初日は終了する
夕食だ。家族全員に加え先生もいる。
「いやー兄貴、よく引き受けてくれたよな。
ありがとな。ウリエンは幸運だよな。」
「なーにアランの子なんだ、私の子も同然だからな。アッカーマン先生もアランは元気にしているか気にされていたものだ。」
「それは嬉しいな。ジジイは元気にしてんの?」
「ああ、二年前にお会いした時は元気だったぞ。門弟達は大変そうだったがな。そうそう先生だが、二十歳ぐらいの若い娘さんと結婚されたそうだ。」
「はっはっは、さすがジジイ! お盛んで結構なことだ。もう六十過ぎだってのに。」
どうやら父上はフェルナンド先生のことを兄貴と呼んでいるらしい。父上達の先生だが、王都では有名な剣術使いらしい。コペン・アッカーマンと言い、体は小さいが無類の強さを誇る達人だとか。
それにしても六十で二十の奥さんか……やはり達人は色々と違うらしい。
「それはそうと兄貴から見てウリエンはどうだい? 俺があんまり稽古つけてないもんで心配なんだよ。」
「うーん、普通だな。飛び抜けたものは無いが、弱点もない。クセがなくて教えやすいとも言えるな。まあ最低一週間は狼ごっこだな。」
「あーそれ懐かしいな。俺らも小さい頃やらされてたよな。ジジイって癒しの杖使ってくれないんだよな。普通の木刀でさ。
『痛くなければ覚えん』とか言ってな。いやーきつかったな。」
「ふふっ、その代わりお前の逃げ足ときたら他の兄弟子達も驚いていたものだ。」
「逃げ足だけは兄貴より速かったもんな。まあそれはさて置きウリエンだけど、頼むな。合格が目標なんてケチなことは言わん、強くしてやってくれ。」
「分かっている。私が教えると言うことは、アッカーマン先生の孫弟子でもある。無尽流の名に恥じない男にしてやろう。半年しかないからハードになるだろうが、頑張れるだろうウリエン?」
「お、押忍! やってみせます!」
「お、ウリエンの奴、根性が出てきたな。お父さんは嬉しいぞ。」
「あら、私だって嬉しいわよ。フェルナンド様は来てくれるし、ウリエンは逞しくなるし、オディロンちゃんは触発されるし。良いこと尽くめね。」
「イザベル様にそこまで歓迎していただけるとは、来たかいがあったようだ。アランには過ぎた奥様ですな。」
「そうだろ〜。最高だぞ〜。」
父上も母上も先生もご機嫌のようだ。私達子供は話に入ったり入れなかったりだが、楽しい夕食だった。
「さあ、あなたたちは早く寝なさい。次に先生がいらっしゃるのは三日後だけど、先生が来られない間も宿題がありますからね。」
確かに今日は疲れた。経絡魔体循環と違って体を使ったもんな。早く寝よう。