オウエスト山のゴーレム
領都からの帰り道、オウエスト山らしき所を発見した私は高度を上げていきなり頂上を目指してみた。
やはり頂上は見晴らしが良い。空を飛ぶ私からするとおかしな話だが。高ければいいってものでもないのだろう。
さて、ここではどんな魔物が出るのかなー。
全然出ない……
おっと、忘れていた。魔物は魔力に惹かれるんだよな。
『火球』
『火球』
『火球』
以前はこれでコカトリスが来たが。今日は何が来るのやら。私は高度を上げて隠形を使い身を隠す。
待つこと三十分。何も来ない。
待つこと一時間。何も来ない。
前回のように火球を追加しつつ待っていたが、何も来ない。油断した頃に来そうなものだが。
待てよ? ここの魔物はゴーレム系が多いと聞いた。と言うことは土や金属の魔法と関係が深い。ならば……
『土塊』『土壁』『土芥』……
『鉄屑』『鉄塊』……
これなら反応してくれるのではないか。使いまくってみた。
そして二十分が経っただろうか。
来た!
大きい!
黒っぽい銀色のゴーレムだ!
どうやって倒そう?
表面はえらく硬そうだ……確か魔石を破壊するんだったな。
うーむ、金操で無理矢理に魔石だけを抜けないものか……胴体の中心に埋まっているって話だったな。
『金操』
よし! できた!
今回気付いたことだが、ゴーレムは石だったり金属だったりするのは当然だ。ところが魔石は石でも金属でもない。見た目から固体ということしか分からない。
つまり何も分からない……
それでも魔石は金操で操ることができた。
しかし消費する魔力がとんでもない。
体感で『金操』は『風操』の五千倍以上の魔力を消費する。もしかしたら一万倍かも知れない。
石などの鉱物に金操を使うと金属の十倍程度の魔力を消費する。
魔石は鉱物のさらに十倍の魔力を消費したように感じた。
雑魚魔物の魔石の重さは一キロムもない。
たぶん百グラム程度だろう。
魔力庫作成の時に触ったエビルヒュージトレントの魔石は十キロム以上あった。
そして今回のゴーレムの魔石は四キロム程度だろう。
何が言いたいのかと言えば……
一発で魔力が空になってしまった……
まずい……
まさか魔石に金操が効くなんて思ってなかったんだ……
だから気軽に使ったのだが……
あの時の恐怖が蘇る……グリードグラス草原での一夜が……
ヤバい、どうしよう……
周辺はいかにも頂上らしく物陰すらない……
先程倒したゴーレムの本体や今持ってる魔石を収納することもできない。
魔法使いの嗜みとして魔力ポーションも持っているが、魔力が空なので取り出せない……
もしかして進退窮まった?




