チートなサムライ二人目20
「しっ」
イズミの剣がボーンドラゴンを切り裂く。
「結局魔金属はどれくらい集めれば良いんだ?」
フルメタルスライムを切り裂きながら、イズミは問うた。
「すでに規定値は突破していますが」
場所は四十九階層。
魔金属や感応石は、ポコポコとドロップされる。
前衛の負担が減ったのも事実だ。
今まではクロウ無双だったが、イズミが加わったことで余裕が出来た。
結果無理することなく四十階層レベルを踏破できる。
「お」
とイズミ。
「亜シルバーか」
フルメタルスライムのドロップアイテム。
魔金属だ。
更に襲ってくるモンスターたち。
「スイッチ」
「ですよね」
クロウが前に出る。
ボーンベアーとボーンドラゴン。
ボーンドラゴンがブレスを吐いた。
クロウは直上に跳んで回避。
後衛は魔術障壁で防御した。
イズミは後者に分類される。
「さすがアイナ」
「恐縮です」
そんなやり取り。
「ふっ」
跳躍したクロウは、ダンジョンの天井を蹴って急降下。
速度は超高速。
ザクリとボーンドラゴンの頭部を切り裂く。
「――――」
吠える。
気にするクロウでも無い。
一擲の剣。
ボーンドラゴンを死に至らしめる。
姿勢は崩れない。
襲ってきたボーンベアーに、軽やかに対処する。
「――――」
爪と膂力。
普通の人間では叩きのめされるだけだろう。
此処に普通は一人もいないが。
骨だけの熊。
が能力は俊敏して怒濤。
クロウは骨の爪を薄緑で弾く。
「斬らないの……?」
念話でローズが問うてくる。
「呼吸が合っていませんので」
「?」
「都合が悪いと思っていただければ」
そして念話を取り止める。
次の瞬間、
「疾」
ボーンベアーの腕を薄緑が切り裂いた。
更に刃が加速する。
無尽蔵。
かつ効率よく。
瞬く間に膾に叩く。
斬撃に次ぐ斬撃。
殺意に次ぐ殺意。
何より剣に次ぐ剣だった。
サクリ。
斬り滅ぼされる。
「あり得ねえな」
感嘆とイズミは呟いた。
それほど洗練された剣だったのだ。
クロウのソレは。
剣聖イズミをして、
「底がまるで見えない」
そんな剣。
クロウに言わせるなら、
「貴女が仰いますか」
と相成るが。
動のクロウと静のイズミ。
どちら共に異常ではある。
「さて」
とはイズミ。
階段。
地下への。
というかダンジョンに居る以上、既に地下だが。
「五十階層に挑むつもりで?」
戦慄するアイナ。
「あう……」
躊躇するローズ。
「大丈夫だ」
何が根拠か。
「死にゃしない」
何が根拠か。
それは誰にも分からない。




