば王都でのアジャーニ公爵家にも匹敵するほどの大貴族だよな? そりゃ……許されるのか。家格で言えばギリギリでアレクサンドル家に勝てるぐらいか。
優しく金で話をしてくれたら素直に譲ったものを。馬鹿が……
「俺が始末する。何人まで同時に連れてこれる?」
「わ、私を含めて四人です。」
「ならまず二人連れて来てくれ。そこで寝てる奴が呼んでるとか何とか言って。」
「わ、分かりました。」
その間に首輪を外して奴の死体を収納しておこう。血の跡を洗ってと。
オディ兄ほどではないが、私も洗濯魔法はそこそこ使えるのだ。
おっ、上がって来たな?
奴らがエレベーターを降りた所を後ろから……
『狙撃』
弾丸一発で二人の頭を撃ち抜く。
「さて、後三人か? もう二人、難しいなら三人まとめてでいい。連れて来い。」
「は、はい……」
こいつも災難だよな。目の前で何回も人死を見せられるとは。
それにしてもこいつらっていつも横車押しまくってんだろうなー。全然警戒してないんだもんなー。
おっ、二人か。係のやつ上手くやったな。
全く同じ方法で二人とも片付けた。
魔力庫のことを気にしてなかったが、貴族の連れだ。普通消滅する設定だよな。中身がばら撒かれなくてよかった。
さて、残りは四男だけか。
よし、上がってきた。
『落雷』
室内で落雷を使うのはかなり難しい。
取り敢えず気絶させた。
「ご苦労。もういないな? で、こいつが四男でいいのか?」
「は、はい……そうです……」
「分かった。ここはもういい。後で呼ぶ。そしたら亭主と来い。」
あー面倒だった。さて、こいつはどうしよう。一応生かしておいたけど。




