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チートなサムライ二人目16


 チャプン。


 湯面が跳ねる。


 いつも通りの今まで通り。


 クロウとアイナとローズとイズミ。


 四人で風呂に入っていた。


「というわけでお願いだ」


 パンと合掌。


 イズミはアイナに頭を下げていた。


「リュックを貸してくれ」


「…………」


 困った様な光の眼だった。


 アイナである。


「どう思います?」


 アイナは話をローズに振った。


「お兄ちゃんなら……多分万に一つもないでしょうけど……」


 実力そのものはアイナもローズも否定できない。


「…………」


 クロウはぼんやりと湯に浸かっている。


 全裸美少女に思うところもないらしい。


 これもまた何時ものこと。


「俺たちの実力は知ってるだろ?」


「ですね」


「なら」


「私も付いていきます」


「ローズ……も……」


「二人じゃ駄目なのか?」


「一応後衛も仕事の一つですので」


「というか……ライバル……」


「むぅ」


 唸るイズミ。


「…………」


 やはりクロウはホケッと。


「そうなるか……」


 イズミも分からないわけではないらしい。


「じゃあ四人でリンボに潜るか」


「ですね」


「です……」


「小生もですか?」


 納得はしているが、四人で、とは聞いていない。


「後方は気にしなくて大丈夫ですので」


「はあ……」


 ぼんやり。


 そこに剣閃が迫る。


 受け止めるクロウ。


 こんなことをするのはイズミに決まっている。


「アイナもローズもクロウが好きなんだな」


 鍔迫り合いながら皮肉る様にイズミが言った。


「側室ですので」


「お兄ちゃん……だから……」


 答える少女。


「さいか」


 納得する少女。


 というか幼女。


 キンと剣が弾かれる。


 クロウは薙いだ。


 受け止められる。


 刀身をなぞる様にイズミの剣が襲いかかる。


 剣に気を乗せて軌道をずらす。


「そんなことまで出来るのか!」


 湯船に浸かりながら驚愕するイズミだった。


「出来ないと言った覚えもありませんが」


 飄々とクロウ。


「さすがの牛若だな」


「法度ですよ?」


「こりゃ失礼」


 転生者については秘密。


 クロウとイズミの通念だ。


「では書類はシャッハマットに押し付けましょう」


 ルンと跳ねる様なアイナの言葉だった。


「学院長も大変だ」


 金髪碧眼を見ながらクロウは心中同情した。


「大丈夫……?」


 念話でローズ。


「一人でもどうにでも出来ますよ」


 嘘ではない。


 伊達でも酔狂でもない。


 それはローズも知っている。


「ま、安心してください」


 念話で慈しむ。


 風呂の隣に座っているローズの髪を撫でた。


 紅色だ。


「駄目だったら頼りますので」


「如何様にも」


 そんな念話で兄妹仲睦まじい二人だった。


「血さえ繋がっていなければ」


 ローズの最近の悩みである。


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