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十月十二日、深夜

一方フェルナンドは日没から現在に至るまで剣を振り続けている。

まさか、グリーディアントが現れたのか?

見たところ相手はいない、しかし何かを切っている雰囲気はある。


よく見ると、彼は虫を切っていた。

僅かな星明かりしかない夜の魔境で火を焚くと、虫たちはいくらでも集まってくる。

掌サイズの虫もいれば、小指より小さい虫もいる。もっと小さい虫も大きい虫もいるだろう。

そんな虫をひたすら切り続けていた。


しかもハチマキのような物で目隠しをしている。つまり音や気配だけで虫を切り続けているのだろうか。

彼がグリードグラス草原に残った本当の理由はこれなのだ。虫を相手に稽古がしたかったのだ。

しかしアランに『少し稽古をしてから帰る』と言うのが気恥ずかしかったため、一晩の確認を買って出たのだ。


ちなみに彼らの師匠である、コペン・アッカーマンは今でも目隠しで魔物を倒すことができる。しかし音も気配も小さい虫を切ることはできない。

そう、フェルナンドはこの『心眼』において師を超えているのだ。

だいたい半径二メイルぐらいまで察知できるようだ。恐ろしいのはほとんど察知した瞬間に切っていることだ。


無尽流においてこの『心眼』を使いこなせる者はアッカーマンとフェルナンドと数人の高弟だけである。アランは使えない。





時刻は真夜中過ぎ、心眼の調子をじっくり確認できたフェルナンドは、少し休むかと考えていた。

目隠しを取り、焚き火から離れる。

例のグリーディアントは昼からずっと触らずに放置している。少しずつ虫に食われつつあるようだ。


この世界では蟻のフェロモンについては知られていないし、グリーディアントがどうやって奪われた獲物を追跡するのかも解明されていない。

ただ冒険者達は経験則として、匂いなどで追ってくるのだろうと考えている。


そこでフェルナンドは考える。

オディロンの右腕はまだグリーディアントの獲物なのかと。ここら一帯のグリーディアントは全滅したとしても、他の地域のグリーディアントの標的になることはあるのかと。


結論など出るはずはないが、夜の魔境ではグリーディアントなど珍しくないので気が向いたら実験してやろうかともぼんやり考えていた。


三十分ぐらい休憩をして、フェルナンドは再び焚き火に近寄る。このまま日の出まで虫を切り続けることだろう。

朝になったら少し寝て、のんびり歩いてクタナツに帰ろうと考えるのだった。

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