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異世界金融【改】 〜元教師は転生したら働かなくてもいいように無双する〜  作者: 暮伊豆
第三章

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アレクサンドリーネの独走

う……ん……

寝てたのか……

何か振動を感じる……ほんの少し肌寒い……布団はどこへ……


荒い息遣い……アレクの声だ……


「おはよ……」


「あんっカ、カース、お、おはよっう……」


「アレクは悪い子だね。そんなに我慢できなかったのかい?」


「だ、だって……カースが、カッコ、良すぎるか、ら……」


昔は拙かった腰遣いも今では上達している。研鑽に余念がないのか、単に熟練してきたのか。とってもいい子なのだが……


「ごめん……また寝そう……」


「いい、のよ……私こそ我慢でき、なくてごめん、なさい……」


アレクには悪いがまだ体調が良くない……徹甲連弾の連発はかなりキツかった……

これが魔力のごり押しの弊害だろうか。スマートさが足りないな……あ、もうダメ……


「あっんっ、カース、おや、すみ……」






うう……ん。昼、かな?


「おはよ。」


「あぁっん、カースっ、起きたのね……」


「アレク、汗がすごいよ。お風呂行こうか。」


「ん、も、もう少し……待って……」


まさか、あれからずっと? やるなぁ。




「ああ……おいしかったわ……」


アレクは貪欲だなぁ。かわいい。


「カースはそのまま寝てて。全部私がしてあげるから。」『浮身』


おっ、アレクが連れて行ってくれるのか。これはこれで楽だな。ふわりふわり。


うーん、自宅とはいえこれだけの豪邸だ。裸のままで空中を運ばれるのは妙な気分だな。いつ私は裸になったんだ? アレクはいつの間にかケイダスコットンのワンピースを着ているし。


それから私は湯船に浮かべられ、アレクによって献身的に洗われてしまった。アレクの方がよほど汗をかいているし疲れているだろうに。


「さあきれいになったわ。カースが疲れているのに、勝手なことしてごめんなさい……」


「いやいや、そんなことないよ。アレクにそこまで好かれているなんて嬉しいよ。ちょっと無茶な魔力の使い方をしたものでさ。」


「ううん、まさかあそこまで自分が抑えられないなんて思わなかったわ。あのドラゴンの頭を真っ向からぶち抜くなんて……カースは最高の男よ!」


照れるぜ……嬉しいな。よし、だいぶ元気になってきたぞ。


「今度は僕が洗うよ。」


それはそれは丁寧に。






「お腹空いたよね。立てる?」


「ま、まだ無理……私が作るから……少し待ってくれる……?」


うーん、アレクのことが愛しすぎて張り切ってしまったな。昨日の弁当から何も食べてないってのに。そりゃあ腹もへるってもんだ。


「ピュイピュイ」


コーちゃんもお腹空いたの? 待っててね。よし、ならば私も手伝おう。それなら早くできるはずだ。


「アレク、僕も手伝うから一緒に作ろうよ。」


「だめ……あそこは私の領域なの。いくらカースでも入って欲しくないわ……だから大人しく待ってて……」


しまった……ダークエルフの村でおばあちゃんにも叱られたな。男が台所に入るなと。うーん聖域か。知識としては分かっているんだがな……


「ごめんごめん。ゆっくりでいいからね。」


それにしても連日アレクの料理を味わえるとは。ありがたいことだ。ちなみにコーちゃんはアレクに付いて行った。コーちゃんは入っていいのか?




「ピュイピュイ」


コーちゃんが呼びにきてくれた。いつもかわいいなぁ。さて、風呂から出るとしようか。あーいい湯だった。あははん。




「カース、さっきはごめんなさい。一生懸命作ったの。食べてくれる?」


「いやいや、全然悪くないって。ありがとね。僕も我慢できないからいただくよ。」


昼からフルコースだ。このスープはカボチャかな? さわやかだし、お腹にも心に染みる味だ。おいし……

こっちは前菜かな? 一口サイズだ。角切りにした野菜を軽くスモークした魚で巻いているのか。これはいい。ほどよい酸味と塩味で酒が欲しくなってしまう。飲もうかな……いや、やめておこう。食事に全力で集中するんだ。私の魔力庫には冷えたエールなんて入ってないしね。

それにしても前菜だけで何種類あるんだ? 見た目は同じだが中身の野菜は千差万別じゃないか。


こっちは魚のステーキ、いやポワレか。あ、これってランスマグロじゃん。旨いんだよなぁ。野菜にキノコ類もふんだんに使ってあるし、もはやメインディッシュだよな。あー美味しい!


「カース、これも飲んでみて。」


「おっ、ありがとう。どれどれ……おっ! 美味しーい! カクテル? 一体何と何を……?」


「うふ、当ててみて。正解したらほっぺに……」


アレクめ、自分で言って照れてるし。さっきまでの行動とは大違いだな。そんなところもかわいいが。


「うーん、ペイチの実は分かるよ。でも分からないのがお酒だよ。高そうなお酒が少し入ってるよね。そして微かな苦味は王都で流行ってた何かのビネガーかな?」


「すごいわカース。ほとんど正解よ。お酒はカースが持ってたセンクウ親方のラウート・フェスタイバルよ。上品で繊細、本当に美味しいお酒よね。」


そう言ってアレクは私の両頬に一回ずつ唇を寄せてくれた。あぁもうかわいいんだから。


「さあ、そろそろかしら。少し待っててね。」


そう言ってアレクは台所の方へと向かった。これで全部ではないのか。




およそ三分後、アレクは大きなお皿を浮かせて戻ってきた。いや、皿ではない。鉄板だ。それも熱々の!


「ワイバーンのテンダーロインステーキよ。熱いからゆっくり食べてね。」


これはすごい! いつだったかゼマティス家で食べた肉塊のようなワイバーン肉はワイルドだったが、こっちは黙ってればワイバーン肉に見えないような上品さだ。ワイバーンのテンダーロインか……希少部位、確か腰の辺りだったよな。


どれどれ……旨い! 柔らかい! 見たところ赤身ばかりだが信じられないぐらい柔らかい! これは肉質なのかアレクの腕なのか……両方だな。


肉塊とも呼べるようなステーキを一気に食べてしまった……少しお腹が苦しいかな。


「ふう……最高だったよ。まさかワイバーンがここまで美味しいだなんて知らなかったよ!」


「よかった。だってカースっていつも適当に切って豪快に焼いて食べてるじゃない? あれはあれで美味しいけれど、部位に合った料理法でいただくのも悪くないわよね?」


部位に合った料理法……さすがアレク。考えもしなかった。肉だから焼けばいいとしか。胡椒や塩、各種ソースで味を変えるのも悪くないが、アレクのように焼き方、料理法でも味は変わる。当たり前のようだが大事なことだ。うーん餅は餅屋、魔物は冒険者だな。


「うん! こんなに美味しいのは初めてだよ! 大変だったろうに、ありがとね!」


「どういたしまして。デザートは甘い物かコーヒー、それともお茶、どれがいい?」


「じゃあコーヒーを頼めるかな。」


「ピュイピュイ!」


「コーちゃんは甘い物がいいんだって。」


「分かったわ。待っててね!」


コーちゃんはここまで私と同じメニューを同じ量食べている。最後の最後で違う選択だね。私も甘い物が食べたい気もするが、もう入りそうにない。別腹のはずなのに。

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