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十月十一日、未明

だいぶ冷静になったカース。

冷静になるといろんな考えが浮かんでくる。

帰りの遅い自分を心配した両親が助けにくるのではないか、と。

だいたいの場所はベレンガリアが知っているはずだ。そうなると後は正確な場所を知らせる必要がある。


そこでまた悩む。

朝まで持たせるべき魔力を他に使っていいのか?

無駄打ちにならないだろうか?


クタナツを二度目に出発してから二時間は経っただろう。そうなると一度目の帰還時間から考えて皆も心配する頃だろう。

あの場にはフェルナンドもいたため救助に来てくれる可能性は高い。


そしてカースは腹を決めた。救助が来るという前提で行動することを。


『光源』


辺り一帯を広く照らすのではなく、遠くから見えやすいよう範囲を絞り強い光を高く打ち上げる。


もう後戻りはできない。

三十分に一度これを使うとすれば、確実に朝まで持たない。

勝手な行動をした自分だが、それでも助けが来ることを信じた。これは身勝手なのか信頼ゆえか。


そして相手もきっと合図をするはずだと信じて周囲を注視する。


夜明けまで四、五時間だろうか。時計のないカースに時間を知る術はない。いつ明けるとも知れぬ夜に不眠不休で魔法を使い続け、周囲の観察も怠らない。現時点でグリーディアントの危険はないし、虫もカースのいる高さまでは上がってこない。




やがてカースには分かってしまった……自分の魔力が後一時間も持たないことを。


そして、覚悟を決めて……最後の『光源』を使う。


その時だった、遥か遠くで薄っすらと明かりが見えた! 救助だ!

カースが信じた通り、あちら側も魔法を打ち上げながらカースを捜索してくれていたのだ。


残る魔力を振り絞り全速力で移動する。

先ほどの『光源』もきっと相手に見えているはずだ。


移動しながら少しずつ高度を落とす。もういつ魔力が切れてもおかしくないのだ。墜落死を防ぐためは少しでも高度を落としておかねばならない。


十分も経たずにカースの魔力は切れ、意識が飛びかける。しかし空中を慣性で飛んでいる現在、意識を失えば確実に死ぬ。このまま鉄板にしがみつき、鉄板と共に着地するしかない。


魔力が切れて一分後、鉄板は接地し、その衝撃でカースは荒野に投げ出される。それでもカースは意識を保っていた。

すでにグリードグラス草原からは遠く離れているが、それでも危険な場所なのだ。


立ち上がることはできないが、それでも目と首だけを動かして周囲を確認する。なにも見えない、何も聞こえない。暗闇と静寂の世界がそこにあった。


背中を強く打っているので呼吸が苦しく、声も出せない。それでも、少しでも呼吸を整えようと必死に深呼吸を始める。

後一回、たった一回光源を使えば助けが来る。その一心で、回復を図ろうとしている。


そこに物音が聞こえてきた。助けか!?

カースは縋るような思いでそちらに注意を向ける。

暗くてはっきりと見えないが、おそらくそれは……三匹のゴブリンだった……

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