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カースは驚かれる

今日は私の三歳の誕生日、夜は軽いパーティーをするらしい。


で、肝心の錬魔循環はどうなったかと言うと……


できてしまった。


あれだけ半年やっても少ししか進歩がなかったものが、この二週間マジになって集中してやったところ、母上が言う太さ・速さに到達してしまった。


最初から追い込みながらやってればよかったのか? それとも半年の努力が身を結んだのか?


分からない。


でもこれで今後はこのスタイルで行けそうだ。しばらくダラダラやって期限が近づいて来たら集中する!

夏休みの宿題方式だ。きっとこれが私に合っているに違いない。しっかり基礎を固めて一気に仕上げるのだ。




「さあカースちゃん。どれだけできるようになったか見せてもらうわね。」


そう言って母上は私の額とヘソに手を当てる。


「さあ、魔力を回してみなさい。本気でね。」


ふふふ、驚かせてあげるさ。


「押忍!」


集中し、錬魔循環を始める。段々と速度を上げ、量も増やす。

ダムから放流される水のような魔力がエンジンを回したかのように体を駆け回る。


「………………………………………」


おかしい、母上が何も言わない。これだけ大量に回すのは中々きついのだが。

仕方ない、このまま続けよう。後一時間ぐらいなら可能だ。


「カ、カースちゃん……いつの間にそんなにできるようになったの……?」


「さいきんだよー ちょっと前までぜんぜんダメだったー」


「そ、そうなのね。そうよね。カースちゃんは天才だものね。で、できるわよね。」


どこか呆然としている。これは驚きを通り越したのか。私ならできると言っておきながら、本当にできるとは思ってなかったパターンか。

やはり天才天才言うのも教育の一環か。これまで以上に増長しないよう気を引き締めよう。


「すごいわカースちゃん! 来年の誕生日ぐらいに教えようと思ってたことが、もう教えられるわ。三歳でそれができるなんて聞いたことがないわ。きっと空だって飛べるわ。」


おお、通常モードに戻ったようだ。


「とびたーい もっとがんばるねー」


これはもちろん本当だ。飛べるものなら飛びたいものだ。空を自由に飛びたいぜ。


「じゃあお誕生日のお祝いまでまだ時間があるから次を教えましょうね。今までは魔力が通る道を広げて、速くたくさん通るようにしてたの。

今日からは実際に持ってる魔力の量を増やしていくの。これが終わったら魔法を使えるわ。」


おお、弱冠三歳にして魔法が目前なのか。どうせなら魔法を使いながら魔力を増やしていけば良さそうなものだが……

何か母上の考えがあるのだろう。


「これも最初はカースちゃんは何もしなくていいわよ。倒れないように頑張ってね。」


何!?


また何か……と思った瞬間


「ぎゅのにゅやゎやっ」


久々の変な声が出た。


何だこれ……気持ちいいのか気持ち悪いのか分からない。

力が抜ける……血や水分が抜かれるのはこんな気分になるのか、献血とは違いすぎる。


吐き気と眠気が同時に襲ってきた。しかし倒れてはいけない。


寒くなってきた、しかし母上が手を置いている私の首だけは熱い。だめか、意識が保てない……


「はい、ここまで! さあカースちゃん起きて。これを飲みなさい。」


「お、押忍……」


う、この牛乳瓶のような白い液体は……

ご存知クソまずい魔力ポーションだ。飲まないと鼻と口を塞がれるんだよな。一気に飲もう……


「あら、一気に全部飲めるのね。さすがカースちゃん。さあ、ではお昼ご飯にしましょうね。それが済んだらお昼寝よ。」



以前を思い出す豪華な食事だった。食欲なんかなかったのに、フォークは進む。


食べたら眠くなってきた。


「さあカースちゃん、お昼寝しましょうね。

久しぶりに子守唄を歌ってあげるわね。」




巷に雨が降るように

眠りの雲が降りてくる

野原に風が吹くように

眠りの中へ落ちていく

かわいい坊やがいるように

眠りの唄を歌いては

かくも心に躙り寄る

嗚呼母の唄、子守唄




何度聞いても飽きない、優しいメロディだ。

ふわふわ浮くような心地良さで眠りを誘ってくれる。


ああ、今夜のお祝いも楽しみだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >あれだけ半年やっても少ししか進歩がなかったものが、この二週間マジになって集中してやったところ、母上が言う太さ・速さに到達してしまった。 勉強でもそうですよね ずっとわからなくて苦労して…
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