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チートなサムライ二人目22


「賢者の石……」


 五十階層のボス。


 アルケミスト。


 そのドロップアイテムだ。


 賢者の石。


「賢者の石……」


 呆然とするアイナ。


 ちなみに言ってしまえば、ギルドに売っただけで、生涯遊んで暮らせる金額になる。


「どんなアイテムですか?」


 何も知らないクロウが問う。


「所謂……」


 言葉を探すアイナ。


 安全フロアだが、クロウたちの他に、冒険者はいない。


 ギルドの出店もない。


 ここまで無傷でやってくる冒険者が、普通はいないのだ。


 そしてクロウたち四人は、あまりに普通では無かった。


「命を繋ぐ石です」


「命を繋ぐ……」


 チラと、クロウは、イズミを見る。


「ま、言うなれば難老長寿の薬だな」


「難老長寿……」


 何処かで聞いた話だ。


 クロウが証明人。


 その効果は……オーガの血と同一である。


 クロウは、オリジンから血を与えられて、難老長寿になった。


 それは、出生としてなら、エルフのアイナも同じだ。


 ついでに、オーガと人間のハーフである……イズミも。


「…………」


「…………」


「…………」


 三人の視線が、ローズに集まる。


 デミエルフ。


 魔術師としては、Sランクの素材。


 だが一人、年齢が違う。


「あう……」


 躊躇するローズだった。


 アイナとイズミは、不足なく、心情を理解している。


「自分だけが時間に襲われている」


 その葛藤を。


「飲みますか?」


 アイナが問うた。


「良いんですか?」


 貴重な品だ。


「ここで安易に使って良いのか?」


 そこは理性が働く。


 が、


「クロウ様に惚れているのでしょう?」


 アイナが、念話で、ローズに語りかける。


 内緒話。


「そう……だけど……」


 念話で答える。


「遠慮する場所がありましょうや?」


「えと……あの……」


「大丈夫です」


 つとめて爽やかに、アイナは言った。


 そして口頭。


「クロウ様?」


「へぇへ」


「ローズに、命の水を与えても良いですよね?」


「命の水?」


「賢者の石を、水に溶かした液体を、そう呼ぶんです」


「ははぁ」


「オーガの血と同じく、難老長寿をもたらしますよ」


「ソレは良いですね」


 儚げに、クロウは笑った。


「いい……の……?」


「それは、ローズ次第ですね」


 なごやかな様子。


「では……お願いします……」


「はいはい」


 水筒を取り出すアイナ。


「別に複雑な手順でも無いのですけど」


 コップに水を注いで、賢者の石を突っ込む。


 賢者の石が溶けて、赤色の水が、出来上がった。


 命の水だ。


「後は飲むだけです」


「飲んでも……?」


「構いませんよ」


「では……」


 おずおずと手にとって、命の水を飲み干す。


 特に、外見上で、変わった事は無い。


 が、確かな確信が、ローズを襲った。


 難老長寿。


 その有り様を。


「これで本当に……」


 クロウの言。


「事実上の人間はいなくなったわけだ」


 イズミが、引き継いだ。


「ですね」


 アイナは、鮮やかな笑みを浮かべる。


 そんなこんなで、五十階層で休憩した後、地上に戻る四人だった。


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