チートなサムライ二人目19
「こういうところは魔術の恩恵だよな」
何かと問えば水浴びだ。
暗示と探知の結界魔術。
前者がアイナで、後者がローズ。
「お兄ちゃん……」
水場で行水していると、ローズが甘えてきた。
「どうかしましたか?」
「その……ね……?」
「はいはい」
とここまでは口頭。
後は念話。
「イズミと……近すぎるよ……?」
「色々とご教授くださるので」
同じサムライ。
時代は違うが、二人揃って伝説の。
クロウは剣術の祖と呼ばれる京八流。
イズミは剣聖とも呼ばれる剣の寵児。
クロウにとってイズミは、発展した日本剣術の使い手であって、京八流には無い理を示す者だ。
対するイズミにとってクロウは、伝説に語られる天狗の剣法を再現する逸れ者であって、一対多の理を示す者だ。
どちらともがどちらともに、知らない剣の術理……その持ち主なのである。
「ですから一つの教師と言えるでしょうね」
「あう……お兄ちゃんの……エッチ……」
「性欲は持っておりませんけれども」
パシャッと水を体にかける。
「お兄ちゃんは……イズミが……好きなの……」
「好意的ではありますよ」
事実だ。
少なくとも剣に真摯なところは評価されるべきだろう。
「お兄ちゃんの……浮気者……」
「そんなつもりはないんですけどねぇ」
少なくともクロウの恋慕は、オリジンに向いている。
好きと愛しているは違う物だ。
「ローズは……?」
「好きですよ?」
「あう……」
抱きしめるローズ。
その胸と腕に頭部を包まれて、ホッコリするクロウだった。
「ローズは本当に小生が好きですね」
「生まれたときから……好きだった……」
「兄として誇らしいですよ」
「うぅ……」
「どうかしました?」
「お兄ちゃんは……意地悪……」
「真摯なつもりですけど……」
ギュッと抱き返す。
「本当に……?」
「ええ」
「残酷……」
「ですか」
嘆息。
「ローズのお兄ちゃんっ子は生まれの業ですか」
「です……」
「好きな人は?」
「お兄ちゃん」
「ですよねー」
サッパリとしていた。
スルリとクロウはローズの抱擁を抜けた。
「っ?」
念話の終了。
「よしよし」
と紅の髪を撫でる。
「ちゃんとローズの前ではお兄ちゃんでいてあげますから」
「あう……」
紅潮。
そこに剣が襲ってきた。
弾く。
互いに一閃。
ピタリと止まる。
「さすが」
イズミの賞賛。
「此方の台詞です」
クロウの疲れた声。
「?」
理解していないローズ。
「何か……したの……?」
「何もしていませんよ」
ふにふにとローズの胸を揉む。
「あん……」
「今後に期待ですね」
「お兄ちゃんの……エッチ……」
「さもあらん」
「俺の胸も揉んで良いぜ?」
「幼女ですし」
「お前が言うかぁ?」
「だから股間事情は反応していないでしょう?」
それもまた事実。




