カース一行の社会科見学 - ギルド編
昼休み。いつものようにみんなでお弁当を食べる。
「で、どうだったの?」
「バッチリ集まったよ。朝一でギルドに解体を頼んだから放課後に確認に行くよ。みんな来る?」
「もちろん行くわ。」
「私もいい?」
「いいよ。セルジュ君とスティード君も来る?」
「「行く!」」
面白くなってきた。新しい服を作るのも楽しみだし魔石も楽しみだ。
それからいつものように昼寝をして四時間目、社会。
寝ずに頑張った。
五時間目、体育。
いつも通り水壁を殴り続ける授業だ。そろそろ次の段階に行くらしい。
そして放課後。
「うちの馬車で行きましょうよ。」
アレクサンドル家の馬車で行くことになった。よほど一台にみんなで乗るのが楽しかったと見える。私もだが。
わいわいお喋りをしていたらギルドに着いた。
「初めて来たわ。」
「僕も。」
「僕は父上と依頼を出しに来たことがあるよ。」
おお、セルジュ君は来たことがあるのか。
「じゃあ倉庫に行こうか。」
「お疲れ様でーす。解体は終わってますか?」
「終わってるよ。よくもまああれだけのものを獲ってきたもんだな。ここに書いてある。読んでおいてくれ」
紙には……
グランサンドワーム…一匹
サンドゴーレム…魔石七個
ジャイアントスコルピオン…三匹
デザートスコルピオン…十二匹
エビルパイソン…四匹
エビルパイソンロード…三匹
イービルジラソーレ…十六匹
おお私って中々……頑張ったものだな。
「ではグランサンドワームとジャイアントスコルピオン、エビルパイソンロード、イービルジラソーレの魔石と、エビルパイソンロードの皮だけいただきますね。」
「分かった。職員を呼んで来るから待ってな」
係員が席を外した。
「よかったら一人一つぐらい持って行ってもいいよ? 何かいいのある?」
「あらあらカース君たら。気前がいいのね。それなら遠慮しないわよ。私はエビルパイソンの皮が欲しいわ。」
早速サンドラちゃんがくいついた。
「じゃあ僕はサンドゴーレムの魔石を貰っていいかな?」
セルジュ君は渋い選択をするな。ゴーレムの魔石って意外と貴重なんだよな。
「じゃあ僕はジャイアントスコルピオンの皮を頂こうかな。欲張ってごめんね。」
欲張りなのか? スティード君は謙虚だなぁ。
ギルド職員がやって来て、買い取って貰う物、引き取る物を選別する。
その結果、私の懐には金貨二百六十枚と少しが転がりこんだ。
しこたま儲けて懐ほかほかだな。
真っ赤なジャケット着込んでパーティーに行ってしまいたい気分だ。
「せっかくだから、このままタエ・アンティに行かない? 今日ぐらい奢るよ。」
こうして私達はみんなでお茶をするために移動するのだった。
「カース君、昨日だけであれだけ獲ったなんてすごいね!」
スティード君は驚いてくれたようだ。
「ガイドのスパラッシュさんって人が凄かったんだよ。魔物がわらわら寄って来て、てんてこ舞いだったけどね。」
「スパラッシュさんて凄いらしいわね。見た目からは想像もできないわよね。」
アレクが言うのももっともだ。
スパラッシュさんて見た目は冴えないしょぼくれた中年オヤジだからな。確か四十五歳だったかな。
「どうやって魔物を引き寄せたのか気になるわ。」
サンドラちゃんはやはり現実的だ。
「えーっとね、呪われた笛って言ってた。それを吹くと澄んだ綺麗な音色なのに魔物がわらわら寄って来たんだよね。」
「それってもしかして呪いの魔笛?」
さすがサンドラちゃん、詳しいな。
「あー、そんな名前だったよ。砂漠なのに音が響いてさ、いい音色だったよ。」
「カース君、アンタよく生きてたわね……。呪いの魔笛って言えばそこら辺から魔物を根こそぎ集める悪夢の笛よ? 」
「根こそぎって程は来なかったよ。あっ、でもノヅチはヤバかったよ。」
「えっ!? ノヅチ!?」
「知っているのかライデ、いやアレク!?」
「ライ……? ノヅチって魔王のペットでしょ? 勇者でも倒せなくて未だにヘルデザ砂漠を彷徨ってるって言う……」
「僕も聞いたことがあるよ。何でも吸い込むんだよね。ノヅチを見ただけで風邪病にかかるとか触ると死ぬとか。」
時々セルジュ君は意外な知識を披露してしてくれるんだよな。
「スパラッシュさんが指示してくれてさ、大急ぎで逃げたよ。ノヅチが暴れた後には大穴が空いてたよ。」
それにしても魔王のペットか。勇者ムラサキ・イチローの冒険にはそんなこと書いてなかったぞ。子ども向けだからか?
あの本の地名は知らないのばかりだし、一体どこで戦ったんだ?
ちなみにこの日はみんなコーヒーを頼んだ。
スティード君はミルク持ち込み、セルジュ君はハチミツ持ち込み。みんな用意がいいんだなぁ。
支払いは五人で金貨十枚。平民一人の十年分の生活費!




